Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

バダンブラ
Badambura
アーモンド餡を包む、白い層の焼き菓子
パイ / アゼルバイジャン

バダンブラ(Badambura)は、アーモンドと砂糖、カルダモンの餡を生地で包むアゼルバイジャンの菓子である。幾重にも重なった淡い生地に粉糖をふり、かむと内側のナッツの粒が現れる。春のノウルーズ(Novruz)に作る菓子の一つだが、結婚の祝いにも、紅茶を囲む普段のもてなしにも供される。
層を作ってから、餡を閉じ込める

ノウルーズの菓子として並ぶバダンブラ。奥には春の行事に使う発芽麦も見える。
写真・図版:Sefer azeri/CC BY-SA 4.0/原図。Wikimedia Commons生成の450px縮小版を取得。追加のトリミング・色加工なし。原寸は共有環境の429を踏まえ未取得。
層状のバダンブラは、小麦粉にバター、サワークリーム、酵母などを合わせた生地から始まる。延ばした生地を層ごとに油脂で隔て、小さな円形に分けてから、中央に餡を入れて縁を閉じる。ナッツの餡を挟んだ大きな天板菓子を後で切るのではなく、1個ずつ餡を包んだ状態で焼く。
具体的な重ね方には、薄い生地を4枚、間に油脂を塗って重ね、幅の狭い帯に切る方法がある。この帯をロール状に巻いて1個分の生地にし、平らに押して円形へ延ばす。中央へ餡を入れ、縁をねじるように閉じる。重ねた皮を巻いてから延ばすため、外側には細かな層が現れる。小麦粉と油脂の皮、ナッツと砂糖の餡を別に用意し、成形で1個にするため、外側と内側の食感を作り分けられる。
アーモンドは皮を除き、乾かしてから砕く。濡れたままではなく乾かした実を使い、砂糖とカルダモンを混ぜるのが基本的な餡の作り方である。カルダモンは現地語でhilと書く。アーモンドの穏やかな風味に、少量でもはっきり分かる香りを添える。
酵母入りだからといって、パンのように大きくふくらんだ気泡だけを目指す菓子ではない。バダンブラでは、発酵させた生地の柔らかさと、油脂で隔てた層の細かさが重なる。サワークリームや酵母の量、重ね方には作り分けがあり、一つの配合で全製品を説明することはできない。
焼き色を抑える仕上げ
アゼルバイジャンの観光局が紹介する層状のものは、低い温度で焼き、褐色にせず白い外観を残す。最後に砂糖をふるため白く見えるだけでなく、生地自体の焼き色も抑える作り方である。強く焦がした表面の風味より、油脂を含む柔らかな皮と、アーモンドの餡が前に出る。
シェケルブラも、甘いナッツ餡を1個ずつ包むアゼルバイジャンの菓子である。表面へ細かな模様を刻むシェケルブラに対し、生地を層状に重ねるバダンブラは、幾重にも見える生地の重なりが外観の特徴になる。餡の材料が近くても、皮の作り方と仕上げの違いによって、別の菓子として並ぶ。
アーモンドだけに固定されない名
バダム(badam)はアーモンドを意味し、菓子名にはこの語が含まれる。代表的な説明もアーモンド餡だが、現在の製品にはヘーゼルナッツを使う例がある。バクーの製菓会社Mama’m Bakeryは、バダンブラの材料にヘーゼルナッツ、カルダモン、サワークリーム系材料、酵母などを記している。名称から予想する実と、個別商品の配合とが常に一致するわけではない。
作り方にも幅がある。アゼルバイジャンの公的ポータルに載る別の作り方は、サワークリームと重曹を使った生地へアーモンドと砂糖を包み、植物油で揚げ、冷めてから粉糖をふる。層を作って白く焼くものと、この揚げるものは、同じ名のもとで記録されている。粉糖とナッツ餡という共通点を残しながら、油脂を生地の層に使うか、仕上げの加熱に使うかで、皮の姿が変わる。
ノウルーズの食卓には、バダンブラとともにパフラヴァ、シェケルブラ、ゴガルが並ぶ。文化人類学者アネタ・ストシェンジャルスカ(Aneta Strzemżalska)が2024年のバクーで記録した家庭の盆にも、この4種類が載っていた。彼女は、家庭で焼く菓子を店で買う菓子に替える例が増えているとも記す。バダンブラは現在も、祝いの盆に並ぶとともに、日常の紅茶にも添えられている。
用語解説
- バダンブラ(Badambura)
- アゼルバイジャンの甘いナッツ餡を包む菓子。層状の白い焼き菓子のほか、揚げるものも記録される。
- ノウルーズ(Novruz)
- 春分のころに祝う新年の祭り。アゼルバイジャンでは多様な伝統菓子を用意する。
- hil
- アゼルバイジャン語でカルダモン。バダンブラの餡の香辛料。
- バダム(badam)
- アゼルバイジャン語でアーモンド。
- シェケルブラ
- 甘いナッツ餡を包み、表面に模様を付けるアゼルバイジャンの菓子。
- アネタ・ストシェンジャルスカ
- 2024年のバクーでノウルーズの家庭と公開行事を観察した文化人類学者。
- ゴガル
- ノウルーズの盆にバダンブラなどと並ぶ、丸い菓子。
- パフラヴァ
- 薄い生地とナッツなどを重ねる菓子。アゼルバイジャンの祝祭菓子の一つ。







