Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

ハシュタク
Khashtak・Hashtak
乾燥アンズを開き、ナッツを詰める
砂糖菓子 / ウズベキスタンなど

ハシュタク(Khashtak、Hashtak)は、乾燥したアンズの中にナッツなどを詰める、ウズベキスタンの甘味です。アンズの果肉を皮のように使い、種のあった場所へクルミやアーモンドを収めます。砂糖を煮る工程や生地を焼く工程を持たず、乾燥果実の甘酸っぱさと、ナッツの油脂と歯応えを一口の中に合わせます。
市場などではクルミを一片入れた簡潔な形も知られますが、ハシュタクは果実とクルミだけに限られる名前ではありません。タシケント州ボスタンリク地区のブルチムッラには、アーモンド、レーズン、蜂蜜を入れる形式が伝わっています。材料が少なく見える菓子にも、土地で受け継がれた組合せの違いがあります。
種を外したところへ、別の中身を入れる
ブルチムッラの作り方では、乾燥アンズを途中まで切り開いて種を除き、アーモンドやクルミ、レーズン、少量の蜂蜜を入れて閉じます。アンズを完全に2枚へ切り離さなければ、詰めた中身を果肉で包めます。果実自体の形を生かしているため、外側と中身を一緒につぶして丸める菓子とは、食べたときの構造が異なります。
アンズは柔らかく噛み切れる外側を作り、ナッツは硬い芯になります。レーズンは小さな乾燥果実として隙間へ入り、蜂蜜は甘みを加えます。1種類の果実の中へ、別の果実と種実を重ねる組合せです。クルミだけを詰める形では輪郭の大きいナッツが前に出るのに対し、レーズンと蜂蜜を加える形は、細かな材料が中でまとまります。
アンズの種の中にも仁がありますが、この菓子で種を除いた空間へ入れるアーモンドやクルミは、それとは別の材料です。殻付きの種を残したまま食べる菓子でも、果肉を抜いて仁だけを食べるものでもありません。切り開いた果肉の中を見れば、何を詰めたかが分かります。
天日乾燥の果実を使う土地の作り方

2019年6月、ウズベキスタン・フェルガナで杏を屋外乾燥する作業。ハシュタクに使う乾燥杏の前段階を示す。
写真・図版:Shuhrataxmedov/CC BY-SA 3.0/原図。Wikimedia Commons生成の450px縮小版を取得。追加のトリミング・色加工なし。原寸は共有環境の429を踏まえ未取得。
ブルチムッラと近隣のフムサンでは、アーモンドが暮らしの中で菓子や焼き物に使われます。この地域のハシュタクでは、アンズを天日で乾燥させることが重んじられます。乾燥機や加熱で仕上げる方法と区別され、硫黄由来の処理を加えずに干した果実は、鮮やかなオレンジ色を保つ工業的な乾燥アンズより暗い色になります。
この天日乾燥の条件は、土地の作り方として大切にされるものです。見た目が明るい乾燥アンズを使った品も含め、名前だけで同じ乾燥方法だと判断することはできません。ハシュタクの個性は、詰め物だけでなく、外側の果実をどう乾燥させたかにも関わります。
ハシュタクに使う地元のアーモンドは、燃料用の伐採で樹や在来系統が減るおそれもありました。2007年にはSlow Foodなどがボスタンリクで在来アーモンドの調査と保全に着手し、2009年にはブルチムッラとフムサンにSlow Foodの地域会ができました。果実を詰める菓子の材料を、畑や山の樹の段階から守る取り組みです。
家の手仕事から、タシケントの市場へ
ブルチムッラのハシュタクは住民によって作られ、タシケントの市場へも運ばれます。客を迎える家へ持って行く贈り物にもなる甘味です。保存のために乾かした果実は、そのまま食べる材料であるだけでなく、ナッツを詰めるひと手間によって、手土産としての形を得ます。
2019年12月にはブルチムッラでハシュタク作りの競技会が開かれ、菓子職人が作った品を村の人々が審査しました。地元の学校長が催しを企画し、教師や生徒、森林管理の職員も参加しました。家庭や市場でのハシュタクに加え、この日は作り手が菓子作りの技を村の人々に披露する場になりました。
ブルチムッラの地域記録には、ハシュタクを「七つの材料」の意で説明し、現在の作り方では4つを使うという話が残ります。ただし、これは語源を裏づける独立した古い言語史料や、失われた3つの材料を示す記録ではありません。現在の姿を知る手掛かりは、アンズ、ナッツ、レーズン、蜂蜜を実際にどう包むかにあります。
アンズの果肉を包みに使う構造。Sweetlore独自作図。ブルチムッラの一例を基にし、果実や材料の実寸・全地域の配合を示しません。
用語解説
- ブルチムッラ
- ウズベキスタン、ボスタンリク地区の村。アーモンドを詰めるハシュタクの伝統が記録されています。
- フムサン
- ブルチムッラに近い同地区の村。アーモンドを使う食文化があります。
- 天日乾燥
- 太陽と外気を利用して乾燥させる方法。本文では地域で重んじられるアンズの乾燥法を指します。
- Slow Food
- 地域の食文化と生物多様性を守る活動。本文ではボスタンリクの在来アーモンド保全に関わる団体と地域会を指します。
- 仁
- 種の硬い殻の内側にある部分。本文ではアンズの種の仁と、詰め物に使うナッツを区別しています。







