Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

ジェント
Zhent・Jent
キビを砕き、乳と油脂を合わせるカザフの菓子
砂糖菓子 / カザフスタン、セメイなど

ジェント(Жент、Zhent、Jent)は、加工したキビを砕き、油脂や甘味を合わせたカザフスタンの菓子である。茶の食卓に切り分けて出され、炒った穀物の香りに、バターや乳製品の風味、レーズンの甘味が重なる。焼き上げた生地でも、砂糖液だけを固めた飴でもない。穀物を食べられる状態へ加工し、その粒や粉を油脂とまとめるところに特徴がある。
粒を残すか、粉にするか
中心になる材料は、カザフ語でスョク(сөк)と呼ぶ加工したキビである。ジェントではこれを臼で搗いたり、粉挽きで砕いたりする。炒った穀物の粉であるタルカン(талқан)を使う作り方もある。したがって、キビを炊いて砂糖を混ぜるだけの菓子と考えると、粉砕の工程や、油脂を含ませる工程が抜けてしまう。
粗く砕いた穀粒を残せば、その粒が断面に現れる。細かな粉を多く使えば、より均一なまとまりになる。同じ「キビの菓子」でも、粒度と粉の割合で口に入れたときの崩れ方が変わる。油脂はその粉や粒の間へ入り、甘味や乳製品を全体になじませる。仕上げは容器へ移して表面をならし、涼しい場所で落ち着かせる。成形後にオーブンで焼いて固める工程は必要としない。
乳製品のイルムシク(ірімшік)を粉にして加える形式では、穀物だけの味に乳の風味が加わる。レーズンは噛んだときの食感と甘味を足す材料であり、菓子全体を細かな粉だけで作る場合とは違った変化をつける。ナッツや蜂蜜を含む作り方もあるが、これらをすべて必須の材料とみなすことはできない。
バターで混ぜる形式と、馬脂を温める形式
ジェントには、材料をまとめる順序にも違いがある。2012年にパヴロダルで刊行された食品用語辞典に収められた一つの作り方は、砕いたスョクに、乳の固形分を除いた澄ましバター、砂糖、イルムシクの粉、レーズンを混ぜるというものだ。混合物を器へ入れ、表面を平らにして冷所で保つ。
同じ辞典には、キビ、またはそのタルカンに砂糖とイルムシクを混ぜ、鍋で温めた馬脂へ加えて、弱火で混ぜる作り方もある。穀物が脂を含んだところで器に移す。バターを使う形式と馬脂を使う形式では、油脂の種類だけでなく、加熱をどの段階に置くかも違う。どちらも乳製品を含む甘い穀物食だが、辞典には別々のルセット(材料の配合と作り方)として載る。
現在よく紹介されるバター入りのジェントに対し、馬脂を温めてキビに含ませる作り方も記録に残る。
夏に仕込み、冬の茶卓へ
ジェントは、カザフのダスタルハン(дастарқан)、すなわち客を迎える食卓で大切にされてきた。茶とともに少しずつ食べられる甘いものだが、材料には穀物、油脂、乳製品が重なり、少量でも食べ応えがある。茶のもてなしに使われると同時に、冬へ備えて作られる食品でもあった。
夏の乳の豊かな時期には、クルトやイルムシクが作られ、ジェントも冬に備える食べ物の一つになった。家畜の胃や腸を容器にする保存法も記録されている。これは、現代の型や包装容器とは違う保存の工夫である。
ジェントは、セメイだけに限られる郷土菓子ではない。キビを使う共通の骨格を持ちながら、家庭や地域、作り手によって乳製品や脂の選び方が変わり、現代には工場製品もある。砕いた穀物を乳製品と油脂でまとめる方法は、食卓で少しずつ供する甘味を作ると同時に、乳が多い季節の材料を寒い時季へ持ち越す方法でもあった。
用語解説
- スョク(сөк)
- 殻を除くなどの加工を施したキビ。ジェントの中心材料になる。
- タルカン(талқан)
- 炒った穀物を挽いた粉。用いる穀物や粒度には違いがある。
- イルムシク(ірімшік)
- カザフの乳製品。ジェントには粉砕して加える形式がある。
- 澄ましバター
- バターから水分や乳の固形分を除いて得る油脂。
- ダスタルハン(дастарқан)
- 食卓布、またそこに整えられた食卓やもてなしを指す語。
- ルセット
- 材料の配合と作り方の一式。







