Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

イムアレット
Imqaret
デーツを包んで揚げる、マルタの菓子
揚げ菓子 / マルタ

イムアレット(Imqaret)は、甘いデーツの餡を小麦粉の生地で包み、油で揚げるマルタの菓子です。菱形や長方形に切った姿があり、外側のぱりっとした皮と、内側のねっとりした果実の違いを味わいます。村の祭りや屋台でも親しまれ、温かいものをそのまま食べるほか、アイスクリームを添える盛り方もあります。
デーツはナツメヤシの実です。種を除いた果肉を水や香りの材料とともに煮て、濃いペーストへ仕上げます。中へ包む前に餡を冷ましておくと、のばした皮の中央へ置きやすくなります。

家庭で作られたイムアレット。皮で包んだデーツ餡が断面に見える。 写真:Simon Cutajar / CC BY-SA 4.0 / 原図、改変なし。
長い餡を包み、斜めに切る
基本となるのは、平たくのばした生地にデーツ餡を置き、生地を折って包み、複数の小片に分ける成形です。長いものを斜めに切れば菱形に、真横に切れば四角に近い姿になります。そのため、1枚の菓子の輪郭は、専用の菱形の型を使わなくても作れます。
デーツ餡にはアニスや柑橘の皮などで香りをつけます。マルタの料理店Diar il-Bnietの製品には、デーツにオレンジの皮を合わせ、小麦粉、マーガリン、水で作る生地が使われています。
家庭のルセット(材料の配合と作り方)にも、さまざまな香りがあります。アンナとジョーダンの作り方では、オレンジ、レモン、マンダリンの皮、クローブなどをデーツと煮て、ブランデーとオレンジの花の水を加えます。餡が冷めたら、幅のある帯状の生地の中央へ広げ、両側の生地を折って包みます。
包んだ帯を斜めに切ると、1度に何個もの菱形ができます。この作り方では、小片へ切ってから揚げ、表裏に焼き色がつくまで火を通します。皮には油脂や卵を使う配合もあり、揚げた外側の歯触りと、デーツ餡の柔らかさが重なります。
揚げる作り方と、オーブンで焼く作り方
屋台のイムアレットは、揚げたてのぱりっとした皮が魅力です。一方、オーブンで焼く家庭の作り方もあります。マルタのロゼット・ザーラのルセットは、小麦粉とバターの生地にオレンジジュースと水を合わせ、デーツ餡にはアニスの酒とクローブを加えます。菱形や四角に切り、包み終わりを下にして焼きます。
同じデーツの菓子でも、油の中で表面を色づかせるものと、天板で焼くものがあります。餡を帯状に包んで切り分ける成形は、どちらにも共通しています。
菱形と名前の関係
マルタ語のImqaretは複数形で、単数形はmaqrutです。アラビア語とつながる名で、菱形に結びつけて説明されます。帯状に包んだ生地を斜めに切る成形から生まれる輪郭が、菓子の名にも残っています。
今日の製品には長方形もあり、焼き菓子のルセットでも菱形と四角が併記されています。切り方や加熱法には幅がありますが、いずれもデーツを包むイムアレットとして食べられています。
海の向こうのマクルードと比べる
北アフリカには、デーツ餡を包んで菱形に切るマクルードやマクルートという菓子があります。セモリナを使う皮や、揚げた後に蜜を含ませる作り方が知られます。アルジェリア出身の料理人ファリド・ザディのマクルードは、セモリナと小麦粉、バターで作る皮にデーツ餡を包み、斜めに切って揚げ、蜂蜜と柑橘のシロップを塗ります。名前と形、デーツを包む構成が、地中海を隔てたイムアレットと近い菓子です。
マルタでは、小麦粉を主体にした皮に、柑橘やアニスの香りを加える作り方が育ちました。北アフリカや中東とのつながりを残しながら、村の祭りの屋台や家庭の台所へ根づいた菓子です。現在のイムアレットが生まれた正確な年代は、明らかになっていません。
祭りの屋台から、アイスクリームを添える皿へ

ビルグ・フェストのイムアレット売り。照明を付けた看板の下に菓子を並べる。2023年10月14日撮影。
写真:Rhododendrites/CC BY-SA 4.0/原図。配信元の表示用縮小画像、追加加工なし。
イムアレットは、手で持って食べる屋台の甘味であり、村の祭りにも結びつきます。その一方で、アイスクリームを添えれば、温かい揚げ菓子と冷たい乳の甘味を合わせる一皿になります。文化遺産を料理で伝える体験講座でも、イムアレットとジェラートを作る組み合わせが用いられています。皮と餡の対比に、温度や溶け方の違いが加わる組み合わせです。
用語解説
- デーツ
- ナツメヤシの実。乾燥したものを餡などに用います。
- マクルード
- 北アフリカで食べられる、デーツ餡などを包む菓子。形や配合は地域で異なります。
- セモリナ
- 硬質小麦などを粗く挽いた粉。北アフリカの近縁菓子の皮に使われます。
- ルセット
- 材料の配合と作り方。







