Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

ピシュメ
Pişme
客を迎える、トルクメニスタンの小さな揚げ生地
揚げ菓子 / トルクメニスタン

ピシュメ(Pişme、Pishme、пишме)は、小麦粉の生地を小さな四角やひし形に切り、油で揚げるトルクメニスタンの食べ物である。表面はきつね色になり、内側には生地の柔らかさが残る。祝いには緑茶とともに出される。その甘さは一定ではなく、現在の甘いルセット(材料の配合と作り方)がある一方で、砂糖を加えずに作った記憶も伝わっている。
ひし形に切り、油の中でふくらませる
ピシュメの作り方の一つは、小麦粉、水または乳、酵母、塩、砂糖を合わせるものだ。トルクメン料理を記録する「One Turkmen Kitchen」の2012年のルセットでは、小麦粉500グラムに対し、水または乳300ミリリットルを使う。酵母を加えた柔らかな生地を発酵させ、分割して短く休ませた後、厚さ5ミリほどにのばす。
のばした生地を幅4〜5センチの帯に切り、その帯を横方向へ斜めに切ると、小さなひし形が続けて取れる。1つずつ複雑な細工をするのではなく、大きくのばして規則的に切るため、まとまった数を作るのに向く成形である。
揚げる際は、穴あきのお玉で動かしながら両面に色をつける。油の中で向きを変える操作により、表裏を均等に加熱する。小片であっても、表面が色づくことと内側に火が通ることは同じではない。生地の厚みや発酵の状態に応じて、表面の色と内側の火の通りを見ながら揚げる。
この料理人のルセットは、水を乳へ替えると柔らかく仕上がるとしている。乳や卵を入れる形、油脂を加える形など、材料を豊かにする余地はあるが、すべてのピシュメに乳・卵・バターが必須というわけではない。
甘いものだけではない
2012年のトルクメン家庭料理の記録は、かつて砂糖なしで作られたと伝えながら、砂糖入りの配合を載せている。同じ記録の中に、昔のものとして語られる砂糖を加えない作り方と、この書き手が紹介する砂糖入りの作り方が並ぶ。
粉砂糖や蜂蜜を外から添える菓子と、生地自体に糖を練り込む食品も分けて考える必要がある。生地の甘さが控えめであれば、揚げた粉の香りと茶を組み合わせる食べ方が中心になる。ピシュメは、甘い菓子としても、粉の味を楽しむ揚げパンとしても茶の食卓に並ぶ。
祝いの茶と、春の食卓

2017年3月、トルクメニスタン・マルイ近郊のノウルーズ行事で客を迎える人々。
写真・図版:Amustard/CC BY-SA 4.0/原図。Wikimedia Commons生成の450px縮小版を取得。追加のトリミング・色加工なし。原寸は共有環境の429を踏まえ未取得。
ピシュメは、客を迎えるときの食べ物であり、結婚や出産を祝う集まりでも茶とともに出される。家庭の祝いを記録した例では、添えられる茶は緑茶である。大きな皿に盛り、皆で取り分けて食べられる小ささも、客の多い場に合う。
春のノウルーズには、穀物や乳を使うさまざまな料理とともに、ピシュメも食卓に並ぶ。トルクメニスタン大使館が紹介する祝いの献立では、揚げて砂糖を振った層状のトイ・ガトラマ、薄いシェルペク、小さな甘いピシュメなどが区別されている。つまり、祝祭の揚げ物は1種類ではない。それぞれの食べ物は、生地の厚みや層、切り方の違いで区別される。
近隣のバウルサクやボールソクにも、小さく切った生地を揚げる形はある。ただ、トルクメンのピシュメについては、結婚式や子どもの祝いに緑茶と出すという記録がある。厚い小片を揚げるピシュメ、層を作るトイ・ガトラマ、薄いシェルペクは、同じ祝いの皿に並んでも形と食べ方が異なる。
用語解説
- ルセット
- 材料の配合と作り方をまとめたもの。
- 酵母
- 生地の発酵を担う微生物。発生する気体が生地のふくらみに関わる。
- ノウルーズ
- 春分頃に祝われる春の祭り。地域ごとに料理や習俗が異なる。
- トイ・ガトラマ
- トルクメンの祝いの食卓に見られる層状の揚げ生地。
- シェルペク
- 薄くのばして揚げる粉食品。ピシュメとは形や厚みが異なる。







