Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

ナヴァト
Navat・Novvot
糸のまわりに育てる、大きな砂糖の結晶
砂糖菓子 / ウズベキスタンなど

ナヴァト(Navat)は、濃い糖液から大きく成長させた結晶糖です。ウズベキスタンではノヴヴォト(Novvot)とも呼ばれ、イランのナバート(nabāt、نبات)と同じく、茶に添える甘味として親しまれます。透明に近いもの、淡い黄色、琥珀色のものがあり、糸を芯にして幾つもの結晶が連なった姿が特徴です。細かい砂糖を押し固めた塊とは、でき方が異なります。
糸は砂糖を結ぶためのものではない
作るときには、まず砂糖を水に溶かし、加熱して濃い糖液にします。糸を張った容器へ糖液を注ぎ、動かさずに置くと、糸のまわりへ糖の結晶が付き、時間をかけて大きくなります。十分に成長したところで残りの糖液を抜き、結晶の付いた糸を取り出して乾かします。糸は出来上がった菓子を後からつなぐためのものではなく、結晶を育てる工程の中に入っています。
この変化を支えるのが過飽和です。温かい液には多くの砂糖が溶けますが、濃い糖液の温度が下がるにつれ、溶けたままでいられる量を超えます。その糖が固体として現れ、すでにある結晶の表面へ取り込まれていきます。ナヴァトの製造は、糖液を鍋で固くなるまで煮詰めて終える作業ではありません。溶かした糖を、結晶として育て直す作業です。
ウズベキスタンの技法には、糸を数列平行に張り、3日ほど静置する例があります。一方、イランで行われた結晶糖の製造研究には、温度を制御しながら16時間で結晶化させる実験もあります。時間は糖液の濃さ、容器、温度の下げ方で変わります。3日という期間そのものより、結晶を壊すような撹拌を避け、成長する条件を保つところに製法の要点があります。
ブドウの糖液と、白い砂糖の結晶
ウズベキスタンのナヴァトにはブドウ果汁を合わせる作り方が知られますが、砂糖と水を基本とする方法もあります。ナヴァトを「ブドウを煮詰めただけの菓子」と説明すると、この違いが消えてしまいます。砂糖と水を使う作り方で主となる結晶はショ糖、すなわちスクロースです。果汁を合わせた場合の糖組成まで、同じ実験結果で一律に決めることはできません。果汁や香料は、結晶になる砂糖とは別に、色や香味の違いを生みます。
イランではサフランを加えたナバートがよく知られます。糸に付いたもののほか、棒に結晶を育てた形もあります。結晶を付ける芯の選び方は、取り出した後に茶へ入れやすい形かどうかにも関わります。飴を引き伸ばして白く仕上げるパルヴァルダと比べると、ナヴァトは大きな結晶の輪郭と透ける色をそのまま見せる菓子です。
茶と、地域の砂糖作り

2025年8月、タシケントのチョルスー市場で販売されるナヴァトの結晶。結晶の色と塊の形が見える。
写真・図版:ElenaLitera/CC BY-SA 4.0/原図。Wikimedia Commons生成の450px縮小版を取得。追加のトリミング・色加工なし。原寸は共有環境の429を踏まえ未取得。
ナヴァトは一片を茶に溶かしたり、飴のように口に含んだりして食べられます。市場では乾燥果実やほかの糖菓とともに並び、茶の時間のために買い求められます。タジキスタンの文化目録は、ソグドとヒソールの谷で続く菓子作りとしてナボト(nabot)を挙げています。そこには、糸に付いた歯状の結晶と、鍋底にできた塊状のものという2つの形が記されています。どこへ糖が結晶として付き、どのように取り出すかによって、出来上がりの形にも違いが生まれます。
ナバートはイランでも、輸入された砂糖をそのまま使うこととは別に、土地で作られる糖の製品でした。1890年ごろのペルシャでは、マルセイユやロシアから輸入する塊状の精製糖、粒状糖と並び、現地で作るナバートが記録されています。ここで記録されているのは、サトウキビから砂糖を取り出す製糖ではなく、砂糖を地域で大きな結晶糖へ加工する仕事です。
糖液を用意してから糸の周囲に結晶を育てる順序。Sweetlore制作の工程模式図。結晶の数・大きさは概念的に示しています。
用語解説
- 過飽和
- ある温度で通常溶けていられる量を超えて、物質が液体に溶けている状態。結晶が成長する条件です。
- ショ糖
- 砂糖の主成分。スクロースとも呼ばれ、ナヴァトの大きな結晶を作ります。
- サフラン
- 花の柱頭を乾燥させた香辛料。ナバートの香りと黄色に用いられます。
- ソグド、ヒソール
- タジキスタンの文化目録がナボト作りを記録する地域。ヒソールは谷を含む地域を指します。







