Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

レモンケーキ
Japanese Lemon Cake
レモン形の一個菓子と、世界のレモン菓子
ケーキ / 日本

皮を生地へ混ぜる、果汁を焼き上がりへ染み込ませる、白い被覆で包む。レモンケーキは、同じ果実のどこをどう使うかで姿を変える、広い菓子名です。日本のレモン形の小さなスポンジも、切り分けるローフも、中央に穴のあるバント型もあります。一個ずつ渡すか、大きな一台から分けるかによって、型と仕上げが香りの置き方を変えます。
香りは皮へ、酸と水分は果汁へ
黄色い外皮を削ったゼストは芳香を担い、果汁は酸と水分を加えます。ローフの一つのルセット(材料の配合と作り方)では、糖に果皮を混ぜ、卵、クリーム、粉類、溶かしバターと順に合わせます。バント型の別のルセットは、柔らかいバターと糖へ空気を含ませ、卵を一つずつ加え、粉と乳を交互に混ぜます。後者は生地へ果皮、別のグレーズへ果汁を配します。同じレモン味でも、最初に油脂へ泡を入れるかどうかが違います。
果汁を増やせば香りだけでなく液体量と酸味も増えるため、皮の代わりに同じ感覚で加えることはできません。糖と果皮を先に合わせる方法、バターの泡に果皮を散らす方法は、それぞれの混合へ香りを組み込む仕事です。
染みるグレーズと、表面へ残る被覆
バント型の例では、熱いケーキへ果汁と糖のグレーズを塗り、内部へ浸透させます。冷ましてから粉糖と果汁のアイシングを載せる場合、その白い膜は、先の透明に近い糖液と同じ役割ではありません。濃度と温度が、水分の入り方と酸味を感じる位置を変えます。
油脂を含む製菓材料を溶かす被覆も別の方法で、ヴァローナのレモンとユズの型には、ユズ風味の仕上げがあります。日本の山崎製パン「レモナック」は、レモン形スポンジにレモン風味のチョコレート系アイシングを掛ける商品です。外の硬さや香りを作る被膜には、粉糖と果汁だけの白い糖衣とは異なる材料も使われます。
1973年の二十五連型
レモン形の普及を支える道具に、千代田金属工業が1973年に発売した「レモンケーキ型二十五連」があります。同社の沿革は、創業者の吉田欣也が、客からレモン形の焼き型を求められ、試行錯誤で製作したと伝えます。複数を同じ形へ一度に焼く金型は、小さな菓子をそろえる店の仕事へ結びつきます。
1973年に記録されるのは道具の発売です。レモン味のケーキそのものがこの年に生まれたのではなく、一度にそろった小菓子を焼く店の仕事を支えました。
瀬戸田で、白い衣を外した理由
奥本隆三は2008年に故郷の瀬戸田で開業し、翌2009年にレモンケーキへ取り組みました。最初の主力は神戸で覚えたロールケーキでしたが、常連客から、土地の材料を使わなければ土産にならないと促されます。師匠に譲られた、既に使われていたレモン型が開発の手掛かりでした。
「島ごころ」では、従来のホワイトチョコレートの甘さが香りを隠すと考え、被覆を省きました。刻んだ果皮を煮たジャムを生地へ練り込み、酸味だけでなく香りを残します。見慣れた形の菓子を土地の土産へ作り直すとき、定番の衣を外す選択が生まれたのです。
果皮を煮て生地へ入れる工程が、瀬戸田のレモンを形だけでなく、香りにも残す方法になりました。
広島の博覧会から、長崎の作り直しへ
長崎の文明堂総本店は、2013年の広島の菓子博覧会で、瀬戸内産レモンを使う品への反響を得ました。それを契機に材料を見直し、2019年8月に新製品を発売しています。同じ外形でも、果実の産地、製菓技術、持ち帰る土産の需要が、各店の中身を変えています。
沖縄の墓前と、異なる産地の柑橘
沖縄では一個が供物にもなります。トランクは2025年の自社発表で、清明祭や旧盆に供える菓子の需要を、新製品の背景に挙げました。エーデルワイス沖縄も正月、旧盆、清明祭の供菓としています。清明の頃に祖先をしのぶシーミーの席は、日々のおやつや土産とは別の役割です。現地の作り手は、供える一個としてもレモンケーキを仕立てます。
トランクは瀬戸内の果汁とマーマレード、レモンチョコレートを組み合わせます。エーデルワイス沖縄の2026年の型は、レモンに県産ヒラミーレモンを合わせ、店内で仕上げます。沖縄の行事で使うことと、全ての果実が沖縄産であることは違います。各地の小さな一個と、海外のローフやバント型は、一つの原型の同じ配合というより、果皮と果汁を暮らしへ組み込む異なる形として並びます。
用語解説
- 清明祭(シーミー)
- 清明のころ、墓参りなどを通じて祖先をしのぶ沖縄の行事。
- ヒラミーレモン
- シークヮーサーの標準和名。沖縄の製菓にも使う柑橘。
- ゼスト
- 柑橘の外側の色の付いた皮を薄く削ったもの。
- バント型
- 中央に筒があり、外面に装飾的な凹凸を持つケーキ型の一種。
- グレーズ
- 菓子へ塗る糖液や薄い被膜。ルセットにより性質が異なる。
- アイシング
- 粉糖と液体などでつくる糖衣。製品名では別構成の被覆を指す場合もある。
- 吉田欣也
- 千代田金属工業の創業者。レモンケーキ用焼き型の開発に携わった。
パレードのレモンケーキ / Gâteau au citron
京都・伏見桃山の洋菓子店「パレード」が手がける、酸味と甘さのバランスが絶妙な「レモンケーキ」。
国産レモンを使用したレモンカードをたっぷりと包んで焼き上げた甘酸っぱい味わいとさわやかな香りが特長のパレードのレモンケーキ。たっぷりのバターを使った濃厚な風味はそのままに、よりしっとりとした生地になるように焼き方もこだわりました。口の中全体に広がる豊かな酸味と包み込むような生地の優しい甘さがたまらない一品です。
このお菓子に寄せられたお客様の声
レモンケーキ
レモンの酸っぱさが絶妙で美味しかったです。
オレンジジュースは思っていたよりあっさりでした。
以前、友人にクッキーを頂いて、とてもおいしかったので来ました。







