Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

バル・ミタイ
Bal Mithai
煮詰めた乳を、白い糖粒で覆う
砂糖菓子 / インド・ウッタラーカンド州アルモラ

バル・ミタイ(Bal Mithai/बाल मिठाई)は、北インドのウッタラーカンド州、特にアルモラとクマーウーン地方で親しまれる乳菓子です。褐色の塊を四角く切り、外側を白い糖粒で覆います。白い糖粒の下にある濃い色の中身は、乳を煮詰めたコーヤをさらに炊いて作ります。
乳の中身と、表面の糖粒は別々に作る
コーヤ(khoya)は、乳を鍋で加熱し、水分を減らして得る濃縮乳製品です。加熱の途中で鍋に付いた乳の固形分を削り戻し、混ぜながら煮詰めます。バル・ミタイでは、そのコーヤを砂糖とともにさらに炊き、濃い褐色の菓子に仕上げます。
煮詰めたものは、皿や型に広げて冷まします。切れる程度に固まってから、四角い小片へ分けます。次に糖液を付け、白い糖粒を外側へまぶします。乳の中身を炊き、表面の糖粒を後から付けるため、食べ始めには細かな糖粒が触れ、続いて密な乳の部分が現れます。
製品によってはココアを加える作り方もあります。ウッタラーカンド公開大学のルセット(材料の配合と作り方)にも、その一例が載っています。アルモラ地区の基本説明では、コーヤを炒り煮して褐色に仕上げる形が示されています。乳と糖の加熱で出る色を基本に、ココアで風味を変える配合もあります。
アルモラの「チョコレート」との違い
アルモラの菓子店では、バル・ミタイと並んで「チョコレート」という乳菓子も売られます。菓子店ヒーラ・シン・ジーワン・シンは、白い糖粒をまとうバル・ミタイと、暗い色に炊いて厚く切り出すチョコレートを、別の製品として受け継いでいます。いずれも土地の煮詰め乳の菓子で、市販の板チョコレートと同じ意味ではありません。
また、同じ地域のシンゴリは、コーヤを葉の円錐に包みます。白い糖粒で表面を覆うバル・ミタイ、葉の香りを添えるシンゴリ、糖粒を付けない暗色の乳菓子というように、同じ菓子店の品揃えの中でも、乳をどこまで炊き、何を外側に使うかが変わります。
バザールの菓子から、持ち帰る名物へ
アルモラのラール・バザールには、コーヤを扱う菓子店の歴史が重なっています。バル・ミタイの現在の形を広めた人物としてよく名が挙がるのが、ジョガ・ラル・シャーです。19世紀から20世紀にかけて、その店の菓子が名を広めたと語られています。単独の発明年が確定しているというより、町の職人と店の沿革に結び付く来歴です。
ヒーラ・シン・ジーワン・シンも、1887年以降の記録を持つ店の歴史の中で、バル・ミタイとチョコレートを受け継いできました。現在の家の仕事はアルモラに加えハルドワニにも広がり、婚礼や祭りの菓子箱にも土地の乳菓子が入ります。菓子を箱で持ち帰る商いは、ナイニタールや、山麓のチョーティ・ハルドワニにも見られます。町の菓子店を訪ねた紀行には、その日の分を短い時間で売り切る小さな店の様子も残ります。小さく切って箱に収められる形と、見分けやすい白い糖粒の被覆が、旅先から持ち帰る土地の味にもなっています。

白い糖粒で覆ったバル・ミタイ。褐色の乳菓子と白い被覆の対比が分かります。 撮影:vkumar。画像出典/CC BY 3.0。
用語解説
- コーヤ(khoya)
- 乳を加熱して水分を減らす濃縮乳製品。バル・ミタイの褐色の中身に使います。
- シンゴリ
- 同じ地域で知られる乳菓子。香りのある葉に包んで円錐形にします。
- ラール・バザール
- アルモラの市場地区。菓子店と乳菓子の歴史に関わる場所です。
- ジョガ・ラル・シャー
- アルモラで現在のバル・ミタイを広めた人物として語られる菓子職人。名の表記と年代には幅があります。
- ヒーラ・シン・ジーワン・シン
- アルモラを拠点にする菓子店。バル・ミタイとチョコレートなどを別製品として作り続けています。







