Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

パスチラ
Pastila
りんごを泡と層にする
砂糖菓子 / ロシア、コロムナ、ベリョーフ

パスチラは、りんごを焼いて裏ごしし、ゆっくり乾かして作るロシアの菓子です。水分が抜けた生地には、果実の香りと酸味が凝縮されています。薄く干して巻く濃密なものから、卵白を加えて泡立て、ふんわりと仕上げるものまで、その姿はひとつではありません。
りんごのピュレを泡立て、乾かす
酸味のあるアントーノフカなどのりんごを柔らかく焼き、皮や種を除いてピュレにします。砂糖や蜂蜜で甘みを添え、卵白とともに泡立てると、果実の濃い生地に空気が入り、明るい色の軽い生地になります。りんごに含まれるペクチンも生地を形づくる一助です。生地を広げ、低い温度で時間をかけて乾かすと、水分が抜け、香りと酸味がいっそうはっきりします。


ベリョーフ風の一例では、生地を少し取り分けておき、乾いた薄い層の間に塗って重ね、もう一度乾かします。切り口に縞が見えるのは、そのためです。かむと泡立てた生地の軽さと、果実のしっとりとした食感を味わえます。配合や乾燥の具合で食感は変わり、りんごと卵白だけで作るものもあります。ベリョーフの製造者は、卵白を使わない断食期向けのパスチラも紹介しています。
一方、コロムナでは果実を煮て甘みを加え、板に広げて乾かす、より密なものも語り継がれてきました。現在の博物館の試食には、果実を感じる濃いものと軽いものが並びます。泡立てて乾かしたパスチラと、ゲル化剤を用いて絞るゼフィールを見比べると、果実の泡を形にする異なる工夫が見えてきます。工場製のパスチラにはゲル化剤を用いるものもあります。
果樹園から町の菓子へ
コロムナはりんごの産地として知られ、パスチラ作りも家庭の保存の知恵から商人の製造へと広がりました。トゥーラ州の町ベリョーフでは、19世紀末に商人プロホロフが果実の乾燥工場で層を重ねたりんごの菓子を製造しました。ベリョーフの製造者によれば、プロホロフは1899年に作り方を記した小冊子を刊行し、その最初の頁の複写や当時の包装が地元の博物館に残っています。パスチラの起源を14世紀に求める説もありますが、いつ誰が最初に作ったかを一つに定めることはできません。
コロムナでは、古いレシピや資料を手がかりに菓子が再現され、博物館や工場を訪ねる人に茶とともに供されています。果樹園で採れたりんごを保存し、収穫の季節を過ぎても食べられるようにした工夫が、町の菓子として今も伝えられています。
用語解説
- アントーノフカ
- ロシアで親しまれる、酸味のあるりんごの品種群。
- ペクチン
- 果実に含まれる多糖類。果実の加工品にとろみやまとまりを与える。
- ピュレ
- 食材を加熱するなどして、なめらかにつぶしたもの。
- プロホロフ
- ベリョーフで果実の乾燥工場を営んだ商人。







