Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

バナナズ・フォスター
Bananas Foster
温かなラムのソースを、バナナとアイスへ
デザート / 米国・ニューオーリンズ

熱いバナナと褐色のソースを、冷たいバニラアイスに重ねます。食卓の脇でラムの炎が上がるバナナズ・フォスターは、ブレナンズが一九五一年の創作と伝えるニューオーリンズのデザートです。フォスターは料理人でなく、店主の友人の名。バナナの輸入港だった町の商いと、家族の発想、客席での仕上げが一皿に集まりました。
二種の酒を、時間差で加える
バターとブラウンシュガー、シナモンをフライパンに入れて熱し、バターが溶けたところでバナナリキュールを加えます。砂糖と油脂が混ざったソースに切ったバナナを入れ、果肉が柔らかくなるまで短く火を通します。創作店のルセット(材料の配合と作り方)では、この加熱は一〜二分ほど。バナナの形を残しながら、表面に甘い液体をまとわせる工程です。
そこへ熟成ラムを加えてフランベします。バナナリキュールはソースに果実の香りを重ね、ラムはその後の仕上げに使われます。加熱した果実へラムを後から入れるため、熱いソースの仕上げに炎が現れます。
熱さと冷たさが同じ皿で変わる
バナナとソースをバニラアイスクリームにかけると、アイスの表面が熱で溶け始めます。白い乳の液体が褐色のソースに混ざり、食べ進むにつれて温度と粘度が変わります。柔らかなバナナを、温かいソースと冷たいアイスごとすくう食べ方です。
レストランでは食卓のそばで調理され、バターが溶け、ソースが泡立ち、炎が上がる一連の変化も楽しまれます。フランベの見せ場は、熱いままのデザートをすぐに供する工程と結びついています。
青果会社の在庫と、母の朝食の記憶
ブレナンズが伝える創作の経緯は、オーウェン・ブレナンの弟ジョンが経営する青果会社にバナナが余ったことから始まります。オーウェンは妹エラと料理長ポール・ブランジェに、その果実でデザートを作るよう求めました。中南米産バナナの輸入港という町の背景に、家族の会社の在庫という身近な事情が重なったのです。
エラは母が朝食にバナナの表面を焼いていたことを思い出し、ラムを使う卓上の料理へ発展させた、と観光団体の由来話は伝えます。その夜の特別客リチャード・フォスターはオーウェンの友人で、二人は町の犯罪対策委員会にも関わっていました。彼に献名したことは店側も記しています。創作の細部は、いずれも後年の回想として残る話です。
誕生時の店は、バーボン・ストリートの「Owen Brennan’s Vieux Carré」でした。ロイヤル・ストリートの現在の店に場所が変わっても、名物は継がれます。店は「Breakfast at Brennan’s」の締めに据えたことを人気が本格化した転機としており、創作後には朝食サービスの中での普及が続きました。
ワゴンの一皿から、クレープの上へ
ブレナンズでは現在も移動式ワゴンを客席の脇へ運んで仕上げます。ステーキ・ダイアン、クレープ・フィッツジェラルドなども並ぶ卓上サービスの一品であり、炎が上がる時間も接客の中に組み込まれています。
同じ店でも仕立ては変わります。料理長スレイド・ラッシングが二〇一四年の『Food & Wine』で紹介した朝食向けの型は、バナナをクレープに載せて焼き、クリームを添えるものです。客席でのラム・フランベを繰り返すのでなく、熱いバナナと生地を組み合わせる形へ、店の味を移しています。
用語解説
- オーウェン・ブレナン
- ブレナンズの創業者。料理長にバナナ料理の開発を求めた。
- ジョン・ブレナン
- オーウェンの弟。青果会社を経営し、菓子の創作経緯に登場する。
- ポール・ブランジェ
- バナナズ・フォスターの開発に関わった料理長。
- エラ・ブレナン
- オーウェンの妹で、開発に加わったレストラン運営者。
- リチャード・フォスター
- 菓子名の由来となったオーウェンの友人。ニューオーリンズの犯罪対策委員会委員長。
- スレイド・ラッシング
- ブレナンズの料理長として二〇一四年にクレープ仕立てを紹介した。
- Breakfast at Brennan’s
- ブレナンズが売り出した朝食のサービス。店はこの中でバナナズ・フォスターを代表的な締めに据えたことを普及の転機と説明する。
- フランベ
- 料理に加えた酒のアルコール蒸気に火をつける仕上げ。
- ブラウンシュガー
- 糖蜜を含み、褐色をした砂糖。ソースの色と風味をつくる。
- バナナリキュール
- バナナの香味をもつ甘い酒。この菓子ではラムとは別にソースへ加える。







