Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

セル・ロティ
Sel roti
セル・ロティの材料と製法
揚げ菓子 / ネパール

セル・ロティ(Sel roti)は、米の生地を輪になるよう油に流し入れて揚げる、ネパールの甘い食べものです。外側は揚げ色がつき、中はふくらんでやわらかく仕上がります。穴のある姿はドーナツに似ていますが、成形した小麦の生地ではなく、とろりと流れる米の生地から輪を作ります。

インド・カリンポンに並ぶセル・ロティ。2021年、Praana07/Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0。配信元縮小版、取得後の内容変更なし。
米を搗き、油に輪を描く
米を水に浸してから水を切り、搗いて粉にします。砂糖とギーを加え、水やミルクで生地を整えて休ませます。ギーはバターから水分などを除いた油脂です。シッキムで記録された作り方には、小麦粉や生クリーム、香辛料を加える例もあります。生地を置く間に酵母や乳酸菌が働く作り方もありますが、配合や休ませる時間は家庭によって異なります。
ネパールの料理研究家ジョティ・パタクの家では、熟したバナナをつぶして生地に加え、ミルクや香辛料は使わないそうです。米の粉も、細かく挽く家と粗さを残す家があります。何を加えるか、どのくらい生地を休ませるかに、作り手ごとの違いが表れます。
熱い油に手やひしゃくから生地を注ぎ、円を描きます。流れ出た生地が油の中でつながり、棒を使って返すと、独特の大きな輪が揚がります。ネパールの各地では金属や竹の棒も用いられます。揚げたてにも冷めてからにも、それぞれの楽しみがあります。

手から生地を油に注ぐセル・ロティ作り。2008年、Ashishlohorung/Wikimedia Commons、CC BY-SA 3.0。配信元縮小版、取得後の内容変更なし。
祭りの籠から町の店まで
ダサインやティハール、結婚式などの特別な機会に作られるほか、カトマンズでは茶店でも親しまれています。シッキムの調査には、結婚の際、新郎側が揚げたてのセル・ロティを籠に入れ、花嫁の親へ渡す習慣が記録されています。じゃがいものカレーや豆の漬物、肉とともに供されることもあり、甘い輪が塩味の料理と一緒に食卓に並びます。
ネパールの新聞は、カトマンズでセル・ロティを作って店に届けるアルナ・グルンさんの暮らしを紹介しています。近所の人の祝い事のために作り始め、取材当時は夫のギャン・バハドゥルさんが米を挽き、できあがった輪を包んで店に運んでいました。彼女は米粉、ギー、砂糖を使い、二種類の米を合わせていました。家庭で分け合うだけでなく、町で作って店へ届ける人たちにも支えられている食べものです。

インド・西ベンガル州カリンポンのビヒバレ市場で、セル・ロティを揚げて売る。2026年、PansanLepcha/Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0。配信元縮小版、取得後の内容変更なし。
輪のかたちと近縁の米菓
同じ米の生地を円く焼くババリに対し、セル・ロティは中央に穴があります。かつて平たいババリを裏返しにくかったため輪にしたという聞き書きがありますが、これは成立を伝える話の一つです。名前にも米の品種に由来する説などがあり、一つの由来には決まっていません。
同じネパールの米を使う菓子でも、ヨマリは甘い具を米粉の皮で包んで蒸します。セル・ロティは具を包まず、油に直接注いだ輪の表面とふくらんだ中身を楽しみます。
用語解説
- ギー
- バターを加熱し、水分などを除いた油脂。
- ダサイン
- ネパールで広く祝われる祭り。
- ティハール
- ネパールの祭りの一つ。セル・ロティを作る機会としても知られます。
- ジョティ・パタク
- ネパールの料理を紹介する料理研究家。
- アルナ・グルン
- セル・ロティを作り届ける作り手。
- ギャン・バハドゥル
- アルナとともにセル・ロティを製造配送する夫。







