Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

ロジャータ
Rožata
バラの酒が香る、ドゥブロヴニクのカラメル菓子
デザート / クロアチア・ドゥブロヴニク

皿に返した卵の生地からカラメルが流れ、乳とレモンの奥にバラが香る。ロジャータは、クロアチア南部ドゥブロヴニクに伝わる冷たいデザートです。身近な卵、牛乳、砂糖を湯煎で固める構成に、この土地のバラ酒ロゾリンが重なります。同じ名でも、酒の選び方、加熱する器、型から外す時機には家庭ごとの幅があります。
名に残るバラの酒
ロゾリンは、バラの花びら、砂糖、ブドウ由来の蒸留酒で作るリキュールです。花びらと砂糖を重ねて酒を加え、日なたで浸出させた後、濾して瓶に詰めます。ドゥブロヴニクでは客をもてなす酒や贈り物として用いられ、家庭の菓子にも加えられてきました。
菓子の名は、土地のバラ酒 rozolin と結び付いています。その古さを語る一つの伝承を、料理助言者ヨシプ・ジュヴェラが2017年に紹介しました。1300年に「修道士のプディング」として記録された卵菓子へ、後にカラメルとバラ酒が加わったという話です。乳と卵の一皿に、土地のバラ酒が加わったという、香りの由来を語る伝承です。
乳に香りを移し、卵を静かに混ぜる
材料の中心は、全卵、牛乳、砂糖です。レモンの皮と砂糖を牛乳へ加えて温め、冷ましてから溶いた卵と合わせます。細かいざるを通して卵の筋などを取り除き、型へ流せるなめらかな液に整えます。
卵はスポンジのように泡立てず、静かに混ぜます。表面に泡を多く作ると、焼いた断面にも穴が残りやすくなります。バニラを加える型も、レモンとロゾリンを中心にする型もあり、乳を温める工程が香りを移す時間にもなります。
湯の層で包む三つの加熱法
砂糖を別に溶かしてカラメルを作り、型の底と側面へ回します。その中へ卵液を入れ、周囲に湯を張って穏やかに加熱します。
加熱法には幅があります。ドゥブロヴニクに伝わるルセット(材料の配合と作り方)の一つは、湯煎で約75分加熱し、竹串のような木の棒に液が付かなくなるまで固めるものです。一方、オーブン内に湯を張った天板を置く型もあります。小さな型なら約30分、大きな型なら約1時間と、器の大きさで焼く時間を変えます。
鍋の中へ別の鍋を置き、布と蓋をして、弱火の湯煎で固める家庭の方法もあります。湯を補いながらゆっくり加熱するので、オーブンを使うものとは火の入り方が違います。卵液の周りに水の層を置く点が、これらの方法に共通しています。
冷まして返すか、返して冷やすか
卵液が固まったら冷まし、冷蔵します。型のまま一晩休ませ、翌日に深めの皿をかぶせて返す型では、卵の生地が落ち着いてから形を外します。別の方法では、まだ温かいうちに皿へ返し、その後に数時間冷やして供します。
型の底にあったカラメルは、返すと上面へ移ります。表面へ砂糖を振って直火で硬い殻を作る菓子とは、焦がした砂糖の置き方が異なります。ロジャータでは、柔らかな卵の生地を切り、その周りへ広がった糖液と一緒にすくいます。
卵黄、ラム、レーズンで変わる一皿
ロジャータへ加える量は少なくても、乳と卵の風味の中を花の香りが通ります。ラムを併用する型、バニラとレモンを中心にしてバラ酒を使わない型も作られます。全卵だけを使うものに対し、卵黄を足して濃くする方法もあります。
仕上げはカラメルとミントだけの簡素なものから、生クリーム、オレンジの砂糖漬け、アーモンドを添えるものまであります。ラムに浸したレーズンを、卵液が半ば固まったところで加え、中に留める型もあります。大きく作って切り分ける家庭の器と、一人分の小さな型は、どちらもこの菓子の姿です。
ダルマチアの家庭と飲食店へ広がるロジャータは、ドゥブロヴニクの食事も締めくくります。焼いた器の中で作ったカラメルの面を皿へ返すと、花や柑橘、酒の香りを含んだ冷たい一皿になります。
用語解説
- ドゥブロヴニク
- クロアチア南部、アドリア海に面する都市。
- ダルマチア
- クロアチアのアドリア海沿岸に広がる地域。
- ロゾリン
- バラの花びらを酒と砂糖に浸出させるリキュール。ロザリン、ロズリンなどとも表記される。
- ヨシプ・ジュヴェラ
- ドゥブロヴニクの菓子を語る料理助言者。2017年に、中世の「修道士のプディング」へカラメルとバラ酒が加わったという伝承を語った。
- カラメル
- 砂糖を熱して褐色と香ばしさを生じさせたもの。この菓子では型の内側へ流す。
- 湯煎
- 器を湯に置き、水を介して穏やかに加熱する方法。







