Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

ショムローイ・ガルシュカ
Somlói galuska
三つのスポンジをすくう、ハンガリーの皿菓子
デザート / ハンガリー

三種類のスポンジを重ねた一台を、切りそろえずにすくいます。ショムローイ・ガルシュカは、ハンガリーの、崩した形の中に層を見せるデザートです。バニラ、クルミ、ココアの生地へ糖液とクリームを含ませ、ラムのレーズンやクルミを散らし、最後にチョコレートソースと生クリームを添えます。小さな団子を思わせる盛り方と、多くの風味をなじませる一晩の待ち時間が、この菓子の要です。
主任給仕と菓子職人が作った万博の一皿
ブダペストのレストラン、グンデルは、一九五〇年代末にこの菓子が生まれたと伝えています。主任給仕カーロイ・ゴレリチの発案を、菓子職人ヨージェフ・ベーラ・セーチが配合へまとめ、一九五八年のブリュッセル万国博覧会で紹介されました。レストランの接客と製菓が出会って生まれた皿菓子です。
丘の名から消えた一字
名は職人が暮らしたフォート近くのショムリョーの丘 Somlyó に由来すると、グンデルは説明します。現在の菓子名 somlói には、その地名の y がありません。似た綴りのショムロー Somló は別の丘とワイン産地です。
消えた一字には、一九五八年のブリュッセル万国博覧会で書き間違えられ、そのまま広まったという話が伝わります。報道陣の誤記、審査員の書き落とし、会場の献立の誤植と、語られる場面は一様ではありません。ショムリョーの丘を離れた名に、万博での紹介を巡る逸話が結び付いています。
三色の生地を別々に焼く
基本の三つのスポンジは、色も風味も異なります。バニラは卵の淡い色、クルミは実の香ばしさ、ココアは濃い褐色を受け持ちます。大きく焼いた生地へ、香りをつけた糖液を含ませ、バニラのクリームを挟んで重ねます。乾いたスポンジを、そのまま一口ずつ食べる菓子ではありません。
糖液とクリームを含むことで、別々の生地がなじみます。クルミの粒やラムに浸したレーズンも加わり、柔らかな生地の間に、噛める小さな具が散ります。材料をすべて一色のクリームへ混ぜ切らないため、すくう場所によって、色と香りの配分が少しずつ変わります。
重ねて一晩待つ、すくって盛る
ハンガリー観光局の紹介する型では、糖液にラム、バニラ、オレンジとレモンの皮を煮立てて香りを移します。三枚を重ね、最後の生地にはアプリコットのジャムとココアを載せ、一晩冷やします。仕上げのクリームやソースだけで味を足すのではなく、重ねた内部へ、糖液とクリームがなじむ時間を取ります。
供する前に、落ち着いた一台をスプーンなどで小さな塊に取り分けます。ガルシュカは、団子や小さな塊を連想させる語です。茹でた粉の団子に代わり、糖液を含んだ三色のスポンジとクリームが、柔らかな塊を作ります。
最後にチョコレートソースを流し、泡立てた生クリームを添えます。温度や濃さの違う乳の部分と、ココア、クルミ、果実が一つのスプーンへ集まります。上から見える白と黒の下には、三種のスポンジがあり、食べ進めるほど内部の構成が現れます。
三種のクリームへ組み替える家庭型
ハンガリーの料理媒体Street Kitchenの公開ルセット(材料の配合と作り方)には、三種類の生地を焼く代わりに、市販のビスキュイを使う型があります。その場合はクリームを三つへ分け、バニラ、ココア、くるみの味を持たせます。ラムを合わせた紅茶へ生地を浸し、果実とともに重ね、半日冷やして仕上げます。
三色の生地に分けていた風味を三種のクリームへ移し、ラムを糖液から紅茶へ移した簡略型です。焼く仕事を省いても、複数の風味を層の中で合わせ、冷やしてなじませる仕事は残ります。
グンデルの現在の一皿にも、三種の生地、クルミ、クリーム、チョコレートが重なります。生地へ含ませる香りと、最後にかけるソースを分けることが、柔らかな一口の中に風味の奥行きを作ります。
用語解説
- グンデル
- ブダペストの歴史あるレストラン。
- ガルシュカ
- ハンガリー語で小さな団子状のものなどを指す語。
- フォート
- ブダペスト北東郊外の町。
- カーロイ・ゴレリチ
- グンデルの主任給仕。ショムローイ・ガルシュカの発案に関わった人物。
- ヨージェフ・ベーラ・セーチ
- グンデルの菓子職人。発案を菓子の配合へまとめた人物。
- ビスキュイ
- 卵の泡を使う焼き菓子の呼称。フィンガー状に焼く市販のスポンジ菓子もある。
- ショムリョー/ショムロー
- 前者は菓子職人の暮らしたフォート近くの丘 Somlyó、後者は別の丘とワイン産地 Somló。菓子名の一字が異なる。







