Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

カンサール
Kansar
小麦をどこまで挽くか
デザート / インド・グジャラート

カンサール(Kansar/કંસાર)は、粗く挽いた小麦を加熱し、ギーと糖で仕上げるグジャラートの甘味です。細かな粒が集まった姿で、切り分けずに器へ盛って食べます。婚礼や家族の祝いに用意される、小麦の菓子の1つです。
小麦をどこまで挽くか
粉には、薄いパンを作る細かな粉よりも、粗い挽き方のものが選ばれます。油脂をなじませた粉へ水を加え、蒸したり、鍋の中で火を通したりして、ほぐせる状態へ仕上げます。加熱した生地を細かく崩し、食べる時に溶かしたギーと粉砂糖を合わせる作り方もあります。
たとえば、ジャガリーを水に溶かして煮立て、ギーをなじませた粗い粉を加えて火を通す方法があります。仕上げにギーや粉砂糖を添えることもあり、糖を加える段階によって甘味の入り方が変わります。滑らかな塊にするのではなく、加熱した小麦をほぐして食べるため、粗い粉を使います。

器に入ったギー。撮影:Neha Sonal、2015年、撮影地不明。原画像を使用(出典・CC BY-SA 4.0)。
東アフリカに暮らすグジャラート系の家庭には、粗い小麦粉の代わりにセモリナを使い、蒸してほぐす作り方もあります。ギーと砂糖を別添えにして、食べる人が好みで加える例もあります。

ラプシという名との重なり
カンサールにはラプシ、ラプシーという呼称が重なる地域があります。一方、小麦の粒を砕いたファーダを使うものは、ファーダ・ラプシと呼び分けられます。粗い粉と、形の残る砕いた粒は、同じものではありません。どちらも小麦、ギー、糖を使っていても、口に残る粒の大きさやまとまりが異なります。

砕いた小麦の粒。撮影:Sanjay Acharya、2006年、撮影地不明。原画像を使用(出典・CC BY-SA 3.0)。
サウラーシュトラで親しまれる粉のラプシと、砕いた粒のファーダ・ラプシの違いは、家庭の記憶にも残る区別です。ただし名称の使い方は一様ではなく、カンサールという名だけで、粉の粗さや加熱法を1通りに決めることはできません。
女神に供えるカンサール
ラージコートのジーヴァンティカー・アーディヤ・スターンは、子どもの健やかな暮らしを祈る女神ジーヴァンティカーの礼拝で、砂糖を使ったカンサールやラプシを供えるよう案内しています。シュラーヴァナ月の金曜日に祈り、供えたカンサールを女神の姿の前でいただくという、この団体の伝える作法です。婚礼だけでなく、家族の祈りにも甘い小麦が登場します。
婚礼で交わすひと口
グジャラート系の家庭の婚礼の一例では、花嫁の母が皿に盛ったカンサールを運び、新郎新婦が互いに食べさせ合う習慣があります。結婚した二人がともに取る最初の食事として、二人の結び付きを祝う場面です。日常の主食でもある小麦にギーと甘味を重ね、祝いの食事として供します。
家庭では、温かなカンサールに砂糖を振り、手で丸めて子どもに渡したという記憶も伝えられています。皿に盛るほか、手で形を作って分けることもある甘味です。
用語解説
- ギー
- バターなどから水分や乳の固形分を除いて得る乳脂肪。
- ファーダ
- グジャラート語で、ここでは砕いた小麦の粒を指します。
- ファーダ・ラプシ
- 砕いた小麦を甘く調理するラプシ。粉を使うカンサールと区別する呼称。
- ジャガリー
- サトウキビやヤシ類の樹液を煮詰めた糖の総称。
- セモリナ
- デュラム小麦を粗く挽いた粒状の粉。
- ジーヴァンティカー
- 子どもの健やかな暮らしを祈る礼拝に登場する女神。







