Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

ミルクレープ
Mille Crêpes
薄いクレープを重ねた、日本生まれのケーキ
ケーキ / 日本

薄いクレープに薄いクリームを塗り、何枚も重ねる。ミルクレープは、日本の喫茶店や菓子店で発展し、ニューヨークやアジアへ広がった層のケーキです。フォークが一台をすっと切れる柔らかさには、一枚を焼く厚みと、塗る量をそろえる仕事があります。Mille はフランス語で千ですが、名は文字どおりの枚数を定めません。
薄く焼くことと、薄く塗ること
粉、卵、乳、溶かしバターなどの流動生地を、フライパンや鉄板へ薄く広げます。ある作り方は、卵、糖、塩と粉を先に滑らかなペーストにし、乳と溶かしバターで延ばし、最低1時間、できれば一晩冷蔵してから焼きます。スポンジのように大きく膨らませず、破れやすい薄さを一枚ずつ扱います。
冷ましてから塗るクリームも均一にし、傾かないよう重ねます。厚く塗れば仕事は速くても、口でほどける生地と中身の割合が変わります。20枚前後の型、30〜40枚の型もあり、一切れの高さと食感は枚数だけでなく、この二つの薄さに決まります。
クリームにも、先に整える時間
泡立てた生クリーム、カスタード系のパティスリークリーム、その組合せを使い、果物、抹茶、チョコレートの型もあります。ホワイトチョコレートとバニラのガナッシュ・モンテでは、戻したゼラチンを温クリームへ溶かし、チョコレートへ合わせて乳化させます。表面へフィルムを密着させ、6時間以上または一晩冷やしてから泡立てます。チョコレートとゼラチンで組織を整えた後に空気を含ませるため、冷たい生クリームだけを泡立てる方法とは違います。
上面はクレープのまま、粉糖、糖をカラメル化させる仕上げなどを選べます。柔らかな何層にも、一番上の歯触りと香りが加わります。ミルフィーユの折り込みパイが薄片へ砕けるのに対し、クレープはしなやかな一枚のまま中身と切れる構造です。
1907年、重ねてもう一度焼いた二つの型
重ねる発想は、日本の現代商品より前にもありました。アリ・バブの『実用美食学』1907年版には、薄焼きを型へ積む二つの菓子があります。一つはオレンジ花の生地にアーモンドペーストを挟み、レモンクリームを注いで焼くもの。もう一つはバニラ生地とバニラクリームを重ね、再び炉へ入れてクリームを固めます。
クレープを積む点は近くても、再焼成の一台と、冷たい中身を挟んで冷やす現在型では、熱の使い方が異なります。古い重ね技法と、日本の店が育てた商品史には、それぞれの段階があります。
1985年の開業、1988年の開発談、1996年の発売
東京のルエル・ドゥ・ドゥリエールやペーパームーンは、日本での展開に関わります。ペーパームーンの沿革は、エミー・ワダが1985年に各地へ展開するケーキ店を立ち上げたとします。
関根俊成の所属企業が2017年に述べた沿革は、1988年、ラザニアのパスタとソースの層から着想して作った、と伝えます。彼は後にペーパームーンへ移り、完成品の冷凍配送にも携わりました。ドトールの公式年表には1996年の発売があります。
個人店での展開、料理人が回想するラザニアからの着想、チェーンの定番への採用と、同じ一台が広がる道は段階を重ねました。1988年という開発年は、関根の所属企業が後に語った沿革に位置付くものです。
手焼きの層と、冷凍で運ぶ技術
エミー・ワダは2001年ごろ、ニューヨークのレディMで紹介しました。同店の代表型は少なくとも20枚の手焼きと自家製クリームを重ね、上をカラメル化します。完成品を急速冷凍して配送し、受け取った側が冷蔵庫で24時間かけて戻す方法も採っています。クレープとクリームを積む仕事に、凍らせる時点と戻す時間の管理が加わりました。
一枚ずつ焼く手仕事と、出来上がった層を遠くへ運ぶ仕組み。両方が、日本で育った柔らかな積層を、海外の喫茶や菓子店へ広げています。
用語解説
- アリ・バブ
- フランスの料理著述家アンリ・ババンスキの筆名。『実用美食学』の著者。
- 関根俊成
- 日本の料理人。カサネオのミルクレープを監修し、ペーパームーンでも開発・製造に携わりました。
- エミー・ワダ
- 日本と海外で菓子を手掛けた料理人。ペーパームーンやレディMのミルクレープと関わります。
- ガナッシュ・モンテ
- チョコレートとクリームを合わせて乳化し、冷やしてから泡立てるクリーム。
- 乳化
- 水分と油脂が細かく混ざり、滑らかにまとまった状態を作ること。
- カラメル化
- 砂糖を加熱して色と香ばしい風味を付ける変化。
- ラザニア
- 薄いパスタとソースなどを層にして焼くイタリア料理。
パレードの苺のミルクレープ / Mille-feuille aux fraises
京都・伏見桃山の洋菓子店「パレード」が手がける、「苺のミルクレープ」。
毎朝パティシエが一枚ずつ焼き上げる、もちもちとしたクレープ生地を丁寧に重ね、口どけの良い生クリームと、みずみずしい国産いちごを贅沢にサンドしています。
クレープ生地は、小麦の風味とやさしい甘みを生かしながら、重ねたときに軽やかな食感になるよう、焼き加減や厚みを細かく調整。生クリームはきび砂糖を使用しており甘さ控えめに、いちご本来の甘酸っぱさを引き立てています。
ひと口ごとに、もちもちのクレープ、なめらかなクリーム、爽やかないちごの酸味が重なり合い、最後まで飽きのこない、バランスの良い味わいに。シンプルだからこそ素材の良さと手仕事の丁寧さが伝わる、パレードならではのミルクレープです。
パレードの【Valentine 2026】チョコバナナミルクレープ/Crêpes Chocolat Banane
薄く焼き重ねたクレープ生地に、なめらかなショコラクリームと完熟バナナを重ねました。
チョコレートのほろ苦さと、バナナのやさしい甘みが溶け合う、口どけ軽やかなミルクレープです。
自分へのご褒美や、大切な方と過ごす時間にいつもより少し贅沢なひとときを♪
このお菓子に寄せられたお客様の声
前に、チョコとバナナのケーキ
が食べたいって、このリクエストに
書いた気がするので、叶って嬉しいです。
チョコバナナミルクレープ、めちゃくちゃ
おいしかったです
また食べにきます☺
チョコバナナタルトが食べてみたいです!







