Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

アレグリア
Alegría
小さなアマランサスの粒を、蜜でまとめるメキシコの菓子
砂糖菓子 / メキシコ・サンティアゴ・トゥリエワルコ

アレグリア(Alegría)は、加熱して膨らませたアマランサスの種子を、蜂蜜や糖でまとめるメキシコの菓子です。白っぽい小粒が集まった四角いバーのほか、丸形など、さまざまな形があります。ナッツ、種子、干し果実を合わせたものもあり、軽い粒の歯触りと、粒同士をつなぐ甘い部分を一緒に味わいます。
アレグリアというスペイン語には「喜び」の意味があります。この名は菓子だけでなく、アマランサスという作物にも使われます。種を育てることと、収穫した種を菓子へ変えることの両方が、1つの名に結びついています。

膨らませたアマランサスの粒をまとめたアレグリア。表面にはナッツや干し果実を配した例が見える。 写真:AlejandroLinaresGarcia / CC BY-SA 3.0 / 原図、改変なし。
種を膨らませ、蜜でつなぐ
アレグリアの細かな粒は、粉を小さく丸めたものではありません。種を熱して膨化させたものです。膨化した粒に蜜や糖液を合わせ、まとまるように成形します。粉を練って連続した生地にする菓子と違い、できあがっても粒の集まりが見えます。
蜂蜜を使うものも、ピロンシージョという褐色の糖を使うものもあります。甘い材料は味つけであると同時に、小粒を1つの形にする役割を担います。表面へクルミやレーズンを並べれば、粒の細かい部分と大きな具の違いも生まれます。アマランサスを含むすべての菓子がアレグリアというわけではなく、膨らませた粒をまとめるこの構造が、アレグリアの代表的な姿です。
アマランサスはイネや小麦とは別の植物です。穀粒と同じように調理されますが、植物分類ではイネ科の穀物ではありません。アレグリアづくりでは、熱で小さな種子が膨らみ、白く軽い粒になる変化を利用します。
トゥリエワルコで続く、作物と菓子のつながり

メキシコ、モレロス州テモアクのアミルシンゴで育つアマランサス。2015年9月10日撮影。トゥリエワルコとは別の産地の畑。
写真:Turismo.temoac/CC BY-SA 4.0/原図。配信元の表示用縮小画像、追加加工なし。
メキシコシティ南部のサンティアゴ・トゥリエワルコは、アマランサスの栽培とアレグリアづくりで知られます。畑の作物と市場の菓子は別々の産業ではなく、地域の家族や職人の仕事を通じて結びついてきました。
種子保存団体Native Seeds/SEARCHが持つ1979年採集の記録にも、トゥリエワルコのナワ系の市場から得たアマランサスが載っています。その種子は淡い色の実をつけ、膨らませた種と蜂蜜の菓子に用いられるものとして登録されています。種子を選び育てる仕事が、蜂蜜と合わせる菓子の食感にもつながります。
この土地の栽培では、運河の泥を使った苗床を小さな区画に分けるチャピンという方法が伝わります。そこで苗を育ててから畑へ移す方法のほか、直接畑へまく作り手もいます。収穫した種を乾燥させ、ふるいで植物の残りや土を除いた後、菓子づくりへ進みます。
膨化にも、土製のコマルを火にかけて少量ずつ加熱する方法と、専用の機械を使う方法があります。家族の工房では、作業量や設備の規模に応じて加熱の方法が選ばれています。アレグリアは板状だけでなく、死者の日のための頭蓋骨や、ハート、花の形にも成形されます。
神像をかたどった古代の儀礼食
アマランサスは、スペイン人の到来以前からメキシコで利用されてきた作物です。古い儀礼では、ワウトリと呼ぶアマランサスを加工して甘い結着材料と合わせ、神像などの形にしたツォアリが用いられました。人々で分けて食べる儀礼の食べ物であったことも、現代の土産菓子だけを見ていると分かりにくい歴史の一面です。
古代の儀礼食から、蜂蜜やサトウキビ糖で粒を固める今日のアレグリアへ、材料の利用は変わってきました。現在の1枚と古代の神像を、そのまま同じ配合で結ぶことはできません。
熱いコマルの上で種が跳ねることを「喜んで踊る姿」に重ね、「喜び」を意味するアレグリアの名の由来とする土地の伝承もあります。
用語解説
- アマランサス
- 食用の小さな種子を採る植物。この記事では膨化した種子を菓子へ用います。
- ピロンシージョ
- メキシコで使われる褐色のサトウキビ糖。
- ワウトリ
- アマランサスに関わるナワトル語の呼び名。
- ツォアリ
- スペイン人到来以前の儀礼などで用いられた、種子と甘い材料を合わせた練り物。
- チャピン
- 運河の泥などで作る苗床を小区画に分け、苗を育てる方法。
- コマル
- 生地や種子などを加熱する平たい調理具。







