Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

クレポン
Klepon
もち米の皮に溶けたヤシ糖を閉じ込める
デザート / インドネシア・ジャワなど

クレポン(Klepon)は、ヤシ糖をもち米粉の生地で包み、ゆでてからココナッツの削り身をまぶす小さな菓子です。緑の皮を歯で破ると、甘い糖が流れ出します。皮のもちもちした歯触り、中心の液体、ココナッツの細かな繊維が、一口の中で重なります。
ジャワの市場で親しまれる一方、マレー半島やスマトラ、スラウェシ、バリにも同系統の菓子があり、オンデオンデ(onde-onde/ondeh-ondeh)やブア・ムラカ(buah melaka)などの名で食べられています。日々の間食であり、婚礼や新居を祝う席にも運ばれる菓子です。

バリのクレポン。緑色の細長い生地を、白いココナッツの削り身が覆う。 写真:Joseagush / CC BY-SA 4.0 / 原図、改変なし。
糖が流れ出す一口をつくる
代表的な生地は、もち米粉へパンダンの葉の汁などを加えて練ります。パンダンは緑色と香りを添える葉です。米粉を混ぜる配合や、加熱してつぶしたいもを加える配合もあり、皮の柔らかさや粘りには幅があります。
中へ入れるヤシ糖は、小さく切ったり削ったりして包みます。糖の角で皮を破らないように形を整え、合わせ目を閉じてから湯へ入れます。加熱で内側の糖が溶けるため、閉じ方は、甘い中心を保つ鍵になります。
糖の硬さも仕上がりに関わります。柔らかく曲がるヤシ糖なら流れやすい中心になり、硬い糖では歯触りが残ることがあります。ゆで上がった球を、塩を少量合わせたココナッツへ転がすと、外側には甘さを引き締める塩味が加わります。
マレーシアやシンガポールではグラ・ムラカ、インドネシアではグラ・ジャワと呼ばれるヤシ糖が使われます。糖の色や香り、硬さの違いが、同じ緑の球に見える菓子の中にも現れます。
1810年の語彙集と、ジャワの婚礼の供物
19世紀初めには、現在も使われる複数の名が文字になっていました。ジョン・ライデンの1810年刊『ビルマ語・マレー語・タイ語比較語彙集』は、マレーの甘味を並べた表に、オンデオンデとブア・ムラカに当たるジャウィ文字の名を収めています。アラビア文字系の表記で記された名が、異なる土地の菓子を比べる表の中に並びます。この語彙集が伝えるのは名称で、今日の材料と工程を列挙した料理書ではありません。
ジャワの長編文学『スラット・チェンティニ』にも、クレポンは登場します。1814年から1823年にかけて書かれた写本群には、旅先の食事、もてなし、祭礼の供物など、豊かな食の記述があります。クレポンの名は、マタラムで行う婚礼の供物の列にも見えます。
その一つは、婚礼で新郎新婦が並んで座る家の中央の部屋、パタネンを整えるための供物です。第II巻第127歌の該当部分では、ジャダ、ワジック、ジョンコンなどの菓子とともに、カレポン(kalepon)の名が挙げられます。小さな菓子は、米やココナッツ、鶏料理、花や香などと一緒に、婚礼の場を支える品々の一員でした。
祝いの菓子に託す意味
南スラウェシのブギス・マカッサルの共同体では、オンデオンデやウンバウンバという名が用いられ、新居や新しい物を得たことへの感謝の席に登場します。ウンバウンバは「現れる」「上がる」と結びつけられ、暮らしや立場が上向く願いを託す呼び名です。丸い形にはまとまり、米には力、糖には喜び、ココナッツには楽しみという意味が重ねられています。これらは、この共同体で伝える菓子の解釈です。
マレーシアのニョニャの料理人デビー・テオも、オンデオンデを婚礼の菓子として語っています。ニョニャは、中国とマレーの生活文化が交わったプラナカン文化に関わる呼称です。一口か二口の小ささには、口を大きく開けずに食べる作法が重なります。
テオは糖液を包む作り方を伝え、扱いやすい細かな削り糖も勧めています。いもを混ぜた皮は冷めても柔らかく、小さな球の食感を支えます。
市場の緑の球から、土地ごとの姿へ

ジャカルタの移動販売で、クレポンと筒形のプトゥを一皿に盛る。2011年1月16日撮影。
写真:Midori/CC BY 3.0/原図。原寸・改変なし。
ジャワのクレポンは、チェニルやルピスなどと並ぶ市場菓子です。ジョグジャカルタでは、ラマダンの断食を終える夕方に買う甘味にも数えられます。西スマトラのミナンカバウのオンデオンデも、断食明けの市場に並びます。
ジャワでオンデオンデと注文すると、ごまをまぶした皮で緑豆餡を包んだ揚げ菓子を指すことがあります。同じオンデオンデという名でも、マレーシアとジャワでは指す菓子にこの違いがあります。
バリのジャジャ・クレポンには細長い姿があり、ロンボクではクレポン・クチリットの名が伝わります。中の糖が口の中で飛び出す感覚と結びつく呼び名です。南カリマンタンではカララプンやカラプンと呼びます。緑色、白いココナッツ、溶ける糖を共有しながら、球の形や生地、名に土地ごとの工夫が残っています。
用語解説
- パンダン
- 東南アジアで菓子や料理に用いる香りのある葉。汁を生地の香りや色に使います。
- オンデオンデ
- 地域によってクレポン系のゆで菓子、またはごまをまぶした揚げ菓子を指す呼称。
- ブア・ムラカ(buah melaka)
- マレー世界で用いられる、この系統の菓子の名。
- グラ・ムラカ
- マレーシアやシンガポールの菓子に用いられるヤシ糖の名。
- グラ・ジャワ
- インドネシアで用いられるヤシ糖の呼称の一つ。
- ジャウィ文字
- マレー語などを記すために用いられる、アラビア文字系の文字。
- パタネン
- ここでは婚礼の新郎新婦が並んで座るために整えられる、ジャワの家の中央の部屋。
- ニョニャ
- プラナカンの女性や、その生活・料理文化に関わる呼称。







