Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

サブレ
Sablé
砂のようにほどける生地、ビスケットとの言葉の関係
焼き菓子 / フランス

かむと細かな粒になってほどける。その食感が、フランス語で砂を意味する sable に由来するサブレの名を支えています。バターと粉を主体にする一枚は、卵黄と有塩バターを使うブルターニュの型、ノルマンディーの町名を持つ製品、二色の市松模様へと姿を変えます。共有するのは一つの発明譚や唯一の配合というより、もろく崩れる生地をどう作るかという技術です。
砂のような名と、宮廷に招かれた菓子
フランス語の sablé は、砂を意味する sable から派生した語です。フランス語アカデミーの辞典も、粉と油脂を崩して作るもろい生地と、その小菓子の意味を載せています。
材料の比率には幅があります。英語へ訳すとビスケットやクッキーに相当し、言語ごとの大きな分類と、フランスの特定の生地の呼称は重なる範囲が異なります。
サブレ=シュル=サルトには、1670年の宮廷に名の始まりを求める話も伝わります。サブレ侯爵夫人マドレーヌ・ド・スヴレが菓子を紹介し、コンデ公の給仕長ヴァテルが王弟に供したところ、軽く繊細な味が喜ばれ、夫人をたたえる名が広まったというものです。当地の観光局が語る宮廷譚で、当日の献立や書簡による裏付けは定まっていません。砂を語源とする生地の名と、町に伝わる名家の物語は、それぞれの由来として区別されます。
バターをすり込むか、柔らかく混ぜるか
ブルターニュの卵黄を使うルセット(材料の配合と作り方)では、有塩バターと卵黄を使い、膨張剤も加えます。卵黄と砂糖を混ぜ、粉を加えてから柔らかいバターを合わせ、のばした生地を冷やして抜きます。冷たいバターを最初に粉へすり込む方法だけがサブレというわけではありません。粉を油脂で覆うサブラージュでも、柔らかい油脂から作る方法でも、焼くと細かく崩れる生地に仕上げられます。
この卵黄入りの型では、バターを溶かさず、柔らかい状態で生地へなじませます。油脂の温度は生地を扱える硬さと成形に関わり、冷蔵する工程は型で抜いた輪郭をそろえるためにも働きます。有塩バターは甘い生地へ塩味を加え、卵黄や膨張剤の配合は厚みときめを変えます。丸い外形が共通していても、薄く歯切れよく焼くものから、厚くほろほろとほどけるものまであります。
断面に模様を組み立てる
型抜きなら輪郭の整った一枚に、棒状に冷やして切れば厚みのそろった一枚になります。バニラとココアの生地を組み合わせれば、断面まで通る市松模様も作れます。周囲に砂糖をまぶすディアマンは、外周に別の歯ざわりを加えたサブレの姿です。
ジェフリー・ハメルマンの市松サブレでは、バニラとココアの二色を別々に練ります。卵黄は生地へ、卵白は少量の水と溶いて層の接着に使います。色を焼いた表面へ描くのではなく、異なる生地の断面で模様を作る方法です。
二色を重ねた板を切って積み直し、帯に切って色を交互に組みます。角柱を冷やしてから薄切りにすれば、一本から同じ市松模様の一枚を繰り返し取れます。卵白を薄く塗る成形と、切断時の変形を抑える冷却が組み合わさっています。
切り落としは最初から練り混ぜず、後で軽く合わせて大理石状の別の円柱にします。端材を市松模様へ無理に戻さず、同じ二色から異なる模様を作る方法です。
アランソンから海辺の保養地へ
一八二八年の旅行記には「アランソンのサブレ菓子」が現れ、口にすると砂のように崩れると記されたことを、ノルマンディーの農業・食文化資料が伝えています。バター、粉、砂糖がおよそ三分の一ずつという材料の説明もあります。後のリトレ辞典もノルマンディーの菓子名として採録しました。十九世紀にこの名と食感が知られていたことを物語る記録であり、一八二八年を発明年とするものではありません。
十九世紀末には、海辺の保養地へ来たパリの客が持ち帰る菓子としても広がりました。オルヌ県の資料は、トルヴィル、リジュー、カン、ウルガットなどで菓子職人が多く作るようになったと説明します。保養地で味わい、家へ持ち帰る売り方も、町の名を持つ菓子を育てました。
町名とバターを受け継ぐアネル
ノルマンディーのアネルでは、地元のビスキュトリーが、一九〇四年にパン職人シャルル・バンサールが作った配合を継いでいると説明しています。初めは作り手の姓に結び付く名で呼ばれ、後に町の名を掲げる商品として育ちました。
同店の代表品には無塩のイズニー産バターが使われます。有塩バターのブルターニュの公開ルセットと比べれば、どちらもサブレでありながら、塩の選び方と土地の乳製品が異なります。成形する手順だけでなく、地域名の裏にある油脂と作り手を見ると、小さな一枚の違いを知ることができます。
同店ではコーヒーや茶とともに供し、製造見学も受け入れています。海辺で一枚を味わう場と、職人の仕事を見せる場が、今のビスキュトリーには共存しています。
二枚で挟むか、大きな一枚を割るか
ドローム県ロマン=シュル=イゼールのリュネット・ド・ロマンは、ジャムを挟む二枚合わせの型です。上の生地に二つの穴を開けると、赤い中身が眼鏡の向こうの目のように見えます。lunettes はフランス語で眼鏡。メゾン・ジャックマールでは、バター、小麦粉、卵を使う生地にラズベリージャムを合わせて製造しています。穴のある上面へ粉糖を振ってから重ねると、白い生地の輪郭と果実の色を分けられます。
一人一枚という単位から離れるのが、ポワトゥーのブロワイエです。大きく平たく焼いたサブレに近い菓子を卓へ置き、中央へ拳を一度当てて割り、各人がかけらを取ります。揃った輪郭を守る型抜きや、同じ模様を繰り返す市松とは逆に、食べる場で不揃いに割ることが、もろさを分かち合う仕草になります。
「罰」の名を付けた家のいたずら
パリのポワラーヌには「ピュニシオン」、直訳すれば「罰」という名のサブレがあります。店が伝える家の話では、リオネル・ポワラーヌの曾祖母が、学校から帰る子どもたちに罰を受けにおいでと言い、開いた手に焼きたてのサブレを載せていました。リオネルはこのいたずらを商品名にしたといいます。同店の一枚は小麦粉、卵、砂糖、バターを合わせて休ませ、丸く抜き、薪窯で焼くもの。家のいたずらが、店の一枚を呼ぶ名へ引き継がれたのです。
用語解説
- マドレーヌ・ド・スヴレ
- サブレ侯爵夫人。1670年の宮廷へ菓子を紹介したという当地の伝承に現れる。
- ヴァテル
- コンデ公に仕えた給仕長。侯爵夫人の菓子を王弟に供したという物語に登場する。
- コンデ公/王弟
- 宮廷譚では、それぞれルイ2世ド・ブルボンとルイ14世の弟フィリップを指す。
- リオネル・ポワラーヌ
- パリのパン屋ポワラーヌの作り手。家族の記憶からサブレを「罰」と名付けたと伝える。
- リュネット・ド・ロマン
- ロマン=シュル=イゼールに結び付く、上の二つの穴からジャムを見せる二枚合わせのサブレ。
- ブロワイエ・デュ・ポワトゥー
- ポワトゥーの大きな平たい菓子。拳で割り、かけらを分ける食べ方を持つ。
- サブラージュ
- 粉と油脂を合わせて砂状にする製菓の工程。
- 有塩バター
- 塩を加えたバター。ブルターニュの焼き菓子で用いる代表的な材料。
- ジェフリー・ハメルマン
- 米国の製パン職人・著者。キングアーサー掲載の市松サブレのルセットを担当。
- アネル
- フランス、ノルマンディーの海沿いの町。
- シャルル・バンサール
- 一九〇四年にアネルでサブレを作ったと伝わるパン職人。
- イズニー
- ノルマンディーの地名。産地名を持つバターでも知られる。
- アランソン
- ノルマンディーの町。一八二八年の旅行記に名を残す、砂のように崩れるサブレ菓子で知られる。
パレードのサブレ・ディアマン / Sable Diamant
京都・伏見桃山の洋菓子店「パレード」が手がける、自家製バニラシュガーがきらめく「サブレ・ディアマン」。
フランス語で「ディアマン」とは「ダイヤモンド」の意味で、クッキーの周囲につける砂糖がキラキラしている様子からこの名前で呼ばれます。周りにキラキラとコーティングしている砂糖には自家製のバニラシュガーを使用しており、当店でバニラビーンズのサヤから丁寧に手作りをしたものを使用しています。また、身体に負担の少ないオーガニックシュガーを使用しており、柔らかな甘みとバニラの香りを楽しんでいただきたいナチュラルなサブレです。
パレードのサブレ・メープル / Érable de Sable
京都・伏見桃山の洋菓子店「パレード」が手がける、メープルの香ばしさ広がる「サブレ・メープル」。
バターとアーモンドプードルを入れたざくざくとした硬め生地に、カナダ ケベック州産のメイプルシュガーを練り込んで、丁寧に焼き上げたサブレ。一口噛むとメイプルの焼けた香ばしい香りと甘さがふわっと広がります。また、身体に負担の少ないオーガニックシュガーを使用しており、柔らかな甘みを楽しんでいただきたいナチュラルなサブレです。深煎りのコーヒーやカフェラテ、濃いめの紅茶などと、合わせたい定番商品です。
パレードの【White Day 2024】 サブレ・ショコラ・ブラン / Sablé au chocolat blanc
京都・伏見桃山の洋菓子店「パレード」が手がける、2024年ホワイトデー限定の「サブレ・ショコラ・ブラン」。
仏・ヴァローナ社から厳選した2種類のチョコレートを生地にバランスよく使用し、芳醇なココアの風味とコーティングのホワイトチョコレートのミルク由来の脂肪分によるリッチな美味しさを贅沢に感じていただけるサブレ。
一度食べるとココアサブレとホワイトチョコレートコーティングとのバランスがクセになります。
コーティングの先端には細かなドライフランボワーズを香ばしく纏わせているため、見た目にも可愛らしく、大切な方への贈り物にもぴったりな一品です。
パレードの【Valentine 2024】サブレ・ショコラ・ノワール / Sablé au chocolat noir
京都・伏見桃山の洋菓子店「パレード」が手がける、2024年バレンタイン限定の「サブレ・ショコラ・ノワール」。
仏・ヴァローナ社から厳選した2種類のチョコレートをバランスよくコーティングに使用した芳醇なカカオの風味を贅沢に感じていただけるサブレ。一度食べるとココアサブレとチョコレートコーティングとのバランスがクセになります。コーティングの先端には香ばしいピスタチオを纏い、見た目にも可愛らしく大切な方への贈り物にもぴったりな一品です。







