Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

バンバルーニ
Bambalouni
大きな輪を揚げたての砂糖とともに
揚げ菓子 / チュニジア

柔らかな発酵生地を濡らした手で取り、大きな輪に広げて油へ落とす。チュニジアのバンバルーニは、熱い表面に砂糖をまとわせ、その場で食べる揚げ菓子です。チュニス近くのシディ・ブ・サイドでは、松の実を浮かべたミントティーとともに、丘の町の食べ歩きにも親しまれます。不揃いな大きな穴は、型で抜かずに柔らかい生地を手で扱う製法から生まれます。
粉で硬くせず、水をつけた手で扱う
小麦粉、酵母、水を中心に生地を作り、発酵させます。卵黄やオリーブ油を加えるルセット(材料の配合と作り方)もあります。型で抜けるほど硬くまとめるのでなく、指へ強くつく、なめらかで柔らかな状態が特徴です。発酵で生まれた気泡を含む生地を、手で取り分けて輪にします。
パリのチュニジア料理店マブルークのルセットでは、酵母と糖をぬるま湯に合わせ、粉を段階的に加えます。最初の粉を混ぜて休ませた後、卵黄、オリーブ油、塩を入れ、残りの粉で状態を整えて、再び休ませます。発酵と材料の追加を分けるこの工程は、一度ですべてを混ぜる方法とは異なります。
成形する手は水で湿らせます。手へ生地が貼りつくのを抑え、引っ張るときに輪を壊しにくくするためです。粉を大量に足して扱いやすくすれば、生地そのものの硬さも変わります。柔らかさを残したまま形にする点に、この揚げ菓子の仕事があります。
砂糖は外側に置く
成形した生地は、十分な量の油に浮かせるようにして揚げます。発酵で気泡を含んだ生地は、外側に薄い皮ができ、内側は柔らかく揚がります。熱いうちに砂糖または粉砂糖をまとわせると、最初に粒の甘さと表面の歯触りが来て、その下に柔らかな生地が続きます。
球を指すイタリアの名、現地の輪の形
イタリア語の bombolone、複数形 bomboloni は、発酵生地を揚げてクリームやジャムを詰める菓子の名です。語源は「球状のもの」を表す bomba とされます。チュニジアの食文化記者ハテム・ブリアルは、トスカーナの bombolino という名が、リヴォルノ出身のイタリア系ユダヤ人共同体グラーナを介して伝わった可能性を挙げます。
しかし現在のバンバルーニは、詰め物のある球ではなく、大きな穴を持つ輪です。当地の揚げ生地フティラに形や技法が近づいたという解釈では、イタリア語由来とみられる名が残り、菓子は輪形へ変わりました。誰がいつ持ち込んだかまでは分かっていません。
丘で揚げ、港へ売りに下りた家
シディ・ブ・サイドの店主カマル・マンスーリの回想では、祖父は一九二六年にバンバルーニを作り始め、丘の上で揚げたものを港付近の漁師へ売りに下りていました。町の往来が活発になった一九三二年頃、丘上の店で売るようになったといいます。地元紙『Al Chourouk』にも一九二六年から同地で売った人物の話があり、この町に根づいた一店の販売史が伝わります。菓子全体の誕生年とは分かっていません。
観光案内で親しまれる温かい輪とミントティーに加え、現地報道には蜂蜜をかける食べ方もあります。砂糖をまとわせるか、蜜で甘味を足すか。店先で揚がった生地をすぐ味わう習慣の中にも、仕上げの違いが残っています。
用語解説
- シディ・ブ・サイド
- チュニス近郊、海を望む白壁と青い扉で知られる町。
- ボンボローネ/bombolone
- イタリア語の揚げ菓子名。トレッカーニは球状を表す bomba からの派生とし、詰め物をする型を説明する。
- フティラ/ftira
- チュニジアの揚げ生地。バンバルーニの輪形との関係が現地記事で論じられる。
- グラーナ
- リヴォルノからチュニジアへ移ったイタリア系ユダヤ人共同体の呼称。菓子伝来説に登場する。
- 発酵
- 酵母などの働きで、生地に気体や香りが生まれる過程。
- マブルーク
- パリにあるチュニジア料理に着想を得た料理店。卵黄とオリーブ油を使うバンバルーニのルセットを紹介しています。
- ハテム・ブリアル
- チュニジアの食文化記者。イタリア語名と現地の輪形の関係を論じる。
- カマル・マンスーリ
- シディ・ブ・サイドのバンバルーニ店主。祖父の販売史を回想している。







