Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

トゥトゥ・クエ
Tutu Kueh
花形の型で蒸す、シンガポールの米粉菓子
デザート / シンガポール

トゥトゥ・クエ(Tutu Kueh、Kueh Tutu、嘟嘟糕)は、米粉を小さな花形の型へ詰め、ココナッツやピーナッツの餡を包んで蒸すシンガポールの菓子だ。白い表面に型の輪郭が現れ、中を割ると甘い餡が見える。練った餅のように生地を長く伸ばすのではなく、細かな米粉を型へ納め、蒸気でまとめて作る。
型に粉、餡、粉を重ねる

シンガポールでトゥトゥ・クエを小さな型へ詰める作業。粉と餡を別々に扱う様子が見える。
写真・図版:Chensiyuan/CC BY-SA 3.0/原図。Wikimedia Commons生成の450px縮小版を取得。追加のトリミング・色加工なし。原寸は共有環境の429を踏まえ未取得。
トゥトゥ・クエは、まず型へ米粉を入れ、中央へ餡を置き、その上をさらに米粉で覆って作る。餡が外へ露出しないよう、粉が上下と周囲を包む。型は輪郭を整えるだけでなく、小さな1個の中へ粉と餡を一定の順番で収める道具だ。
餡には、細かくしたピーナッツや、甘みをつけたココナッツが使われる。グラ・ムラカ(gula melaka)と呼ぶヤシ糖を組み合わせる例もあり、米粉の淡い味へ、木の実やココナッツの風味と糖の甘さが加わる。使う餡によって、切り口の色や甘みも変わる。
粉の細かさと、蒸すための布
米粉は、きめの細かなものを型へ詰めて使う。生産者の一例では、細かな米粉を花形へ納め、蒸して、ふわりと崩れる食感へ仕上げている。作り手は粉の細かさと詰め方を含めて、蒸した1個がまとまるように整える。
地元の料理制作チームThe Meatmenのルセット(材料の配合と作り方)では、米粉をパンダンの葉と乾煎りし、冷ましてから砂糖と塩を溶かした湯を振りかける。一つの粘る塊へ練り上げず、フォークでほぐしてからふるい、砂のような細かな状態へ揃え、休ませる。この下ごしらえが、型から抜く際の割れを抑える手順として示されている。ふわりとした仕上がりを求める場合には、型へ詰める際に強く圧縮しすぎないようにする。
シンガポール国立博物館には、1960年代にトゥトゥ・クエ作りで使われた小さな布が収蔵されている。約8センチ角の布は、手作りのブリキ型を蒸し器へ置く際、型を覆うためのものだ。粉だけをそのまま蒸し器へ置くのではなく、型と布を一緒に使って1個を扱えるようにしていたことが分かる。
完成した菓子には、香りのあるパンダン(pandan)の葉を添える形式もある。白い米粉の菓子、甘い餡、緑の葉という組み合わせで、小さな1個を渡して食べる屋台の菓子の形になる。
福建の米の菓子が、小さな餡入りへ
トゥトゥ・クエは、福建系の蒸した米の菓子を、シンガポールで作り替えたものと考えられている。もとになったとされるサン・クエ(san kueh)は、餡のない大きな米の菓子だ。シンガポールでは小型の花形になり、ココナッツやピーナッツなどの餡が入るようになった。
1930年代には、福建から移住したタン・ヨンファ(Tan Yong Fa)が街頭で売り、菓子を広めたと伝えられる。2018年の取材で、娘のタン・ビー・ホア(Tan Bee Hua)は、父が1932年にシンガポールへ来たときの登録証、1957年の屋台営業許可証、1964年の手押し車2台の領収書を見せた。家族の話では、父が故郷の餡なしの米菓子を小さくし、ココナッツやピーナッツを詰めた。移住先で菓子を変え、手押し車で売った歩みが、家に残る紙と道具の両方から見える。
1970年代には兄チェオン・チュアンが仕事を引き継いだ。一家は映画館の夜の客やチャイナタウンの人出に合わせて屋台を動かし、1973年には常設のホーカーセンターへ移った。ビー・ホアも学校の休みにパンダンの葉を洗い、ピーナッツを炒り、路上で売る仕事を手伝った。米粉の細かさを整える機械も、1960年代から使い続けたという。小型の餡入り菓子には、家族で材料を用意し、人の集まる場所へ運ぶ屋台の仕事が重なっていた。
「トゥトゥ」という音をめぐる複数の話
名前にはいくつかの説明がある。一つは、粉とココナッツを使う食べ物に関係するタミル語のプトゥ(putu)と結びつけるものだ。もう一つは、炭火で加熱した蒸し器が立てる音に由来するというものだ。さらに、博物館の道具の解説には、売り手が客を呼ぶために鳴らしたラッパの音から来たという説明も残っている。
蒸し器の音と客寄せの音は、似た響きを説明していても、音を出す道具が違う。呼び名の由来は一つに確定していないが、「嘟嘟糕」という中国語の表記にも、繰り返す音がそのまま表れている。
近い菓子と、現在の餡
米粉を型へ詰めて蒸すプトゥ・ピリン(putu piring)は、トゥトゥ・クエとよく似ている。マレー系のプトゥ・ピリンには、ヤシ糖を中心に包み、蒸した菓子へ削ったココナッツを別添えにする形式がある。トゥトゥ・クエはそれより小さく、ココナッツやピーナッツそのものが餡として入るのが特徴だ。
現在のトゥトゥ・クエには、黒ごま、チョコレート、ドリアンなどを入れるものもある。変化するのは主に餡で、花形の小さな白い米粉菓子という姿は、古い屋台の道具と結びついたまま受け継がれている。
用語解説
- グラ・ムラカ(gula melaka)
- ヤシから作る褐色の糖の呼称。
- パンダン(pandan)
- 東南アジアの料理や菓子へ香りを加える葉。
- サン・クエ(san kueh)
- トゥトゥ・クエの系譜として語られる福建の餡なしの米の菓子。
- タン・ヨンファ(Tan Yong Fa)
- 1930年代のシンガポールでトゥトゥ・クエを広めたとされる移民の売り手。
- タン・ビー・ホア(Tan Bee Hua)
- タン・ヨンファの娘。家族の屋台資料と仕事の記憶を伝えた。
- チェオン・チュアン
- タン・ビー・ホアの兄。1970年代に一家のトゥトゥ・クエ作りを引き継いだ。
- プトゥ(putu)
- 粉やココナッツを使う食べ物に関わる語。トゥトゥの語源説の一つに挙げられる。
- プトゥ・ピリン(putu piring)
- 米粉を型へ詰めて蒸す近縁の菓子。
- The Meatmen
- シンガポールの料理制作チーム。本文の米粉の仕込み方を公開した。
- ホーカーセンター
- 屋台を集めたシンガポールの常設の飲食市場。
- ルセット
- 材料の配合と作り方の一式。







