Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

トクラピ
Tklapi
果実を薄い一枚にして残す
砂糖菓子 / ジョージア

トクラピ(Tklapi、ტყლაპი)は、果実をつぶして薄く広げ、乾かして作るジョージアの保存食品である。薄い紙のように重ねたり、巻いたりして売られ、口にすると果実の酸味や甘味が強く感じられる。果実の形を残す干し果物とは違い、果肉を一度ピュレにしてから、1枚の膜へまとめ直す。
甘いものをちぎって食べる楽しみがある一方、酸っぱいものは料理にも使われる。菓子と調味料の2つの用途を持つことが、トクラピを特徴付ける。酸っぱいシートは、甘い間食用のものとは違い、汁物や煮込みに果実の酸味を加える。

果実を薄く乾かしたトクラピ。色の違いがあっても、どれも1枚の膜として持てる形になっている。 写真:出典、Xuthoria、CC BY-SA 4.0。画像の改変なし(配信元の縮小版)。
乾かす前に、濃さを整える
果実は柔らかく煮てから、種や皮を除いて均一にする。この段階で汁が薄いままでは、広げてもまとまりのあるシートになりにくい。濃縮してから薄く延ばし、乾燥面を広く取ることが、1枚に仕上げる基本になる。
桑の実を使う場合には、小麦粉を加える作り方もある。国連食糧農業機関(FAO)が2010年に刊行した『Gardens of Biodiversity』は、南コーカサスの農家の食と季節への対応を記録し、その中にジョージアのトクラピを載せている。同書に記された小麦粉入りの作り方では、桑の実をつぶして裏ごしし、量が大きく減るまで煮詰めた後、別鍋で用意した小麦粉と水の濃い糊を合わせる。布へ広げて日干しにし、はがすときには裏から布を少し湿らせる。
この作り方では、果実だけでなく加熱した小麦粉もシートのまとまりを作る。布の裏を湿らせるのは果実を戻すためではなく、乾燥した層を布から外すためである。同書には粉を使わない作り方も明記されており、小麦粉入りと果実だけのものは併存している。完成品が薄いからといって、材料が果実だけとは限らない。
生の桑の実、煮詰めた濃縮物、乾いた膜では、同じ量に含まれる水分が変わる。食べたときに味が濃く感じられるのは、砂糖を増やしたからとは限らない。余分な水分を除き、果実の成分を少ない体積へ集める加工そのものが、酸味と甘味をはっきりさせる。
酸っぱいシートを料理へ戻す
酸味の強いプラムのトクラピは、ハルチョ(kharcho)などの煮込みにちぎって加える。ダラ・ゴールドスタインの1999年の料理書にも、酸っぱいプラムを煮て裏ごしし、薄く乾かす方法と、スープや煮込みの酸味づけに使う説明がある。乾いたシートは汁の中で再び柔らかくなり、保存した果実の酸味を料理へ渡す。
トクラピを水に浸して柔らかくし、調味料と合わせてソースにする方法もある。ジョージアのFoodLabが載せるトクラピソースは、まさに乾燥シートを液体に戻して使う方法である。シート状の完成品から再びソースへ変えられることは、膜を作る技術が形の面白さだけのためではないことを示す。
甘いものにはアンズや桃なども使われる。酸っぱいプラムを使うものと果実の甘味を生かすものでは、同じ薄いシートでも食卓での役割が変わる。桑の実を使うものも含め、果実の種類と粉の有無を合わせて見ると、トクラピが1種類の配合名ではなく、果実を膜状に保存する技法を含む呼び名だと分かる。
南コーカサスの果実加工
トクラピはジョージア各地で作られる。FAOの記録は、近隣のアルメニアやアゼルバイジャンにも同様の加工が広がることを述べている。トクラピは、果実を長い季節にわたって食べるため、干し果物、煮詰めた果汁、果実のシートを作り分ける南コーカサスの暮らしの中にある食品である。
糸に通したナッツへ濃い果汁を重ねるチュルチヘラと比べると、トクラピは薄い面そのものが完成品になる。ナッツを中心に被膜を重ねていく工程は要らず、広げる面積と厚みが形を決める。市場に並ぶ巻かれたシートには、収穫物を冬まで残し、食べるときにそのままちぎるか料理へ戻すかを選べる、保存加工の使いやすさがある。
用語解説
- トクラピ(Tklapi/ტყლაპი)
- 果実のピュレを薄く乾かしたジョージアの食品。酸味の強い料理用と甘い間食用がある。
- ピュレ
- 果肉などをつぶし、裏ごしして滑らかにしたもの。
- ダラ・ゴールドスタイン
- ジョージア料理書『The Georgian Feast』の著者。1999年刊のトクラピ項で酸っぱいプラムのシートと料理での用途を記した。
- 国連食糧農業機関(FAO)
- 農業と食料に関する国際機関。本文では南コーカサス農家の食文化を記録した2010年の刊行物に関わる。
- ハルチョ(kharcho)
- ジョージアのスープ・煮込みの名。酸味を加える材料にトクラピを使う作り方がある。
- チュルチヘラ
- 糸に通したナッツを、粉などで濃くした果汁の衣で覆って乾かす菓子。







