Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

オペラ
Opéra cake
コーヒーとチョコレートを水平の層に重ねる
ケーキ / フランス

アーモンドの薄い生地にコーヒーを含ませ、コーヒーのバタークリームとカカオのガナッシュを積む。オペラは、一口へ三つの香りを重ねるフランスのケーキです。低い長方形に細い水平線が並び、上面をチョコレートで覆います。線の美しさは、別々に作る生地、泡、乳化したクリームを、それぞれの面を均一な厚みに整える仕事でもあります。
薄焼きへ、シロップを行き渡らせる
ジョコンドは、アーモンド粉、卵、糖、少量の粉へ卵白の泡を加え、平らに広げて短く焼く生地です。冷ましてコーヒーシロップを含ませ、香りと水分を薄い一面へ広げます。
バタークリームには、熱い糖液を卵へ合わせて泡立て、バターとコーヒーを加える型があります。一方ガナッシュは、温クリームとチョコレートを乳化させ、バターなどで塗れる硬さへ整えます。同じ色違いでなく、卵の泡と乳化したカカオを別に仕込みます。
三枚を、下から上まで平らに
古典型は、三枚の間へバタークリームとガナッシュを分け、上にも薄いクリームを広げます。底の裏に薄いチョコレートを塗り、湿気に耐える面を作る方法もあります。中段には両面からシロップを含ませ、均等に塗り重ねます。
冷蔵した一台の、凍っていない冷たい上面へグラサージュを流し、落ち着いてから温めたナイフで端をそろえます。各層の厚みは外見だけでなく、一口に入る香りの割合も作ります。
1899年の同名、1955年の自店の創作
「オペラ」という名は、今の積層より前にもあります。製菓材料メーカーの史料解説は、1899年、パリのグラン・オテルの新聞広告が「ガトー・オペラ」を名物にしたと伝えます。その名の配合は不明で、現在のコーヒーとカカオの薄い積層と同じ型かはわかっていません。
ダロワイヨは、1955年シリアック・ガヴィヨンが、一口で全体の味を感じる菓子を作ったとします。妻アンドレが、訪ねてくるパリ・オペラ座の踊り手へ捧げて名付けたという来歴です。同店の現在の仕様には、コーヒーのジョコンドとクリーム、ダークガナッシュを薄く八層にする型があります。
クリシーの九層と、競合する記憶
近縁のクリシー側には、ルセット(材料の配合と作り方)を継いだマルセル・ビュガが親族ガヴィヨンへ味見をさせ、似たオペラがダロワイヨへ現れた、という説明があります。一方の創作の主張と、味を伝えたという側の話は一致していません。クリシーの味がオペラへ移ったのか、別の創作なのか。二つの店には、同じ味の輪郭をめぐる異なる記憶が受け継がれています。
1981年の店の取材は、卵を豊かに使うアーモンド生地、コーヒーの泡立てバタークリーム、ビターチョコレートを九層へする名物を記します。七や八という数だけでなく、薄い生地と二種の中身をどう配するかが、この系統をよく表します。
円い芯をムースで包む「ミロ」
ヴァローナのオペラ・ミロは、アーモンドのジョコンドを、コーヒーのウィーン風スポンジへ替え、泡立てガナッシュとチョコレートムースを使います。ムースは温めた乳とクリームをチョコレートへ乳化し、糖と泡立て卵白を混ぜます。
コーヒーガナッシュは、温かい乳と蜂蜜をチョコレートへ合わせ、冷クリームも加え、3時間以上、できれば一晩冷やして泡立てます。二つの中身は空気を加える時点が違います。シロップ入り生地とガナッシュを小径で重ねて凍らせ、大きいリングの中央へ置き、周りをムースで包んで再冷凍し、冷蔵庫でゆっくり戻します。平らな積層を、芯と外の泡へ作り替えても、コーヒーとカカオを同じ一口へ組む狙いが残ります。
用語解説
- ジョコンド
- アーモンドを使う薄い製菓生地。オペラの積層に用いる。
- バタークリーム
- バターを糖や卵などと合わせたクリーム。作り方によって卵や糖液の加熱方法が異なる。
- ガナッシュ
- チョコレートとクリームなどを乳化させた素材。配合によって泡立てる型もある。
- 乳化
- 油分と水分を細かく分散させ、滑らかな一体の状態にすること。
- グラサージュ
- 菓子の表面を覆う上掛け。オペラではチョコレートの上掛けを用いる。
- ムース
- 泡を取り込み、軽い口当たりに仕立てた菓子。
- マルセル・ビュガ
- パリのクリシーの菓子店を一九五五年に引き継いだ菓子職人。クリシーとオペラの関係を語る説に登場する。
- シリアック・ガヴィヨン
- ダロワイヨが一九五五年のオペラ創作者として紹介する菓子職人。
- アンドレ・ガヴィヨン
- シリアックの妻。ダロワイヨが伝える来歴では、オペラの名をつけた人物。







