Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

プータレークル
Pootharekulu
熱い土鍋で焼く、食べられる米の薄紙
砂糖菓子 / インド・アーンドラ・プラデーシュ州アートレーヤプラム

プータレークル(Pootharekulu/పూతరేకులు)は、透けるほど薄い米のシートにギーと砂糖などを重ね、折り畳んだり巻いたりする菓子です。南インド、アーンドラ・プラデーシュ州のアートレーヤプラムを代表し、「ペーパー・スイート」の名でも知られています。白い包みは紙ではなく、米から作った食べられる膜です。
生地をのばさず、布で薄膜を作る

アートレーヤプラムの職人が、逆さにした鍋の表面で米の薄い皮をつくる。焼き面からはがす前の手の動きが分かる。
写真・図版:Aneetha K/CC BY-SA 4.0/原図。CC BY-SA映像の30秒位置からffmpegで静止画を抽出。400×300の原映像解像度。
透ける薄膜の出発点は、水に浸した米を挽いた液状の生地です。鍋は、普通のように内側へ生地を流すのではなく、伏せて外側を熱します。その熱い曲面に、生地を含ませた薄い木綿布をさっと渡すと、表面に薄膜が残ります。火が通った膜を破らないように剥がし、1枚ずつ積んでいきます。
膜の1枚はレーク(reku)、複数ならレークル(rekulu)です。プータレークルの名は、テルグ語の「塗るもの・被覆」を表すプータ(pootha)と、この薄いシートを表す語に結び付きます。折り畳んだ菓子を1つ指す場合にはプータレークという単数形も使われます。
道具にも下準備があります。地理的表示の公報に載る作り方では、土鍋の表面を加熱し、油を含ませた布で拭く作業を繰り返して滑らかにします。ざらついた鍋面のままでは、できた膜を破らずに剥がすことが難しくなります。薄い膜を受け止める鍋面を整えてから、生地を焼く仕事に入ります。
地域の米ジャヤ・ビヤム(jaya biyyam)は、粘りの強さを生かして使われます。米の浸水から1枚を剥がすまで、職人は生地の濃さ、鍋の熱さ、布に残す量を合わせます。膜を薄く塗り、ひと続きのまま剥がせる状態へ焼き上げます。
米のシートを作る人と、包む人
焼いたシートには、澄ましバターのギーを塗り、砂糖やジャガリー、ナッツ類を重ねて折ります。ジャガリーは風味の残る含蜜糖です。細長い長方形がよく知られますが、三角形に折る例もあります。折り畳む形のほか、薄膜を巻き重ねた製品もあります。外から1枚の厚い皮に見えても、切り口には薄い膜の重なりが現れます。
地域の仕事には、薄膜を焼く工程と、中身を加えて包む工程の分業があります。自宅でシートを作って菓子店へ納める女性がいる一方、店で折り畳みを担当する職人もいます。アートレーヤプラムの職人シャマラは、砂糖またはジャガリーとギーだけのものを、村で代々作ってきた形として語っています。糖と油脂だけで仕上げるものも、ナッツを加えるものとともに続いています。
製造者の団体が2023年に語った沿革によると、家で薄膜を作る仕事は、限られた共同体の女性から、村のさまざまな共同体へ広がってきました。販売店の品揃えが増える一方で、その土台のシートを家庭で焼く女性たちの仕事が続いています。
地理的表示(GI)の公報には、白砂糖とカルダモン、ジャガリーと胡椒、カシューナッツ入り、複数のドライフルーツ入りなど6つの種類が記されています。米の膜は共通でも、中身の香りと粒の大きさが変わります。チョコレートなどを包む新しい展開もあります。
炊飯の湯から生まれたという伝承
誕生の物語では、米を土鍋で炊いたときの余分な水が、別の熱い鍋へこぼれます。そこにできた膜を剥がして砂糖と食べたことが始まりになった、と語られます。炊飯の湯から菓子が生まれたという、土地に伝わる話です。現在の製造では、挽いた米の生地を使い、濃さや鍋の熱さを調節して薄膜を焼きます。
村には約300年の来歴があると伝わりますが、最初に作った人物や年が確定しているわけではありません。現在は結婚、婚約、出産前の祝い、祭りなどで贈られ、寺院を訪れた人の持ち帰る菓子にもなっています。2021年8月21日にはインド郵便がこの菓子を描いた記念封筒を発行し、2023年6月14日には「Atreyapuram Pootharekulu」のGI登録証が発行されました。地域の家内生産から遠方への販売へ広がる中でも、シートを焼き、壊さずに包む仕事は製品の中心にあります。

ドライフルーツ入りのプータレークル。薄い米のシートを巻き重ねた製品で、断面に層が見えます。 撮影:Balajijagadesh。画像出典/CC BY-SA 3.0。
用語解説
- レーク(reku)/レークル(rekulu)
- 米の薄膜を指すテルグ語の単数形と複数形。
- プータ(pootha)
- 塗るもの・被覆を表す語。菓子名の前半に関わります。
- ジャヤ・ビヤム(jaya biyyam)
- プータレークル作りで用いられる粘りの強い米の呼称。
- ギー
- 水分や乳固形分を除いた乳脂肪。焼いたシートに塗って使います。
- ジャガリー
- 風味の残る含蜜糖。白砂糖とともに、この菓子の甘味に使われます。
- シャマラ
- アートレーヤプラムでプータレークルを包む仕事を続ける職人。村で受け継がれた砂糖とギーで作る菓子について語っています。
- 地理的表示(GI)
- 製品と産地の結び付きを保護する制度。アートレーヤプラムの製品は2023年に登録証を得ています。







