Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

シラオ・カジャ
Silao Khaja
薄い生地を重ね、軽く揚げるビハールの菓子
揚げ菓子 / インド・ビハール州シラオ

シラオ・カジャ(Silao Khaja)は、東インドのビハール州シラオで作られる、薄い層を重ねた揚げ菓子です。淡い黄色の小片はほぼ四角く、重なりの間に空隙があります。幾重もの生地を噛む軽さに、砂糖やジャガリーの糖液が加わります。
カジャという名の菓子はほかの土地にもありますが、シラオ・カジャはその地域名を持つ菓子です。シラオはナーランダーとラージギルという2つの古い仏教遺跡の近くにあり、町を訪れる人にも親しまれてきました。
12から16枚の薄い生地
材料は小麦粉、水、ギー、糖などです。インドの地理的表示公報に載る製法では、ムラリヤと呼ばれる小麦を挽いてふるい、水を加えて生地にします。小さく分けた生地を木の麺棒で薄くのばし、ギーを使いながら12から16枚ほど重ね、まとめて巻いてから切り分けます。
層を作ってから揚げるという順序が、この菓子では重要です。薄い面を先に重ねておくと、揚げた小片の中にそれぞれの層と隙間が残ります。ギーは乳から水分や乳固形分を除いた油脂で、生地の取り扱いと揚げる工程の両方に使われます。
切り分けたものは熱したギーで、軽く色付いて歯切れがよくなるまで揚げます。続いて糖液を合わせます。ジャガリーを使う場合には、糖を水と煮て溶かし、浮いてくる泡や混じりものを除いてから使います。公報の作り方では、揚げたカジャへ糖液を振り掛けます。ほかの土地のカジャには糖液へ浸す作り方もあり、糖を含ませる方法にも地域ごとの違いがあります。
軽い層は、包み方まで変える
薄い層と軽い膨らみを壊さずに、店から持ち帰れるよう包むことも、シラオ・カジャの仕上げに含まれます。公報には、小さな籠や箱へ重ねて収め、大箱へきつく詰めず、小さな容器で扱う方法が記されています。軽くもろい層に、上に積んだ菓子の荷重をかけすぎないためです。
湿気も歯触りを変えます。冬や乾いた時季と、雨季とでは揚げ上がりの扱いと保存性が異なり、雨季には柔らかくなりやすくなります。薄い生地を重ね、揚げた直後の軽さを守る仕事は、成形や揚げ加減だけでなく、冷まし方、箱の大きさ、湿気からの保護にも及びます。
地元の水と気候は、この菓子の特色として語られます。製造では、小麦を選んで挽くこと、薄くのばすこと、ギーを使うこと、切り分けと揚げ加減をそろえることが、1つの製品につながります。
仏陀の伝承と、菓子の町を訪ねた19世紀の記録
シラオには、仏陀がラージギルからナーランダーへ向かう途中で立ち寄り、人々が菓子を供したという伝承があります。仏陀が弟子に食べるよう促した言葉「カ・ジャ」が名前になった、という語りまで続きます。菓子と土地の仏教的な記憶を結び付けた、名前の由来話です。
19世紀の考古調査者J・D・ベグラーは、1872~73年にこの地を旅し、シラオが菓子と炒り米で名高く、自分で味わってもその評判を認められる、と記しました。1878年刊行の旅行報告には、菓子の町の実際の味についての短い証言が残っています。
同じ報告に収められた土地の伝説では、ヴィクラマーディティヤ王が優れた菓子職人をここへ住まわせ、その子孫が商いを続けているとされます。ベグラーは町の名の由来とも結び付けてこの話を考察しています。王の時代の製法は分かりませんが、19世紀には、菓子の評判を代々の職人の仕事へ結び付ける語りがありました。
シラオ・カジャは2018年12月11日付で地理的表示(GI)の登録証を得ました。登録で示される生産地は、ビハール州ナーランダー地区のシラオです。各地のカジャを一括する名称ではなく、薄い層と軽さを重視してきた土地の製品として位置付けられています。
用語解説
- ムラリヤ
- シラオ・カジャの地理的表示公報に記される小麦の呼称。
- ギー
- 水分と乳固形分を除いた乳脂肪。生地の扱いと揚げる工程に使います。
- ジャガリー
- 風味の残る含蜜糖。砂糖とともに、カジャの糖液に使われます。
- ナーランダー
- シラオの北にある仏教遺跡で知られる土地。現在の地区名でもあります。
- ラージギル
- シラオの南にある、古代仏教史と結び付く町。
- J・D・ベグラー
- 19世紀にインドの考古調査を行った人物。1872~73年のシラオ訪問と菓子の記録が公報に引用されています。
- ヴィクラマーディティヤ王
- シラオのカジャの古さを語る伝説に登場する王の名。
- 地理的表示(GI)
- 産地と品質や評判の結び付きを保護する制度。シラオ・カジャは2018年に登録証を得ています。
- 仏陀
- 仏教の開祖。シラオを通って菓子を供されたという土地の伝承に登場します。







