Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

ウラマ
Urama
薄い帯を巻いて揚げる、中央アジアの菓子
揚げ菓子 / ウズベキスタンなど

ウラマ(Urama、урама/oʻrama)は、薄くのばした生地を長い帯に切り、1本ずつ巻いて揚げるウズベクの菓子である。渦巻くような形と、薄い生地が重なって生じる隙間が特徴で、仕上げには粉砂糖を振る。
小麦粉の生地を揚げる点では、中央アジアに広くある揚げパンと共通する。しかし、ウラマは厚みのある小さな生地をふくらませるよりも、薄い帯を重ね、その縁を見せる成形が中心になる。巻いた帯の薄い縁を割りながら食べる形になる。
1枚の帯が、重なりを作る
ウラマの生地には、小麦粉に卵、糖、油脂などを合わせる作り方がある。生地をいったん休ませ、薄くのばしてから帯に切る。ウズベク料理の専門家カリム・マフムードフの料理書では、波形の刃を持つ道具で幅5〜6センチ、長さ45〜50センチの帯に切り、1本ずつ巻いて揚げる手順が記されている。
この寸法は、同書のルセット(材料の配合と作り方)における一例である。より短い帯を使う作り方もあり、巻きの数や仕上がりの高さは変わる。それでも、切り分けた粒を寄せ集めるのではなく、1本の帯から形を作るという特徴は明瞭だ。
縁を波形にすると、巻きの輪郭が見える。薄い生地が何重にも重なるため、切り口の面積だけでなく、帯の縁と、重なった生地の間にできる隙間が外見を形づくる。揚げるときは生地の内側まで油と熱が届く必要があり、厚い塊を作る成形とは扱いが異なる。巻いた形が、そのまま菓子の見た目と食べたときの割れ方につながっている。
クシュ・ティリと、同じ揚げ菓子の中の違い
ウズベク料理には、クシュ・ティリ(qush tili、куш тили)と呼ばれる薄い揚げ菓子もある。名は「鳥の舌」を意味する。ウラマと近い仲間としてまとめて呼ばれることがあるが、マフムードフの料理書は、成形の違う2つを別の項目として扱っている。
クシュ・ティリには、薄い生地を波形の四角や三角に切る方法と、細い棒状の生地を小さく切る方法もある。巻き形に限らない仲間である。
日本語で「ハヴォロスト」と呼ばれることもあるロシア語のフヴォロスト(хворост)は、枝に見立てた薄い揚げ菓子の総称である。ウラマをこの名で説明する料理書もあるが、フヴォロストがさまざまな成形を含むのに対し、ウラマは巻いた帯の形を指す。薄く揚げて粉砂糖を振る点は共通するが、帯を巻く形式によってウラマと見分けられる。
巻き菓子の名が変わる土地と、祝いの食卓
ウラマの形は、地域の呼び名にも現れる。カモラ・テミロヴァによるウズベク語の食文化語彙研究は、卵を練り込んだ生地を頭布のように巻いて揚げる菓子をサッラ(salla)と説明し、タシュケントとブハラの一部ではウラマと呼ぶ聞き取りを記録する。フェルガナではヴァズィク(vazziq)、スルハンダリヤではサッラという名も挙がる。生地を巻く形は共通しても、土地ごとに同じ名で通るわけではない。
タシュケントには、巻いたクシュ・ティリを意味するオラマリ・クシュ・ティリ(oʻramali qush tili)という呼び名もある。現地聞き取りには、揚げた菓子へ蜂蜜を塗り、飴や甘味を飾って、イスラームの祭日ハイートに用意する例が残る。ブハラの一部の人々は、婚礼や祭の食卓に出した菓子として記憶している。聞き取りで語られたのは、調査時点から約30〜35年前の姿である。巻き形は料理書で独立した項目になる一方、祝いの食卓ではクシュ・ティリと名が重なる土地もある。
ウラマは、家庭で作る甘い揚げ菓子としても現在に続く。ウズベクの菓子作りを発信するマフフザホン・ラヒモヴァの配合では、卵黄6個と全卵1個を小麦粉約250グラムに合わせ、生地を休ませて薄くのばし、帯を巻いて弱めの火で揚げる。冷ましてから粉砂糖を振る。卵を多く使うこの一例とマフムードフの料理書に載る配合では、巻き形は同じでも生地が異なる。
2011年にタシュケントのバーブル公園で企画されたパンと菓子の祭では、展示・販売予定の東方菓子に、ウラマの名がチャクチャクやクシュ・ティリとともに挙げられた。ウラマは家庭で作られるだけでなく、菓子職人が展示・販売を予定した粉菓子の一つでもあった。
タタールの同名菓子
タタールの菓子にも、細い生地を渦巻きにして揚げるウラマがある。タタールスタンの文化資源センターは、菱形に切るコシュ・テレ(кош теле)と並べ、渦巻き形の薄い揚げ菓子をウラマと記す。さらに西シベリアのカチュコヴォ村とウスチ=タマク村のタタール人の食文化調査では、帯状の生地を輪にしたウラマが儀礼の食卓に挙げられている。
甘いウラマと、食事の巻き物
ウラマという表記だけでは、料理の種類が決まらない。ウズベキスタンにはウラマ・ハヌムという、薄い生地で肉や野菜などを巻き、蒸して作る料理もある。どちらも生地を巻くが、甘い揚げ菓子と、餡を包んだ蒸し料理では、材料も調理法も食卓での役目も違う。
菓子のウラマは、生地そのものの薄さと巻きの形が中心であり、食事用の巻き物のように、具材の汁を閉じ込めて作るものではない。ハヌムでは餡を包んで蒸し、菓子のウラマでは帯を巻いて揚げる。
チャクチャクも小麦生地を揚げるが、細片を蜂蜜と砂糖で結び付け、一塊へ成形して切り分ける。ウラマは1本の帯を巻いた輪郭を残し、粉砂糖を外側へ振る。生地を揚げた後に、形を保つか、甘味で再び成形するかが違う。
用語解説
- カモラ・テミロヴァ
- ウズベクの方言と食文化語彙を研究する言語学者。巻いて揚げる菓子の地域名と祝いの食卓の聞き取りを記録した。
- サッラ(salla)
- 頭布を指す語。卵入り生地を巻いて揚げる菓子の名にも用いられる。
- ヴァズィク(vazziq)
- フェルガナで記録された、巻き揚げ菓子の地方名。
- オラマリ・クシュ・ティリ(oʻramali qush tili)
- タシュケントで記録された巻き形の揚げ菓子の呼称。
- ハイート
- イスラームの祭日を指すウズベク語。
- コシュ・テレ(кош теле)
- タタール語で「鳥の舌」。ウズベク語のクシュ・ティリと同じ意味を持つ、薄い生地の揚げ菓子。
- カチュコヴォ村/ウスチ=タマク村
- 西シベリアのオムスク州にある、タタール人の食文化を調べた2つの集落。
- マフフザホン・ラヒモヴァ
- ウズベク語で製菓の作り方を発信する料理人。卵を多く使うウラマの配合を公開している。
- カリム・マフムードフ
- ウズベク料理の専門家。料理書にウラマとクシュ・ティリの作り方を収めた。
- ルセット
- 材料の配合と作り方をまとめたもの。
- クシュ・ティリ(qush tili)
- 「鳥の舌」を意味する薄い揚げ菓子の呼称。巻き形のウラマと区別される場合がある。
- フヴォロスト(хворост)
- ロシア語で枝の意。薄い揚げ菓子の総称にもなる。
- ウラマ・ハヌム
- 生地で餡を巻いて蒸す食事用の料理。揚げ菓子のウラマと調理法が異なる。







