Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

カヌレ
Canelé de Bordeaux
濃い外皮とやわらかな内側、ボルドーの型菓子
焼き菓子 / フランス

濃い焼き色の外皮を割ると、乳と卵を多く含む柔らかな中心が現れます。ボルドーのカヌレは、一つの液状生地を溝付きの小さな型へ注ぎ、場所によって異なる状態に焼き上げる菓子です。ラムとバニラの香りを内へ含ませ、熱をよく伝える型で外側を乾かします。皮と中身の対比は、型に接する外側と中心の加熱の違いから生まれます。
乳に香りを移し、生地を冷やして待つ
牛乳を割ったバニラのさやと温めて香りを移し、バターを溶かします。卵と卵黄、砂糖へ粉を混ぜ、乳を少しずつ加えて、なめらかな液状の生地にします。全卵と卵黄を併用するルセット(材料の配合と作り方)もあり、「余った卵黄だけを焼く菓子」という説明では材料の構成を言い尽くせません。
ラムを加えた生地は、すぐに焼かず冷蔵で休ませる仕立てが一般的です。例えば乳五〇〇ミリリットルに粉一二五グラム、全卵二個と卵黄二個を使い、二十四時間冷蔵するルセットがあります。バニラのさやを戻して浸しておくと、休ませる間も香りを移せます。流動性の高い生地を均一にし、香りを含ませてから型へ注ぐ順序です。
型の溝に熱を伝え、二段階で焼く
溝のある型は、菓子の輪郭と外皮を同時につくります。伝統的な銅製の型は熱を伝えやすく、アルミニウムの型を使うルセットもあります。型から外すため、内側へ油脂を薄く塗ります。食品用の蜜蝋を使う作り方もあれば、バターや油脂のスプレーを使う作り方もあり、蜜蝋を生地の必須材料として混ぜるわけではありません。
焼き方には、初めに高温で加熱し、その後温度を下げて焼き続ける仕立てがあります。銅またはアルミニウムの型に入れ、270度で10分、続いて200度で約45分という例では、最初の強い熱と、その後中心へ火を通す時間を組み合わせています。温度と時間は型の大きさや炉に左右され、一律の数字にはできません。
型に接した外側は水分が抜け、糖を含む面の焼き色が深まります。中心には乳と卵を多く含む柔らかさが残ります。外面を黒くするだけでなく、中心まで火を通し、外皮も焦がしすぎない釣り合いが要点になります。焼いた後は少し温かさが残るうちに型から外すルセットもあります。
修道女の卵黄という物語と、古い職人たち
アノンシアードの修道女が、ワインの清澄で残った卵黄と港でこぼれた粉を受け取り、貧しい人のため菓子を焼いたという物語が伝わります。ワインの清澄に卵白を使う方法はありましたが、修道院と現在の溝型菓子を結ぶ当時の記録は見つかっていません。修道女の発明とは確定できない物語です。
別の候補は canaule。十七世紀に乳と糖入りの無発酵のパン菓子を作る canauliers が増え、一六六三年に職人組合を作りました。十八世紀には菓子職人と対立し、十九世紀にその職能は消えます。名が似ても当時のカノールは現在の溝型・ラム風味のカヌレとは材料と形が異なり、製法の連続は分かっていません。
二つの綴りが残るボルドーの象徴
ジャン・バルドの一九三七年刊小説には、カヌレの名が現れます。一九八〇年代には菓子店と都市の宣伝で認知が広がり、一九八五年、同業団体はnを一つにした canelé を集合商標に選びました。元の cannelé という綴りも使われています。
フランス語の cannelé は「溝や深い筋のある」の意で、アカデミー辞典にも溝型で焼くボルドー菓子の名詞用法があります。今の輪郭をよく表す言葉ですが、その語義だけでは古いパン菓子との関係は決まりません。
日本の一口と、持ち帰る小箱
日本では一九九〇年代後半に洋菓子店やベーカリーを通じて知られ、食の専門家の小倉朋子は、二〇一二年以降に関西の店から再び注目が広がったと記しています。二〇二二年頃の再流行では、抹茶や果実を生地に加えるもの、上のくぼみにクリームや果物を載せるものなど、香りと外観の幅も広がりました。
小型化には食べる場面の変化が関わります。兵庫のダニエルは、もともとフレンチレストランのコースの最後に出す小菓子として、現地サイズでは大きいため小さな型を欧州から取り寄せたと取材に答えています。持ち帰りの要望を受け、後に焼菓子店へ展開しました。ボルドーの小型菓子が、食後の一口から多様な味を選ぶ手土産へ育った一例です。
用語解説
- ジャン・バルド
- ボルドーの作家ジャンヌ・アルマンの筆名。一九三七年刊の小説にカヌレの名を記しました。
- 清澄
- 液中の濁りを取り除く作業。ワイン醸造では卵白を用いる方法もあります。
- 蜜蝋
- ミツバチの巣由来の蝋。食品用を型の内側へ塗り、焼き菓子を外しやすくする方法があります。
- 小倉朋子
- 日本でのカヌレの流行と変化を記した食の専門家です。
- 集合商標
- 一定の団体の構成員が使う、商品やサービスを示す商標です。
- カノーリエ
- 十七世紀に乳・糖入りの古いカノールを作ったボルドーの職人。現在の型との直結は未証明。
パレードのカヌレ・ドゥ・ボルドー / Canelé de Bordeaux
京都・伏見桃山の洋菓子店「パレード」が手がける、焦がしバターとラム酒が香るフランス伝統焼き菓子「カヌレ・ドゥ・ボルドー」。
焦がしバターと香り高いラム酒が広がる大人のお菓子。カヌレは、フランスのボルドー地方の修道院に伝わる伝統的な焼き菓子で縦溝が入った釣り鐘状の見た目にちなみ、フランス語で「溝のついた」という意味の言葉が名付けられました。
外はカリッと香ばしく、中は上質な純国産鶏卵「さくら」とバニラを使用して優しい甘さのもっちりと柔らかい食感に焼き上げています。シンプルな素材でありながら、1つ1つ手作業で作るこだわりの味わいをぜひお楽しみください。オーブントースターで少し温めると、表面のカラメルがさらにカリッとし焼きたてに近い食感や香りになるのでおすすめです。
このお菓子に寄せられたお客様の声
カヌレがおいしかったのでカヌレの日がもっと増えると
嬉しいです♡♡♡
和紅茶もスキでいつも来たら注文してます✨
パレードの焦がしはちみつカヌレ / Canelé au miel brûlé
京都・伏見桃山の洋菓子店『パレード』が手がける、純国産はちみつを使用したカリッと香ばしいブリュレ仕立ての「焦がしはちみつカヌレ」。
京都伏見に店舗を構えるヒグチ養蜂園の純国産の熟成された高純度はちみつを贅沢に使用したカヌレ。
生地の外はカリッと、中はもっちりしっとりと香ばしく焼き上げ、トッピングはオーガニックシュガーをバーナーで炙り焦がすことでブリュレのようなカリッと、シャリっとした食感をプラスしました。口いっぱいに広がる優しいコクのはちみつの風味をぜひお楽しみください。







