Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

シンゴリ
Singori・Singodi
葉の円錐に包む、ヒマラヤ山麓の乳菓子
砂糖菓子 / インド・ウッタラーカンド州クマーウーン

シンゴリ(Singori、Singodi)は、乳を煮詰めた菓子を葉で円錐形に包む、ウッタラーカンド州の菓子です。アルモラをはじめとするクマーウーン地方の名物として知られますが、西側のテーリー・ガルワールにも長い結び付きがあります。葉は乳の菓子を包んで形を整え、香りを添える包材です。食べるときには、この包みを外します。
乳を煮詰め、少し粒を残す
主材料のコーヤ(khoa)は、乳を加熱して水分を減らした濃縮乳製品です。乳を酸で固めて乳清を除くチーズとは異なり、鍋の中で乳の固形分を集めて作ります。ここへ砂糖を加え、葉に収められる状態にして仕上げます。
白いものから淡く色付いたものまであり、柔らかな乳の塊の中に、わずかな粒感が残ります。アルモラ地区の作り方では、カルダモンとココナッツも風味を添えます。葉から外すと、乳の味だけでなく、マルーと呼ばれる包み葉の香りも一緒に感じられる菓子です。
クマーウーンの市販品を比較した2016年の研究では、牛乳または水牛乳から作るコーヤを使い、糖と香味を加え、少量の酒石酸で粒感を作る工程が記録されています。これは酸で乳清を分けてチーズを作る工程とは違い、煮詰めた乳菓子の組織を整えるための少量の添加です。この調査で扱った作り方では、乳を煮詰めた後に、酸を用いて細かな粒を整えています。
包む葉が形を作る
葉を円錐形に折り、その中へ乳菓子を詰めます。包んだ葉そのものが、柔らかな乳菓子の形を保ちます。口の広い側と細くすぼまった先端を持つ姿は、葉の包み方から生まれます。
マルーの葉は、この菓子をほかのコーヤ菓子と区別する特徴です。乳、ココナッツ、カルダモンの風味に葉の香りが重なり、円錐の姿とともにシンゴリらしい仕上がりになります。
同じアルモラのバル・ミタイは、乳を褐色まで炊き、白い糖粒を外側に付けた菓子です。シンゴリは葉を外して乳の部分を食べます。煮詰め乳を使う点では近くても、加熱の仕上げと外側に使うものが異なり、見た目も食べたときの香りも変わります。
テーリーの記憶と、アルモラの家の物語
テーリーにも、シンゴリを町の名物として親しんだ記憶があります。テーリーを振り返る回想『メーリー・テーリー(Meri Tehri)』には、町のシンゴリが遠方まで知られ、平地の人が「葉に包んだ菓子」と呼んだことが記されています。ネギ(Negi)の店の品が特に評判だったという記憶も残ります。町の菓子店と、町の外からの呼び名の両方に、この葉包みが現れます。
一方、アルモラの菓子店ヒーラ・シン・ジーワン・シンには、別の家の物語があります。家の職人ラム・ラルがバドリナートへの巡礼から戻る途中、ほかの土地の菓子店で働き、そこで出合ったシンゴリをアルモラへ持ち帰った、と伝えています。家の説明も、テーリー・ガルワールで先に作られていたことに触れています。
テーリーの町の記憶と、アルモラの家が伝える巡礼の物語には、それぞれの土地で菓子を作り、売り、持ち帰った人々が登場します。創製の年は明らかではありませんが、葉包みの菓子は複数の土地の名物として受け継がれてきました。

葉で円錐形に包んだシンゴリ。包材が製品の形を作っています。 撮影:Vinaysharmahbd。画像出典/CC BY-SA 4.0。
用語解説
- コーヤ(khoa)
- 乳を加熱して水分を減らした濃縮乳製品。シンゴリの主材料です。
- マルー
- シンゴリを包む香りのある葉の地域呼称。文献には複数の綴りや植物名が見られます。
- 酒石酸
- 食品に用いられる有機酸。シンゴリの一部の製法では細かな粒感を作るために少量加えます。
- メーリー・テーリー(Meri Tehri)
- テーリーの町を回想する文章。葉包みの菓子シンゴリと、名の知られた店の記憶を記しています。
- ヒーラ・シン・ジーワン・シン
- アルモラの菓子店。家の職人が巡礼の途中で知ったシンゴリを持ち帰ったという沿革を伝えています。
- ラム・ラル
- ヒーラ・シン・ジーワン・シンの家で、シンゴリを持ち帰ったと伝えられる職人。
- ネギ(Negi)
- 『メーリー・テーリー』の回想で、シンゴリが評判だった店の名として登場します。







