Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

チョコトルタ
Chocotorta
ビスケットの層が冷蔵庫でケーキになる
ケーキ / アルゼンチン

乾いたチョコレートビスケットを湿らせ、乳の甘味とチーズの酸味を交互に挟む。アルゼンチンのチョコトルタは、焼かずに冷やして層をなじませる菓子です。ドゥルセ・デ・レチェとクリームチーズの柔らかなフィリングが、ビスケットを一切れに切れるケーキへ変えます。家の誕生日に作った組み合わせを、複数の商品の広告が全国へ広めた来歴も持っています。
浸す時間と、冷蔵庫でなじませる時間
よく使われるのは、チョコリーナスという長方形のチョコレートビスケットです。牛乳、チョコレート風味の牛乳、コーヒーなどに浸してから並べます。ビスケットの形を保ったまま、切って食べられる柔らかさへ変える工程です。
長く浸しすぎれば、重ねる前に崩れやすくなります。水分が足りないと、柔らかなクリームの間に硬い層が残ります。組み立ててからも周囲の水分がなじむため、冷蔵庫で休ませる時間まで含めて食感を作ります。型や皿へ一層ずつ隙間を少なく並べ、クリームを広げると、長方形の菓子が整った切り口になります。
同量でも、同じ硬さとは限らない乳の層
ドゥルセ・デ・レチェは、乳と糖を煮詰めた甘味です。クリームチーズと合わせることで、濃い甘さに酸味と乳の風味が重なります。ココアの苦みをもつビスケットと、甘く滑らかなフィリングの組み合わせが、この菓子の中心です。
フィリングの比率は一つではありません。チーズとドゥルセ・デ・レチェを同量にする配合も、後者を多くする配合もあります。乳菓を増やせば、甘味とキャラメルの風味が前に出ます。硬めに仕立てた製菓用のドゥルセ・デ・レチェも使われ、単に二つを同量混ぜれば、すべて同じ硬さになるわけではありません。
上面も、最後のビスケットを見せる仕立て、クリームを塗る仕立て、温めた生クリームと刻みチョコレートを混ぜて覆う仕立てがあります。四層に重ねるルセット(材料の配合と作り方)はありますが、層数よりも、ビスケットと乳のクリームを交互に組み、冷やしてなじませることが基本です。
自宅の誕生日から、三商品の広告へ
広告制作者マリテ・マブラガーニャは、自宅の誕生日に、チョコリーナスを浸し、メンディクリムのクリームチーズとドゥルセ・デ・レチェを重ねたと回想します。出来た菓子を広告代理店の仕事へ持ち込み、別々のメーカーを一つのルセットで結びつけたことが、チョコトルタの名を広めました。
本人は一九八二年ごろの考案と語り、企業の配布ルセットは一九八〇年を誕生年とします。広告以前にも似た層菓子は家庭や学校で作られたという回想があり、重ね方の唯一の発明者は定まりません。チョコリーナス、メンディクリム、ドゥルセ・デ・レチェを一つの名で結んだ広告が、家の菓子を広い食卓へ運びました。本人はビスケットをポートワインで湿らせる型を好み、現在の牛乳やコーヒーとは違う大人向けの香りを重ねています。
ココナツのビスケットと、泡立てた乳の層
ビスケットを替えて、別の味へ展開する作り方もあります。コキトルタと呼ばれる近縁の菓子では、ココナツ風味のビスケットを用います。フィリングにはクリームチーズではなく、軽く泡立てた生クリームと製菓用ドゥルセ・デ・レチェを合わせるルセットもあり、表面の香りだけでなく、間に挟む乳の層も変わります。乾いた市販菓子を湿らせ、クリームと交互に重ねる構造が、多様な家庭のケーキを生み出しています。
用語解説
- チョコリーナス
- アルゼンチンのチョコレートビスケットの商品名。チョコトルタの層に使われます。
- ドゥルセ・デ・レチェ
- 乳と砂糖を煮詰めた甘味。チョコトルタではチーズなどと混ぜ、フィリングにします。
- フィリング
- 菓子の中に詰めたり、生地の間に挟んだりする部分。
- ポートワイン
- ポルトガルの酒精強化ワイン。チョコトルタでは、ビスケットを湿らせる液体の一つです。
- マリテ・マブラガーニャ
- チョコトルタの広告展開で知られるアルゼンチンの広告制作者。本人の回顧で家庭と広告の関係が伝えられています。
- コキトルタ
- ココナツ風味のビスケットを使う、チョコトルタに近い層状の菓子。







