Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

ペラムシ
Pelamushi
ブドウ果汁を穀物粉で固める、ジョージアの秋の甘味
デザート / ジョージア

ペラムシ(ფელამუში、Pelamushi)は、ブドウ果汁に穀物粉を加えて煮て、器へ流し、冷やして食べるジョージアの菓子である。西部では白いトウモロコシ粉を使う形式がよく知られ、なめらかな塊に果汁の色と甘酸っぱさが現れる。赤黒い色だけでなく、使うブドウによって淡い色のものもできる。
果汁をそのままゼラチンで固めるゼリーではない。果汁と粉を一緒に十分に加熱することで、穀物粉のとろみを菓子の構造へ変える。温かいうちは濃い粥のようでも、冷えると器の形を保って取り分けられる。
甘さは、ブドウを選ぶ段階から始まる
ペラムシの原料になるブドウは、十分に熟して甘味を蓄えたものを選ぶ。ジョージア西部には、秋遅くまで樹に残して甘さを待つ作り方があり、10月や11月の果実が使われることもある。果汁の糖を生かして砂糖を加えずに作る形式では、原料の熟度が甘さへ直接つながる。
アデサ(Adesa)という品種は、ペラムシ用に好まれるものの一つである。甘味だけでなく酸味もあり、その風味が仕上がりに残る。ワイン用として高く評価されるブドウが、必ずしもこの菓子にも一番適するとは限らず、用途に応じた果実の選び方がある。
果皮から汁を早く分けると明るい色になり、接触が長ければ濃い色になる。したがって、色の差は赤いブドウか白いブドウかだけで決まるものではない。果汁を取る手順も菓子の色に関わる。
グリアやアジャラでは、よく煮たブドウ果汁をペトメジ(petmezi)と呼ぶことがある。泡や浮いたものをすくいながら煮ることで、澱の少ない、澄んだ果汁へ整えていく。果汁を取る、濃縮する、粉を加えるという段階が、ペラムシの製造には含まれる。
粉を混ぜ、鍋底から十分に煮る
西部の調理では、厚い底の鍋を使う。伝統的にはチャハナ(chakhana)と呼ばれる、丸底で蓋のない鍋が用いられる。果汁へトウモロコシ粉を加え、木の匙で混ぜながら加熱する。鍋底で焦げたり、粉が塊になったりしないよう、混ぜ続けることが大切な工程になる。
ジョージアの公式な料理紹介には、果汁1リットルにトウモロコシ粉1カップを使う作り方がある。煮立って気泡が出始めたら火を弱め、25〜30分煮る。これは一つのルセット(材料の配合と作り方)であり、果汁の濃度や粉の性質が違えば必要量も変わる。
粉を入れてすぐ火を止めず、粉の生っぽい香りが消え、鍋の壁へ薄い層ができるところまで煮る。その後、あらかじめ水で濡らした器に注ぐ。器を濡らすのは、冷めたときに取り出しやすくするためだ。昔から使われる深皿や広い皿のほか、現在は小さなシリコーン型を使い、1人分ずつ形をつける作り方もある。

小麦粉とトウモロコシ粉を果汁の一部と混ぜ、塊をなくす工程。加熱する前の状態である。写真:Georgia About / GeorgianRecipes.net、2013年、CC BY 3.0、改変なし。
タタラとの境界と、乾かす菓子への変化
ペラムシと近いものに、ブドウ果汁と小麦粉のタタラ(tatara)がある。東部では小麦粉のタタラ、西部ではトウモロコシ粉のペラムシがよく知られるが、2つの名と材料は地域できれいに分かれない。西部のイメレティではペラムシに小麦粉もトウモロコシ粉も使われ、年間を通じて食べる。秋に原料を収穫することと、秋だけに食べることは一致しない。
小麦粉だけのものと、小麦粉にトウモロコシ粉を合わせるものもある。家庭料理を実作で記録する「Georgian Recipes」は、濃縮果汁1リットルに小麦粉200グラムを使う形式と、小麦粉140グラム、細挽きのトウモロコシ粉60グラムを使う形式を示す。後者では粉全体のうちトウモロコシ粉が30%を占め、2種類の粉を合わせることで、小麦粉だけのものとは食感を変えている。どちらにも少量の砂糖を加えるので、果実だけの甘さを生かすものと、糖を補うものの両方がある。
この2つの作り方では、粉をまず果汁の半量でなめらかに混ぜ、残りの果汁を入れた鍋へ合わせてから火にかける。乾いた粉を熱い液へ直接振り込む方法とは異なり、加熱前に混合物の塊をなくす順序になる。仕上げはクルミや炒ったヘーゼルナッツを添え、宴席のスプラ(supra)では器から伏せて抜き、滑らかな面を上にする盛り方もある。
同じ濃い果汁と粉の混合物は、糸に通したナッツを浸して作るチュルチヘラにも使われる。器に流して冷やすペラムシは水分を残した柔らかな菓子となり、ナッツを包んで吊るせば、乾燥した外皮を持つ携行しやすい菓子になる。材料の重なりは大きいが、冷やすのか、被覆して乾かすのかで、食べ物の形が変わる。
ペラムシを木の板に薄く広げて乾かす方法もあり、近年には、薄くしたものへ炒ったヘーゼルナッツやクルミを載せ、巻いて仕上げる形式もある。器に流す柔らかな甘味だけでなく、薄く広げた果汁の層をどのように使うかにも工夫が続いている。
用語解説
- アデサ(Adesa)
- ジョージア西部でペラムシにも使われるブドウの呼称。
- ペトメジ(petmezi)
- グリアやアジャラで用いられる、よく煮たブドウ果汁の呼称。
- チャハナ(chakhana)
- ペラムシを煮る伝統的な丸底の鍋。
- ルセット
- 材料の配合と作り方をまとめたもの。
- タタラ(tatara)
- ブドウ果汁に小麦粉を加えて加熱したもの。ペラムシとの呼び分けには地域差がある。
- チュルチヘラ
- 糸に通したナッツに、粉でとろみをつけた果汁を重ねて乾かす菓子。
- スプラ(supra)
- ジョージアの宴席。料理や酒、乾杯などを伴う集まり。







