Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

アナルサ
Anarsa
米を浸すところから始まる
揚げ菓子 / インド・マハーラーシュトラ、ビハール

アナルサ(Anarsa)は、浸した米を挽き、ジャガリーや砂糖と合わせて揚げる菓子です。マハーラーシュトラでは平たい円形にしてけしの実を付け、ビハールでは丸みのある姿やごまをまとったものも見られます。揚げた米の生地には細かな穴が開き、糖と揚げ油の香りが重なります。

マラーティーのアナルサ。撮影:Prashant.gaykar、2009年、撮影地不明。配信元の縮小版を使用、取得後の内容変更なし(出典・CC BY-SA 4.0)。
米を浸すところから始まる
米は数日にわたって水を替えながら浸し、水を切ってから粉にします。市販の乾いた米粉をそのまま使う方法とは、出発時の水分状態が異なります。粉にする前の乾かし方、ふるいの細かさ、加える糖の状態によって、その後の生地のまとまりが変わります。
マハーラーシュトラの家庭料理家マドゥラー・バーチャルが紹介する作り方には、浸して挽いた米にジャガリーを合わせ、さらに生地を休ませるものがあります。米を水に浸す工程と、糖を合わせた生地を休ませる工程は別です。米を浸す日数と、糖を加えてから生地を休ませる時間は、作り手によって異なります。

インド・パンジャーブの市場に並ぶサトウキビのジャガリー。撮影:Giridhar Appaji Nag Y、2007年。原画像を使用(出典・CC BY 2.0)。
ビハールの作り方を試した料理家プールニマの例では、米を3日浸し、陰干しして、わずかに湿り気が残るところで細かく挽きます。ジャガリーを混ぜた生地は1日休ませてから薄くし、ごまを付けて揚げます。表面の種は地方を区別する目安になりますが、平たい形そのものがマハーラーシュトラだけに限られるわけではありません。
平たい生地に、油を掛ける
生地を小さく取り、片面にけしの実を付けて指で延ばします。深く沈めて強火で一気に揚げるのではなく、形を保ちながら油を掛け、表面へも火を通す作り方があります。冷めると糖と米の生地が落ち着き、表面は軽い歯触りになり、内側には密度が感じられます。スハーシニ・エークボーテの家庭の作り方では、けしの実の面を上にしてギーを掛け、裏返さずに揚げます。揚がった菓子を立てかけて余分なギーを切り、冷ますと歯切れがよくなります。
糖の量だけでなく、水分の調整も重要です。生地が硬すぎれば延ばしにくく、緩すぎれば油の中で形が崩れます。米粉を作った段階から、揚げる直前まで、生地の状態を見る工程が続きます。
同じ名前の中にある地方差
ビハールのアナルサには、ごまを使い、球形に近く仕上げるものがあります。マハーラーシュトラのけしの実を付けた平たいアナルサと比べると、種の違いだけでなく、厚みや油の中での火の入り方も変わります。
コーヤーを包んだ丸いアナルサもあります。

丸いアナルサ。撮影:Ukr07、2015年、撮影地不明。配信元の縮小版を使用、取得後の内容変更なし(出典・CC BY-SA 4.0)。
南インドのアディラサムも、米と糖の生地を揚げる近縁の菓子です。ただし糖蜜を煮て米粉へ合わせる手順などに違いがあり、名前を置き換えるだけでは作り方を説明できません。
ディワーリーの仕込み
アナルサはマハーラーシュトラのディワーリーに用意する菓子の1つです。数日前から米を浸すため、揚げる日より前から仕込みが始まります。マドゥラー・バーチャルは、ディワーリーのラクシュミー礼拝への供え物としても紹介しています。エークボーテは母や祖母に習い、十代の頃から毎年、ディワーリーの菓子や軽食を家で用意してきました。アナルサも、米を浸して粉を作り、生地を休ませ、1枚ずつ揚げて仕上げます。
ネパールの家庭と菓子店にあるアナルサ
ネパールでも、ごまを付けた米の揚げ菓子がアナルサの名で作られます。カトマンズ在住の書き手が2009年のバイ・ティカの日に綴った記録には、義母から手作りのアナルサが届いた話があります。その家庭のものは、米粉と砂糖に水を合わせ、ごまを付けてギーで揚げた、平たい菓子でした。家族へ贈る品として大量に仕込まれ、受け取った家では分けて冷凍していました。
家庭の台所だけの菓子ではありません。2021年のカトマンドゥ旧市街アサンの店頭記録にも、セルロティやマルプァなどと並んで、アナルサが売られていました。インドの州ごとの違いに加え、ネパールの家庭や町の菓子店にも同じ名の米菓子が見られます。
用語解説
- ジャガリー
- サトウキビやヤシ類の樹液を煮詰めた糖の総称。
- けしの実
- ケシの小さな種子。ここでは生地の表面に付ける食材として使われます。
- マドゥラー・バーチャル
- マハーラーシュトラの家庭料理を紹介する料理家。
- プールニマ
- ビハールのアナルサの作り方を紹介する料理家。
- スハーシニ・エークボーテ
- 家庭でのアナルサの作り方を伝える人物。







