Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

カルソネス・ロトス
Calzones rotos
切り込みに端を通して作るチリのねじり菓子
揚げ菓子 / チリ

長方形の生地に一本の切り込みを入れ、端をくぐらせると、中央にねじれた開きができます。チリのカルソネス・ロトスは、この形で揚げて粉砂糖を振る菓子です。チリでいう粉砂糖はアスカル・フロール(azúcar flor)です。薄く歯切れのよいもの、少し厚く柔らかいものがあり、雨と寒さのある冬の家庭のおやつとして親しまれます。名の意味は「破れた下着」。その由来にも、形と売り手にまつわる二つの話があります。
切って延ばせる硬さへまとめる
小麦粉に卵、砂糖、バターやマーガリン、ベーキングパウダーを合わせ、レモンやオレンジの皮で香りをつけます。液体には乳を使うルセット(材料の配合と作り方)も、水を少しずつ加えるルセットもあります。卵は全卵のみ、または卵黄を足す作り方があり、厚みや水分を変える余地が残ります。
生地は型に流すほど柔らかくせず、延ばして切れる、まとまりのある硬さに整えます。水分は粉の状態を見ながら加え、打ち粉は必要な分にとどめます。余分な粉が表面に多く残ると、揚げ油の泡立ちの原因にもなります。柑橘の皮のほか、少量のピスコやラム、オレンジ果汁を加える仕立てもあります。
結ぶのでなく、切り込みへ端を通す
生地を麺棒で延ばし、十センチほどの長方形に切ります。厚さは三〜五ミリほどの例があり、好みで厚くすることもあります。中央に縦の切り込みを入れ、片方の端を通して軽く伸ばすと、生地がねじれ、独特の開きができます。ひもをつくって結ぶのではなく、一枚の生地の切り込みを利用する成形です。
生地の厚さは、揚げ上がりの食感に関わります。薄いものは縁が軽く割れ、厚いものは中の柔らかい部分が多く残ります。長方形のほか、菱形に切って同じように端を通すこともでき、中央の開きとねじれが共通の目印になります。
生地の糖と、揚げた後の粉砂糖
成形した生地は熱した油へ少量ずつ入れ、両面が均等に色づくよう返します。厚く延ばしたものは、外側だけを濃く色づけず中まで火を通します。油を切って粉砂糖を振ると、ねじれた金色の面に白い砂糖が付き、冬のオンセで茶やコーヒーとともに供されます。
オーブンで焼く現代の型もありますが、油で揚げた型とは表面と食感が異なります。
広場の売り手のあだ名、裂けた布の見立て
植民地時代のサンティアゴのアルマス広場で、女性の売り手のスカートが風でめくれ、破れた下着が見えたという伝承があります。「破れた下着の婦人」というあだ名が菓子へ移った、とチリのテレビ番組は紹介しています。女性の名前や当時の販売記録はなく、年代を確定できる出来事ではありません。
別の説では、端を返した生地の開きが破れた布を思わせることから名が付いたといいます。売り手に付いたあだ名か、成形そのものの見立てか。どちらが先かは分かっていません。
冬には家庭だけでなくパン店や屋台にも並びます。料理家ピラール・エルナンデスが伝えるのも、冬に訪ねてきた祖母がその場で揚げた記憶です。揚げたてのねじれに粉砂糖を振る一皿は、こうした家族の場面にも受け継がれています。
用語解説
- アスカル・フロール
- チリで粉砂糖を指す呼び名です。
- ベーキングパウダー
- 水分や加熱によってガスを生じ、生地をふくらませる膨張剤です。
- ピスコ
- ブドウを原料とする蒸留酒。チリの菓子の香りづけにも使われます。
- ピラール・エルナンデス
- チリの家庭料理を伝える料理家。祖母の冬のおやつの記憶とともにカルソネス・ロトスを紹介しています。 オンセ:チリの午後の茶・コーヒーを囲む軽い食事。冬の揚げ菓子を添えることがある。 アルマス広場:サンティアゴ中心部の広場。売り手の伝承の舞台。







