Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

ペータ
Petha
果肉の形を残して、糖を入れる
砂糖菓子 / インド・ウッタル・プラデーシュ州アーグラ

ペータ(Petha/पेठा)は、冬瓜の白い果肉へ糖を含ませた、アーグラで知られる菓子です。半透明の切り身は、表面に乾いた砂糖の感触があり、内側には蜜と果肉の歯切れが残ります。丸い粒や大きな切り身、しっとりしたものや乾いたものなど、形と水分に幅があります。

アーグラのペータ(2015年、Rsrikanth05/Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0)。Off-shellによるトリミング・明暗調整版を配信元で縮小、取得後の内容変更なし。
果肉の形を残して、糖を入れる
原料は大きな冬瓜です。皮と種を除き、用途に合わせて切り、果肉へ穴を開ける工程があります。穴は、その後の加熱と糖液のしみ込みを助けます。ごく薄く切った品では、厚い切り身と同じ穴開けをしないこともあります。


果肉は、現地でチューナーと呼ぶ石灰を用いた液へ浸すなどして硬さを整え、その後によく洗い、下ゆでしてから糖液で煮ます。冬瓜を柔らかく煮崩す料理とは違い、糖を含んでも形が残るよう、前処理を組み込んでいます。石灰に含まれるカルシウムは果肉の組織を締め、煮る間も形を保ちやすくします。浸した後は、余分な石灰を流水で十分に洗い落とします。
糖液を吸った果肉には、生の白い冬瓜とは違う透明感が生まれます。粉やゼラチンで透明な菓子を固める方法ではなく、もとからある果肉の組織を残していることが、ペータの食感の土台です。
乾いたペータ、蜜を残すペータ
糖で煮た後に液を切り、盆へ広げて冷ますものは、乾いたペータとして仕上がります。一方、小粒のアングーリー・ペータなどには、しっとりした状態を保つものがあります。途中まで同じ工程でも、最後に糖液を切る程度や包装の仕方で、食べ心地が変わります。
サフラン入りのケーサル・ペータ、バラやココナッツの風味を添えるものなども作られます。切り身の端を細い糸状へ加工するラッチャーという仕上げもあり、大きな果実を切り分ける仕事から複数の商品が生まれます。
タージ・マハルの伝説と、街の菓子
ペータには、ムガル皇帝シャー・ジャハーンの宮廷で生まれたという話があります。タージ・マハルの建設に関わる人々へ用意されたとする筋もあり、アーグラと結び付く伝説として語られています。ただし、宮廷料理書の具体的な記録や、現在のペータへつながる製法の連続が確かめられた発明譚ではありません。
今日のペータは、乳を多く使うインドの菓子と並びながら、野菜と糖を中心に作られる街の名物です。果肉を切り、硬さを整え、蜜を含ませ、乾燥の状態を選ぶ仕事によって、同じ冬瓜から異なる姿を作り出しています。
用語解説
- 冬瓜
- 白い果肉と硬い皮を持つウリ科の果実。ペータでは糖を含ませる材料になります。
- チューナー
- 石灰の現地での呼称。ここでは果肉の前処理に用いるものを指します。
- アングーリー・ペータ
- 小さな粒状などに仕上げるペータの一種。
- ラッチャー
- 細い糸や筋のような形を示す呼称。ここでは冬瓜を細く加工したペータを指します。
- シャー・ジャハーン
- 17世紀のムガル皇帝。ペータの宮廷起源の伝説に登場します。







