Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

マンチェスター・タルト
Manchester tart
マンチェスター・タルトの材料と製法
タルト / イギリス・マンチェスター

マンチェスター・タルト(Manchester tart)は、イングランド北西部の名を持つ、ジャムとカスタードのタルトです。焼いたタルト台にラズベリージャムを塗り、カスタードを重ね、ココナッツを散らします。上にチェリーを飾ったこの菓子は、英国の学校給食を思い出させるものとしても知られています。

焼いた台にジャムとカスタード
一例では、小麦粉とバターなどで作る生地を型に敷き、重しを載せて先に焼きます。その間に卵黄、砂糖、牛乳にコーンスターチを加えて火にかけ、カスタードにとろみをつけます。冷めた台にジャムを塗ってカスタードを注ぎ、ココナッツを散らします。さっくりした台、柔らかなカスタード、果実の酸味を一切れで味わえます。

マンチェスターの食に関わる団体バウンスバック・フードは、ラズベリーをジャムと一緒に煮てタルト台に塗り、カスタードを重ね、ココナッツと生のラズベリーを添える作り方を紹介しています。ジャムとカスタードの間に薄切りのバナナを入れると、懐かしい仕上がりになるとも勧めています。チェリー、バナナ、ラズベリーと、上に飾る果実や内側に入れる果実は作り手によって変わります。
製菓材料メーカーのIREKSは、1950年代から80年代にかけて学校の昼食で人気があった菓子として紹介しています。マンチェスターの名を持つタルトは、学校で食べたデザートの記憶とも結びついています。
マンチェスター近郊のベリー市場では、2023年に小型のタルトが店頭に並ぶ姿も撮影されています。

19世紀のマンチェスター・プディング
19世紀の料理書には、よく似た名前の「マンチェスター・プディング」が載っています。1859年の料理書の一例では、牛乳でパンくずを煮てレモンの皮、砂糖、卵、溶かしバターを合わせます。パイ生地を敷いた皿にジャムを塗り、その上に混ぜたものを流して焼きます。
1861年刊のビートンの料理書にも同様の作り方があり、ブランデーを加えて焼き、冷たくして出します。ジャムと卵を使う点は今日のタルトに近く見えますが、パンくずを含む中身を生地と一緒に焼く料理です。焼いた台にカスタードを重ねる現在の菓子に、いつ、どうつながったかははっきりしていません。
用語解説
- イザベラ・ビートン
- 19世紀の英国の料理書著者。マンチェスター・プディングを紹介した。
- カスタード
- 卵や乳、砂糖などを加熱してとろみをつけるクリーム。
- タルト台
- 具を載せるために型に敷き、焼いた生地。







