Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

チャクリー
Thiakry
雑穀の小さな粒と、冷たい発酵乳
デザート / セネガルなど西アフリカ

白い発酵乳の中に、細かな穀物の粒が残ります。チャクリーは、セネガルなど西アフリカで親しまれる冷たい甘味です。甘くした乳の滑らかさへ、蒸したミレットの粒の感触を重ねます。マリなどではデゲとも呼ばれ、名も材料も一つの国の中には収まりません。
穀粒を煮るのでなく、粉から粒を作る
材料の粒は、ミレットの粉を粒状にまとめたものです。穀粒をそのまま煮る方法とは違い、チャクリーの名は完成した菓子だけでなく、この穀物の粒にも使われます。
ミレットのクスクスを蒸し、熱いうちに少量のバターを混ぜ、よくほぐします。粉の粒を一つの塊へ固めず、乳の中へ散らせる状態に整える仕事です。粉を乳へ溶いて均一な粥にするのではなく、粒の輪郭を残す仕事が、乳をすくうたびの口当たりを作ります。
甘さを加えても、発酵乳の酸味は残る
乳の部分は、発酵乳やヨーグルトへ砂糖を加えるのが基本です。フロマージュ・ブランまたはヨーグルトに、無糖練乳とクリームを重ね、バニラ、ナツメグ、オレンジ花水で香りを添える型もあります。粒と乳の混合物を器へ入れ、冷やします。
自家製ヨーグルトから仕込むルセット(材料の配合と作り方)では、粉乳も加えた乳を温め、冷ましてヨーグルトを混ぜ、保温して発酵させます。市販の乳製品を組み合わせるか、乳から作るかでも準備は違います。レーズンや果物を添えれば、細かな粒とは別の大きさの果肉と甘味が加わります。
午後のおやつと、日没後の食卓
セネガルでは午後の間食や食後の甘味として、またラマダンの日没後、断食を解く食卓の一品として食べられます。冷やした乳と蒸した粒は、食べる直前に火を使わず合わせられます。断食の月に限る菓子ではなく、日常と宗教行事の両方に場所があります。
入手できる穀物や乳と家庭の好みが、粒の材料、乳の濃さ、香りの違いを生みます。甘いヨーグルトへシナモンやバニラを添える型も、セネガルで客人を迎える食卓に並びます。
隣国にも、同じ甘味を支える流通があります。マリでもチャクリー/デゲは、ミレットと発酵乳やヨーグルトを合わせる甘味として人気があり、その粒は西アフリカで国境を越えて取引されます。菓子の広がりには、食べ方だけでなく材料の移動も重なっています。
別の地元作物を、同じ構成へ取り込む
ミレット以外の作物を使う例もあります。2021年4月の地元産作物を食べる催しでは、セネガル農業研究所の研究者と調理の担い手が、フォニオのチャクリーと、ササゲのチャクリーを供しました。粒と乳を組む構成へ、新しい作物を取り込む試みです。
商品化すると、穀物を継続して調達する仕事も大きくなります。マメル・ジャブート社は2003年、穀物入りヨーグルトとしてチャクリーの製造を始めました。乳に加え、品質のそろったミレットを仕入れ続けることが課題になり、農家との連携が重要になりました。乳を加工する都市の工場と、ミレットを育てる農家が、一つの商品を通じて結ばれました。
ニューヨークの料理店テランガにも、この一皿は届いています。2019年の取材で紹介された料理人ピエール・ティアムの型は、ミレットとヨーグルトに砂糖煮のハイビスカスを添えるものです。冷たい乳と粒を一緒にすくう骨格は、仕上げと食べる場所が変わっても残っています。
用語解説
- ミレット
- トウジンビエなどの小粒の雑穀類を指す呼び名。
- クスクス
- 穀物の粉を小さな粒にまとめたもの。ミレットを材料にする型もある。
- フロマージュ・ブラン
- 熟成させない、白く柔らかなフレッシュチーズ。
- 無糖練乳
- 乳の水分を減らして濃縮したもの。加糖練乳とは異なる。
- オレンジ花水
- オレンジの花の香りを移した水。
- フォニオ
- 西アフリカで栽培される小粒のイネ科穀物。
- ササゲ
- 豆類の一種。チャクリーの材料として研究機関の催しでも使われた。
- ピエール・ティアム
- セネガル出身の料理人。ニューヨークのテランガを開いた。
- マメル・ジャブート
- セネガルで乳製品や穀物を加工する企業。







