Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

ガレットブルトンヌ
Galette bretonne / Palet breton
厚焼きの呼び名を、薄焼きガレットと並べて考える
焼き菓子 / フランス

薄い丸をかじると、塩バターの香りと軽い歯切れが残ります。ガレットブルトンヌは、ブルターニュの小麦粉、卵、糖、バターのビスケット。同じ地方でガレットと呼ぶソバ粉の食事用とは、材料も焼き方も異なります。厚いパレ、大きく焼くガトー・ブルトンと並べると、この菓子が選んだ薄さがよくわかります。
塩バターを薄い一枚へ
このサブレ系の菓子では、柔らかな固形の塩バターを粉とどう合わせるかが、生地作りの要です。卵黄と糖を白っぽく混ぜ、粉とベーキングパウダーを加えてからバターを合わせる型では、バターを溶かさずに使います。全卵を用い、粉、糖、膨張剤へ卵とバターを加えてまとめる型もあります。卵黄だけか全卵か、粉に対してバターがどれほど入るかで、生地のまとまりと焼き上がりは変わります。
薄く延ばして冷やすのは、柔らかなまま扱うよりも輪郭と厚さをそろえやすくするためです。丸く抜いた生地は、焼いたときに広がる余地を取って並べます。卵を塗り、フォークで筋を引くものも、町や製造者の名、ブルターニュの文様を刻印するものもあります。冷ますと整う薄い歯切れに加え、表面にも土地の印が残るビスケットです。
1900年版のピエール・ラカンの製菓書には、乳、卵、レモン、膨張剤を使い、丸枠で焼くコリントレーズン入りの同名ルセット(材料の配合と作り方)もあります。古い名の下にも、現在の薄いビスケットとは異なる材料の組合せが記されています。
ポン・タヴァンで重なる二つの年譜
画家の町としても知られるポン・タヴァンは、この薄い菓子の町でもあります。パンヴァン家の製造史の節目は1890年。イジドール・パンヴァンが家業のパン屋を継ぎ、塩バターの薄いガレットを広めたと伝わります。材料の計量を取り違えて偶然できたという話もありますが、これは製造者が伝える由来の物語で、当時の仕込みを記した確かな創作記録とは区別されます。
同じ町のトラウ・マッドの年譜には、別の節目があります。同社がアレクシ・ル・ヴィランによる厚いパレの商品化を置くのは1920年、娘マルグリットによる自社の薄いガレット・ド・ポン・タヴァンの創作は1950年です。地方で受け継がれる薄い菓子全体と、一社の商品とでは、始まりと呼ぶ日付が違います。
Traou Mad はブルトン語で「よいもの」。1980年代には同社がゴーギャンの作品を箱に用い、ポン・タヴァンの画家の町という姿を土産の装いへも取り込みました。生地の刻印と箱の絵は、それぞれの仕方で町の名を運びます。
ガレットという広い名
薄いガレット、厚いパレ、大判のガトー・ブルトンは、バターの風味を持ちながら、形と厚さに違いがあります。一方、ソバ粉のガレットは水分の多い生地を鉄板へ広げる食事の料理。同じ語が付いていても、小麦粉とバターのビスケットの変形として一括りにはできません。
一枚を添える、日々と祝いの卓
ガレットとパレは同じ店で売られ、家庭や宗教の祝いにも、間食や午後のおやつにも登場します。クリームや果物のサラダへ添えれば、柔らかな甘味にバターの香りと薄い歯切れが加わります。シードルを盛った小さなボウルと合わせるのも、土地に伝わる取り合わせです。箱で町の名を運ぶ土産である一方、食卓では一枚ずつ、飲み物やデザートの隣に置かれる菓子でもあります。
用語解説
- パレブルトン
- 厚い円盤形に焼くブルターニュのバタービスケット。
- サブレ
- バターと小麦粉などで作る、ほろりとした焼き菓子。
- ポン・タヴァン
- フランス・ブルターニュの町。ビスケットの産地としても知られます。
- イジドール・パンヴァン
- ポン・タヴァンのパン職人。1890年を起点とするガレットの製造史に名を残します。
- ピエール・ラカン
- フランスの菓子職人・著述家。1900年版の著書にガレット・ブルトンヌのルセットを収録しました。
- コリントレーズン
- 小粒で種のないブドウを干した製菓材料。
- トラウ・マッド
- ブルトン語で「よいもの」。1920年にポン・タヴァンで始まったビスケットの製造者名でもある。
- シードル
- リンゴ果汁を発酵させた酒。ブルターニュではボウル状の器で供することもある。
- アレクシ・ル・ヴィラン
- トラウ・マッド社史が1920年の厚いパレの商品化を帰す人物。
- ゴーギャン
- ポン・タヴァンゆかりの画家。同地の菓子の包装にも作品が用いられた。
- マルグリット・ル・ヴィラン
- トラウ・マッド社史が1950年の自社ガレット創作を帰す、創業者アレクシの娘。
調査注記
ガレットとパレの2012年の地理的表示申請を伝える情報はあるが、申請だけをEU登録済みの根拠にはしていない。名称保護の確認課題は本文の結末から編集注記へ移した。食べる場面と取り合わせはL’Observatoire du Patrimoine des Terroirsの供食節による。地域内の全家庭が同じ飲み方をするという意味ではない。
パレードのガレット・ブルトンヌ / Galette Bretonne
京都・伏見桃山の洋菓子店「パレード」が手がける、発酵バター香る「ガレット・ブルトンヌ」。
フランスのブルターニュ地方で古くから愛されてきた厚焼きのクッキー。生地量の1/3にもなるほどのたっぷりと使用した発酵バターの豊かな風味と、卵のやさしい味わい、ふんわりとラム酒の香りが広がるリッチで芳醇な美味しさです。ざくっとした歯応えの中に、ほろりとほどける食感。ブルターニュ特産の「ゲランドの塩」を効かせ、風味を引き出した自慢の味わいです。







