伏見の名産とお土産。日本酒、菓子、京野菜と川魚の来歴
伏見で土産を選ぶとき、日本酒と酒粕を使う菓子は、今も続く酒造業と関わる品です。練羊羹を固める寒天も、かつて伏見で製造されていました。品物ごとに、製造工程や材料が土地と結び付く経緯を紹介します。
「伏見とうがらし」のように、地名が付いていても現在の産地が広がっているものもあります。また、南の巨椋池は漁業の場でしたが、干拓によって農地に変わりました。今も続く製造、産地が広がった食品、かつての生業を分けると、伏見の食の歴史を具体的にたどれます。
日本酒は、発泡・にごり・保存方法まで見て選ぶ
伏見の酒は銘柄の数だけでなく、製法や商品の性質にも違いがあります。例えば月の桂には瓶内二次発酵で泡が生まれるにごり酒があります。「伏見の日本酒」という産地名だけでは、透明かにごっているか、泡があるか、どの温度で保存するかまでは決まりません。[23]
酒を飲む相手への贈り物なら、普段選ぶ酒、食事と合わせるか、冷蔵できるかを考えると候補を絞れます。大手筋の吟醸酒房油長には三種類をお猪口で試して購入できるカウンターがあり、伏見夢百衆でも複数の蔵の酒を販売しています。少量ずつ比べる方法は、銘柄名だけで判断しにくいときに役立ちます。[21・7]
精米歩合や発泡の仕組みを知りたい方には、伏見の日本酒の造り方で、ラベルの言葉と製造工程の関係を説明しています。
清酒を使う酒まんじゅうと、酒粕を使うフィナンシェ
日本酒のもろみを搾ると、液体の酒と固形分の酒粕に分かれます。酒と酒粕は同じ工程から生まれますが、菓子に使う材料としては別です。伏見夢百衆では、伏見の清酒を使う酒まんじゅうや、酒粕フィナンシェを扱っています。[7・29]
日本酒そのものを贈るほか、清酒や酒粕を材料にした菓子を選ぶ方法もあります。ただし「焼き菓子だからアルコールはない」「酒まんじゅうはすべて同じ製法」とは判断できません。配合や製法は商品ごとに異なるため、アルコールを避ける人への贈り物では個別の表示や店の案内が必要です。
練羊羹は、伏見で寒天が作られた歴史とも関わる
寒天は海藻から作る凝固材料で、餡を固める練羊羹に使われます。伏見には江戸時代に寒天を製造した記録があり、大正時代にかけて練羊羹が名物となりました。寒天の発祥を語る伝承と、個々の菓子店の創業の歴史は同じ話ではありません。[13]
現在、下油掛町で煉羊羹を扱う伏見駿河屋本店は、京都市の企業紹介に天明元年創業と記載されています。寒天の製造は丹波や信州にも広がり、現在の伏見では行われていません。伏見の菓子店で作られる練羊羹も、寒天そのものの産地は別に確かめる必要があります。[13・27]
ところてんを凍らせて乾燥させる製法や、丹波・信州へ生産が広がった経緯は、寒天と伏見の関係で解説しています。
伏見とうがらしは、実だけでなく葉も食べる
伏見とうがらしは「伏見甘長」とも呼ばれる細長い甘とうがらしです。万願寺とうがらしに比べて細く、長さはおよそ10〜15センチ。一般的には辛みが少なく、現在は京都府内の各地で栽培されています。品種名に「伏見」とあっても、店頭の品が伏見桃山で採れたとは限りません。[6]
農林水産省の郷土料理紹介には、若い葉を使う「きごしょう」が載っています。小さな実とともに佃煮にしたり、葉をゆでて醤油や酒で炒め煮にしたりする料理です。伏見とうがらしの葉がよく使われますが、他のとうがらしを使う場合もあります。[6]
同省は1684年の『雍州府志』に山城国でのとうがらし栽培の記録があると紹介しています。この記録が示す範囲は山城国で、伏見の特定の畑や現在の品種までが分かる記述ではありません。生鮮品を買う際は、品種名と産地表示の両方を確かめられます。[6]
かつての巨椋池では川魚が獲れ、干拓後は農地になった
伏見の南に広がっていた巨椋池は、京都盆地から流れ出る川の水が集まる浅い池でした。京都府の地形解説には、コイ、フナ、モロコなどの魚が生息したと記されています。海の魚を運んで食べるだけでなく、身近な池や川から食料を得る営みがありました。[56]
その環境は、河川工事と干拓で変わります。宇治川と切り離された後に池の水質が悪化し、1933〜1941年には国営の干拓工事が行われました。農林水産省は、漁業が営まれた池から634ヘクタールの農地が造られたと説明しています。魚を獲る水面が、作物を育てる土地へ変わったのです。[55・56]
現在の納屋町商店街には、活川魚や川魚加工品を扱う店があります。ただし、今売られている魚の仕入先が旧巨椋池の漁業と直結するわけではありません。過去の漁業は地域の食の歴史、現在の魚の種類・産地・加工方法は商品ごとに確かめる情報です。買い物案内では現在の店舗を、水と治水の記事では池と川が変わった経緯を紹介しています。[42]
古写真の大亀谷大根は、当時の農業を伝える資料

昭和4年頃の深草大亀谷東久宝寺町の写真には、大根の収穫と背後の茶畑が写っています。もう一枚は大亀谷大根の品評会です。丘陵側で大根や茶が栽培され、収穫した作物を評価する品評会も開かれていたことを伝えています。南の池と干拓地とは、地形も生産の条件も異なる農業の記録です。

深草大亀谷は、大手筋や南浜町の酒蔵街とは別の地域です。二枚は当時の収穫と品評会の記録で、現在の販売品を紹介する写真ではありません。今買える日本酒や菓子を探すには、大手筋・納屋町・竜馬通りと周辺の店舗案内をご覧ください。
参考資料
- 月の桂・にごり酒
- 吟醸酒房油長・公式
- 伏見観光協会・伏見夢百衆
- 農林水産省・おいしい日本酒は、おいしいお米から
- 京都観光Navi・寒天発祥之地
- 京都市・企業紹介 伏見駿河屋
- 農林水産省・きごしょう
- 京都府レッドデータブック2015 巨椋池
- 豊かな暮らしを支える巨椋池干拓地
- 納屋町商店街振興組合・店舗一覧
アイキャッチ図版:パレード伏見洋菓子店。



