Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

ススピロ・ア・ラ・リメーニャ
Suspiro a la limeña
乳の濃いクリームに、軽いメレンゲを重ねる
デザート / ペルー

濃いミルククリームの上に、ポートワインの糖液で作る白い泡が重なる。ススピロ・ア・ラ・リメーニャは、乳と卵を下では煮詰め、上では泡立てる、リマのグラス菓子です。淡い褐色と白の二層にシナモンを振り、一さじで濃密さと軽さを合わせます。「リマの女性のため息」という名を持ち、ススピロ・デ・リメーニャ、ススピロ・リメーニョとも呼ばれます。
二種類の練乳を煮詰め、卵黄で厚みを出す
土台になるのは、マンハール・ブランコと呼ばれる乳の甘いクリームです。無糖練乳と加糖練乳を弱火で混ぜながら煮詰め、いったん火から外して卵黄とバニラを合わせ、再び加熱する作り方があります。これはペルー観光機関が紹介するルセット(材料の配合と作り方)で、乳と砂糖から煮詰める型に対し、濃縮した二種類の乳製品を使うものです。
卵黄が加わることで、煮詰めた乳にさらに厚みが生まれます。粉入りの焼き生地を骨組みにせず、器の中へ流して冷ます構成です。鍋の中では焦げつかないよう動かし続けますが、盛りつけた後は、スプーンですくうまで層の姿を保つ濃さが求められます。
ワインは上の白い泡に入る
上のメレンゲは、砂糖とポートワインを煮た糖液を、泡立てた卵白へ少しずつ加える型です。甘いワインは下の乳の層ではなく、卵白の泡を甘く整える側に入ります。乳、卵、糖という材料を、下では煮詰め、上では泡立てる。二層の対照は、この扱いの違いから生まれます。
グラスへ乳のクリームを入れ、その上へメレンゲを重ね、最後にシナモンを振ります。口金袋で泡を絞り、上面を飾る仕上げもあります。小さなグラスなら、透明な側面に二層が見え、一さじに泡とクリームをどれほど合わせるかによって濃さの感じ方も変わります。
同じ名の「白い食べ物」は何を含んだか
下層の名 manjar blanco は、スペイン語で「白い食べ物」。この菓子では煮詰めた乳の甘いクリームを指しますが、植民地期のリマへ伝わった menjar blanc には、鶏の胸肉と米粉を含む型と、鶏を使わず砂糖と米粉で仕立てる型がありました。米粉は液体を濃くする材料で、現在の練乳と卵黄で厚みを作るススピロの下層とは働きが違います。
白い料理を表す呼び名が、ここでは濃縮した乳の甘味へ、さらにメレンゲを載せる二層の器へ受け継がれています。材料と固め方の違いには、古い料理名が別の食文化へなじんでいく過程も表れます。
詩人が名付けたため息の伝承
スペイン語の名は「リマの女性のため息」を意味します。伝承では、アムパロ・アヤルサが作った菓子を夫の詩人ホセ・ガルベス・バレネチェアが味わい、女性のため息のような甘さと柔らかさにたとえて名づけたといいます。現在も菓子とともに紹介される命名の伝承です。
ガルベスは一八八五年生まれ、二人の結婚は一九一三年です。菓子を十九世紀初めに置く起源説とは、この夫妻の命名譚は時代が異なります。二十世紀初頭とする説明もあり、乳の菓子の成立と、ため息という詩的な名が付いた時点は、必ずしも一つではありません。
リマの記念祭からカラカスの教室へ
リマでは食後や午後に少量を味わう甘味として紹介され、冷たい茶や小さなピスコのグラスを添える食べ方もあります。市の記念祭に合わせた歴史地区の食の催しにも、この菓子が登場します。
海外でペルーの菓子を教える題材にもなっています。二〇二四年七月、カラカスではペルー大使館と大学の料理学校が開いた講座で、菓子専門家パメラ・プラセンシアが、シナモン菓子のエンカネラードとともに作り方を教えました。乳のクリームとワインの泡を重ねた小さな器は、リマの食文化を紹介する一品として、国外でも受け継がれています。
用語解説
- マンハール・ブランコ
- 「白い食べ物」を意味する料理名。ススピロでは乳を煮詰めた濃い甘いクリームを指し、卵黄も加える。
- 無糖練乳
- 牛乳の水分を減らし、砂糖を加えずに作る乳製品。加糖練乳とは区別します。
- メレンゲ
- 卵白を泡立て、砂糖などを加えたもの。
- ポートワイン
- ポルトガルの酒精強化ワイン。
- アムパロ・アヤルサ
- 詩人ガルベスの妻。ススピロの創作・命名伝承に登場します。資料によって姓の綴りに差があります。
- ホセ・ガルベス・バレネチェア
- 1885–1957年。ペルーの詩人・文筆家・政治家で、リマの生活を描いた文章でも知られます。
- ピスコ
- ペルーなどで造られるブドウの蒸留酒。
- パメラ・プラセンシア
- 2024年の在ベネズエラ・ペルー大使館の菓子講座を担当したペルー人の菓子専門家。
- エンカネラード
- シナモンの香りを用いるペルーの菓子。2024年のカラカスの菓子講座で、ススピロとともに教えられた。
調査注記
古いmenjar blancの材料はWIPO掲載の研究が引くイサベル・アルバレスの研究による。米粉・鶏入り料理から現在の二層菓子への各段階を、一つの発明年や直系の同一ルセットとするものではない。起源を十九世紀初頭とするPROMPERÚの紹介と、二十世紀初頭とする同機関の別の紹介には相違がある。夫妻の生年・婚姻年は国会博物館の経歴資料、命名の物語はリマの観光台帳として確度を分けた。







