Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

ズヌード・エル・シット
Znoud el sit
薄皮を交差させて巻く
揚げ菓子 / レバノン・シリア・イラク

薄い皮に歯を立てると、さくりと割れて中から乳のクリームが現れます。ズヌード・エル・シットは、レバントやイラクなどで親しまれる、細長い揚げ菓子です。甘いシロップとピスタチオが、揚げた皮に香りと彩りを添えます。

薄皮を交差させて巻く
ある家庭の作り方では、細長く切ったフィロ生地を十字に置き、中央にアシュタをのせます。まず左右の端を内側へ折り、もう一方の皮を巻いて筒にします。包み目を留めて揚げれば、幾重もの皮が色づいて軽い歯ざわりになります。揚げた後は花の香りをつけたシロップに短く浸し、砕いたピスタチオを散らします。
アシュタの一例は、牛乳とクリームをコーンスターチで炊いて冷ましたものです。とろみをつけておくと薄い皮で包みやすく、口の中では乳の柔らかさが、揚げた皮の食感と対照をなします。別の作り方では、乳を酸で固めて水気を切り、でんぷんで炊いた乳のクリームと合わせます。なめらかなクリームだけでなく、乳を固めた粒を含むアシュタもあるのです。セモリナを少し加えるレシピもあり、乳の餡の作り方には違いがあります。シロップに浸す時間によって、外側の甘さや歯ざわりも変わります。紅茶会社アーマッドティーのレシピには、クリームチーズを角切りにして皮で巻く例もあります。
ラマダンの夜に
レバノンの菓子店では、ラマダンの断食明けに食べる甘味としても見かけます。家庭で揚げた祖母の菓子を思い出として語る料理人もいます。トリポリの菓子店を訪ねた2015年の食記事には、店で作るアシュタを詰め、温かいまま供された一皿が描かれています。揚げた皮にシロップをまとわせ、上にピスタチオを散らした店の例です。
名前は「婦人の腕」という意味ですが、その命名には複数の話があり、由来を断定することはできません。
同じく薄い生地で具を包むタムリーヤは、セモリナの餡と粉糖を用いるナーブルスの菓子です。包みの中身と仕上げを見比べると、近い技術から異なる味が生まれることが分かります。
用語解説
- フィロ生地
- 小麦粉などから作る、ごく薄く伸ばした生地。
- アシュタ
- レバントで菓子に用いる濃厚な乳のクリーム。家庭では乳をでんぷんなどで炊いて作る例もある。







