Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

シャルロトカ
Szarlotka
甘酸っぱいりんごを、ほろりとした生地に重ねる
パイ / ポーランド

厚いりんごの層を、ほろりと崩れるバター生地で支える。ポーランドのシャルロトカは、上にも生地を載せたり、粒状のクランブルやメレンゲで覆ったりする果実菓子です。四角く切った一片に甘酸っぱい果実が現れますが、この名がいつも同じ生地を指してきたわけではありません。パンを重ねる古い型も、その歴史に含まれます。
シャルロットの名は、パンからクリームへも広がった
ポーランド語の szarlotka は、西欧の菓子名 charlotte に連なります。十八世紀のパンと果実を焼く温かいシャルロットと、十九世紀のビスキュイでバヴァロワのようなクリームを囲む冷たい charlotte russe は、名を共有しながら構造を変えた菓子です。ポーランドでも十九世紀には果実を替えたシャルロットが作られました。
冷たいシャルロット・リュスは、十九世紀初めの料理人マリー=アントワーヌ・カレームとロシア宮廷を結び付ける由来を持ちます。名をプロイセン王女シャルロットにちなむとする説では、後にロシア皇帝ニコライ一世の妃になる人物へ菓子を捧げたとされます。パンと果実を焼く型、ビスキュイとクリームの冷たい型、バター生地とりんごのポーランドの型。同じ名の系譜は、温度も、果実を囲む材料も変えながら広がっています。カレームの冷菓と今のりんご菓子は、同じ配合ではありません。
全粒粉のパンで果実を囲む
1904年版の『Kuchnia koszerna』には、「りんごと全粒粉のパンのシャルロトカ」があります。おろしたパンを、水または白ワインで少しずつ湿らせ、砂糖とシナモンを合わせ、薄切りりんごと交互に重ねて加熱します。果実にはレモンの皮や少量の酒で香りを添えます。
この型は粉から新しい生地を仕込まず、焼かれたパンを使います。現在のバター生地の一台とは違っても、果実を別の材料で支え、層にして切り分ける構成は共通します。シャルロトカという名には、手元のパンを使う菓子の記憶も残っているのです。
もろい生地へ、りんごの水分を抱え込ませない
現在の土台であるクルヘ・チャストは、もろく崩れる性質の生地です。粉へバターを細かく散らし、砂糖、卵黄や卵でまとめます。サワークリームを加える型もあり、パンのような弾力より、短くほぐれる歯触りを作ります。
りんごには、シャラ・レネタやアントヌフカなど、酸味や煮崩れ方を生かせる品種が使われます。薄切りや角切りにして煮るか、生のままおろすかで、果実の塊の残り方も変わります。糖とシナモンは、りんご自身の甘さと香りに合わせます。
煮る型でも、すべてをピューレにはせず、果実の形を残すことがあります。水分を飛ばし、底を先に焼き、パン粉を薄く散らして余分な水分を受け止めてから、りんごと上の生地を重ねる作り方です。一方、製菓サイトMoje Wypiekiの家庭向けルセット(材料の配合と作り方)には、空焼きしない底へ果実を置き、残りの生地を小片にして散らして一緒に焼く型もあります。果実の層を保つ仕事は、りんごだけでなく、土台の準備にも分かれています。
生地のふたか、卵白の泡か
メレンゲを載せる一台では、空焼きした底へ、バターと砂糖で軽く色づけたりんごを重ねます。卵白と砂糖を泡立て、でんぷんを合わせたメレンゲで覆って焼くと、上面は薄く割れるほど香ばしく、下のりんごは柔らかくなります。ふたにもバター生地を使う型とは、口へ入る順番も噛み心地も違います。
温かい一片へバニラアイスクリームを添える食べ方もあります。温かいうちは果実が柔らかく、冷ますと中身と生地が落ち着き、切り口を保ちやすくなります。
りんごに由来する名のヤブウェチュニクも、この菓子と重ねて使われます。しかしその名には、りんごを混ぜたスポンジやバターケーキまで含める使い方があります。二つの名が重なる食卓でも、薄い生地で挟むか、ケーキへ果実を混ぜ込むかという構成は一つではありません。
用語解説
- クルヘ・チャスト
- ポーランド語で、もろく崩れる性質の生地。バターなどの油脂を使います。
- クランブル
- 粉・砂糖・油脂などを粒状に合わせた生地。
- サワークリーム
- 乳のクリームを発酵させ、酸味を持たせたもの。
- シャラ・レネタ、アントヌフカ
- ポーランドでシャルロトカ向けのルセットに挙げられる、りんごの品種名。
- メレンゲ
- 卵白に砂糖を加えて泡立てたもの。
- ヤブウェチュニク
- ポーランド語のりんご菓子の名。シャルロトカと重なる場合も、スポンジ等の別の構成を指す場合もあります。
- マリー=アントワーヌ・カレーム
- 19世紀フランスの料理人・製菓著述家。冷たいシャルロット・リュスの由来に結び付く。
- シャルロット・ホーエンツォレルン
- 後にニコライ一世の妃となるプロイセン王女。シャルロット・リュスの命名説に登場する。
- シャルロット・リュス
- ビスキュイなどでクリームを囲む冷たい菓子。現在のポーランドのりんご菓子と配合は異なる。
調査注記
十八世紀のパンと果実を起点にする系譜はCulture.pl、カレームとロシア宮廷・プロイセン王女シャルロットを結ぶ由来はNCKの名称解説による。NCK本文を今回再取得し実読。二機関が説明する重点の違いを、そのまま菓子の単一発明年・単一伝来経路とせず、別の構造を持つ同名菓子として整理した。王女自身がポーランドの現在型を命名したという説明は採っていない。







