Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

パン・デ・ララ
Pão de rala
パン・デ・ララの材料と製法
砂糖菓子 / ポルトガル、エヴォラ

パン・デ・ララ(Pão de rala)は、ポルトガルのアレンテージョ地方、エヴォラに伝わる菓子です。粉をまとった丸い姿は、食卓に置く素朴なパンのようです。外側はアーモンドと卵黄、砂糖を煮て作った生地で、切ると卵の甘い糸やかぼちゃのジャムが現れます。

パンの形をしたアーモンド生地
外側の生地はエスペシエと呼ばれます。砂糖のシロップに挽いたアーモンドを合わせ、卵黄とレモンの皮を加えて練り、ひびが入らないよう丸く延ばします。生地の中央へフィオス・デ・オヴォスと、ジラのジャムを混ぜたオヴォス・モレスを重ね、周囲の生地を引き上げて包みます。
フィオス・デ・オヴォスは卵黄を細く流し、砂糖のシロップの中で固めた糸状の菓子です。オヴォス・モレスは卵黄と砂糖を煮た柔らかいクリームです。ジラのジャムには、繊維のあるかぼちゃの果肉が使われます。どれも甘い具ですが、細い糸と柔らかなクリーム、果肉の繊維が、外側のアーモンド生地とそれぞれ違う口当たりを作ります。


外皮と具を別々に用意して組み立てます。ポルトガルの料理資料に載る一例では、卵黄の糸、オヴォス・モレス、ジラを重ね、周囲の生地で包んだ後、粉を振った天板にのせて焼きます。粉は生地を扱い、天板に移す助けになります。別の作り方では、外側にチョコレートを加え、とうもろこしのパンに似た色に仕上げます。
甘いオリーブを添えて
パンだけでなく、添え物も見立てです。祝いの席には、同じアーモンド生地で作る甘いオリーブやソーセージを並べることがあります。ポルトガルの伝統食品資料では、パン・デ・ララに、甘いオリーブを入れた器、甘いソーセージ、ケイジーニョ・ド・セウという菓子を添えた取り合わせを「メレンダ」と呼んでいます。パンや塩味の食べ物を思わせる姿ですが、口にすると卵とアーモンドの甘味が広がります。
伝えられる話と、残された資料
国王セバスティアンが修道院を訪れたとき、修道女たちは「粗いパンとオリーブ、水しかない」と言いながら、この菓子を差し出した――そんな由来話が伝わります。土地の菓子の意外な姿を説明する物語として親しまれていますが、王の訪問が菓子の誕生を証明するものではありません。
サンタ・クララ修道院の1729年のレシピ集とされてきた写本には、パン・デ・ララの名があり、別の修道院から作り方を譲られたと記されています。ただし、この写本の成立と内容の真実性には近年の研究で疑問が提起されています。修道院間の伝達や菓子の起源を確かな史実とするには、さらなる検証が必要です。
エヴォラ市は2026年、菓子の名前と土地とのつながりを伝えるため、「パン・デ・ララ・エヴォラ」の図柄を登録したと発表しました。地域の食文化団体とともに菓子の認証を進める構想も示しています。
用語解説
- エスペシエ
- パン・デ・ララの外側を作る、アーモンドと砂糖、卵黄などの生地。
- フィオス・デ・オヴォス
- 卵黄を細く流して砂糖のシロップで煮た、糸状の菓子。
- オヴォス・モレス
- 卵黄と砂糖で作る、柔らかなクリーム状の菓子。
- ジラ
- 繊維のある果肉を持つかぼちゃの仲間。砂糖煮を菓子の詰め物に使う。
- メレンダ
- 間食や軽食を意味する語。ここではパン・デ・ララと甘い添え物などの取り合わせを指す。
- セバスティアン
- 16世紀のポルトガル王。菓子の由来の話に登場する。







