Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

スタルフェニ
Sutarfeni
糸になるのは、飴ではなく生地
揚げ菓子 / インド・グジャラート、ラージャスターン

スタルフェニ(Sutarfeni)は、糸のように細くした生地を丸くまとめる、インド西部の菓子です。グジャラートやラージャスターンに結び付き、ムンバイの菓子店でも親しまれています。淡い色の糸が幾重にも重なり、砂糖、カルダモン、サフランやナッツで仕上げます。

糸になるのは、飴ではなく生地
スタルフェニの糸は、小麦粉などでこねた生地から作ります。油脂をなじませ、引き延ばして休ませる作業を繰り返し、ごく細い筋へ分けていきます。ギーは味を付けるだけでなく、薄くなった生地同士が一体に戻るのを防ぐ役目も持ちます。

糸になった生地を1人分ほどの輪や巣の形にまとめ、ギーで揚げます。糖蜜を含ませる作り方もあり、油切りと甘味付けは別の工程です。ムンバイの工房の作り方では、引き延ばすたびに粉とギーを塗り、休ませては再び引きます。揚げた輪を一晩油切りし、翌日は下に置いた蜜を上から繰り返しかけ、余分を受け皿へ戻します。こねるところから蜜をなじませるまで、数日に分けて仕上げる仕事です。ただし、その日数や休ませ方が全工房に共通するわけではありません。
糸状の菓子にも違いがある
見た目が似るソーン・パプディでは、煮た糖を引き、炒った粉などと組み合わせて繊維状にします。スタルフェニでは生地そのものを細くするため、同じ「糸の菓子」でも出発点が違います。
また、フェニという呼び名で売られる細い麺状の食品には、乳へ入れて食べるものもあります。スタルフェニも乳と合わせて食べられますが、ナッツや甘味を付け、そのまま菓子として売るものもあります。名称が近くても、食卓へ出す前の甘味付けや調理の状態は同じではありません。

ベンガルールの屋台で、フェニにアーモンド乳を注ぐ。撮影:Harikrishnan N、2020年。原画像を使用(出典・CC BY-SA 4.0)。
共同体ごとに違う食べる日
ムンバイの作り手の記録には、パールシーの新年の贈り物や、ムスリムのラマダンや故人をしのぶファーティハの集まりで食べる例が見られます。ファーティハでは故人のために祈り、スタルフェニを分けて食べます。日常に買う菓子である一方、家族や共同体の暦にも結び付いています。
糸の細かさだけでなく、揚げた後の柔らかさや、乳を加えた時のほどけ方も品質を分けます。販売者が軽い歯触りを強調する品もあり、職人が柔らかさを重視する品もあります。揚げ方や甘味の付け方によって、糸のほどけ方にも違いが生まれます。
用語解説
- ギー
- 水分や乳の固形分を除いた乳脂肪。生地の層を分ける工程にも使われます。
- フェニ
- 南アジアの細い麺状・薄層状の食品の呼称。地域や加工状態により用法が異なります。
- パールシー
- インドで暮らすゾロアスター教徒の共同体の呼称。
- ファーティハ
- ここでは故人をしのび、祈りを捧げる集まり。







