Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

オマーンのハルワ
Omani Halwa
器ごと贈る菓子
砂糖菓子 / オマーン・ニズワなど

オマーンのハルワ(Omani Halwa、حلوى عمانية)は、砂糖、でんぷん、ギーを水とともに練り上げ、バラ水、カルダモン、サフラン、ナッツなどを加える菓子である。器に入った表面には艶があり、すくうと密で粘りのある中身が現れる。ごまを挽いた崩れるハルヴァに比べ、こちらはでんぷんが作る密な粘りを持つ。
オマーンでは、客を迎えるコーヒーの席に欠かせない菓子の1つである。少量ずつ飲む香りの強いコーヒー、カフワに、デーツやハルワを添える。濃い甘さと油脂を持つハルワが、苦味のある飲み物と一緒に供されるところに、この菓子の食べられ方がよく表れている。
器ごと贈る菓子
ハルワは、粒菓子を袋に入れるのではなく、器に収めた形で供され、贈られる。陶器、木製、樹脂製などの容器が使われ、特別な席に向けた器もある。器は単なる輸送のための箱ではなく、粘りのある菓子をそのまま食卓へ出す形でもある。
断食明けの祭りイード・アルフィトルには、客へ供したり、親戚や友人への贈り物にしたりする需要が高まる。家族が配合や技術を受け継いで店で製造する仕事と、家庭で客を迎える習慣とがつながっている。一方、同じ「ハルワ」の名は広い地域の異なる菓子に使われる。この名の古さだけで、オマーンのでんぷんを練るハルワの成立年は決められない。
旅の記録に残る商いと祝い
オマーン史研究者が紹介する19世紀の旅行記には、ハルワを浅い陶器に詰めてインドやイランへ送る商いが記される。19世紀後半にオマーンで活動した官吏の記録には、ニズワの品とマスカットの品で味が違うともある。現在の黒や淡色の区分を、そのまま当時の2つの町へ割り当てることはできない。1937年のマスカットの婚礼を記した旅行者は、婚姻の儀の後にハルワとコーヒーが供された場を残している。贈答と客迎えの歴史は追える一方、これらの記録だけでは今のでんぷんを練る配合がいつ定まったかは分からない。
でんぷんが作る粘り
ハルワの土台は、糖を溶かした液体にでんぷんを加え、熱を入れて混ぜ続ける工程にある。でんぷんが水と熱を受けて膨らみ、液体全体に粘りが出る。そこへギーを加えて練り、密度のある、ゼリーに似た状態へ仕上げる。粉を焼いてほろほろにする菓子とも、冷やしたゼラチンで固める菓子とも異なる。
製造に用いる油脂のギーは、バターの水分や乳固形分を除いて得る。香りを添えるだけでなく、でんぷんと糖を練る菓子の中に組み込まれる材料である。ナッツも、完成後の表面の飾りだけでなく、中へ混ぜ込むことがある。アーモンド、クルミなどの粒が、均一な粘りのある生地の中で別の食感を作る。
職人の大鍋での練り上げと、小さな鍋を使う家庭向けのルセット(材料の配合と作り方)は、量も加熱条件も違う。製造者は配合や煮詰めの判断を持ち、同じ材料名でも、油脂量や糖の種類によって製品は変わる。単に材料を混ぜて冷ませば、どの品も同じ粘りになるわけではない。
色の違いと、土地の香り
オマーンのハルワには、淡い色から褐色まで幅がある。「黒いハルワ」と呼ばれるものも、実際には薄い茶色から濃い茶色の範囲である。デーツを使うもの、乳香で香りを付けるものなども売られており、砂糖と香料の選び方で色も風味も変わる。濃い色を見ただけで、特定の1種類の材料を断定することはできない。
オマーンではバラ水の産地、ジャバル・アフダルの香りも菓子に使われる。山では春に家族でバラを摘み、花を蒸留してバラ水にする仕事が続く。作られたバラ水は、ハルワだけでなく客に出すコーヒーにも使われる。サフランとカルダモンに花の香りを合わせ、油脂と糖の強い味に香りの層を加える。現代の製造者アル・ハンジャルは、オマーンの赤砂糖、でんぷん、バラ水、牛乳由来のギーなどを選び、銅鍋で製造することを自社の特徴としている。これは、1つの工房が材料と器具をどう選ぶかを示す例であり、すべてのハルワに同じ条件を要求する規格ではない。

マスカットのスーク・ムトラで撮影されたオマーンのハルワ。器に収めた褐色の菓子の中と表面に、ナッツが見える。 写真:Riyadh Al Balushi/CC BY 2.0、原作者の公開頁。配信サイズを除き無加工。
用語解説
- ギー
- バターから水分と乳固形分を除いた油脂。
- カフワ
- アラビアのコーヒー。オマーンではカルダモンなどの香りを付け、デーツやハルワと供する。
- ジャバル・アフダル
- オマーン北部の山地。バラ水の産地としても知られる。
- 乳香
- ボスウェリア属の樹木から採る樹脂。ハルワの香り付けに使う製品もある。
- イード・アルフィトル
- ラマダーンの断食期間を終えた後の祭り。







