Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

パステル・デ・テントゥガル
Pastel de Tentúgal
透ける生地で黄金色の卵餡を包む
焼き菓子 / ポルトガル

淡い殻を割ると黄色い卵餡が現れる。ポルトガル中部のテントゥガルの菓子を特徴づけるのは、小麦粉と水を手で広げる、約0.06〜0.15ミリの極薄の皮です。棒と半月の二つの包み方があり、折り込みパイとは別の手延ばしの技が、軽い殻を作ります。
布の上で、ほとんど透ける膜へ
粉と水を均一に練って休ませ、床の木台を覆う白い布へ置きます。水が小麦のタンパク質へなじみ、グルテンのつながりを作ることで、生地は引いてもすぐ切れない膜になります。休ませる時間も、粉の塊をほぐし、広く延ばせる状態へ整える工程です。周囲を少しずつ引き、広い膜へ延ばします。粉、気温、湿度で状態は変わり、破らない力加減と順を手で判断します。
適度に乾かして丸く切り、手で拾って重ねます。乾いた布の上へ湿った布を重ねて覆い、扱えないほどの乾燥を防ぎます。大西洋とモンデゴ川に近い、穏やかな温度と湿り気も、延ばして包む仕事を助けてきました。
棒形は端を立て、半月には実を入れる
餡は糖と水のシロップへ、溶いた卵黄と全卵を合わせ、底へ付かないよう混ぜて炊きます。包みから流れず、舌ではなめらかに広がる濃度へ整えます。
棒形パリートは、皮へ油脂を塗り、餡を包み、両端を小さな鶏冠のように立てます。半月のメイア・ルアは、油脂を塗った皮へ砕いた乾燥生地を置き、もう一枚重ねて餡を包みます。半月には皮をむいて煎ったアーモンドも入り、シナモンとともに別の香りを加えます。
皮を練るのは粉と水ですが、包む際には油脂を使います。現行IGP仕様の油脂は植物性マーガリン90%とバター10%の混合です。厚い生地へ油脂を挟んで何度も折るパイとは、層の生まれ方が異なります。
焼いた後は天板のまま徐々に冷まし、殻の破損を防ぎます。両形に小型があり、祝い事や催しには500グラム〜2キログラムの大型棒形もあります。粉糖などを振るもの、振らないものが作られます。
修道院の帳簿から、町の販売へ
来歴は1565年創設のノッサ・セニョーラ・ダ・ナティヴィダーデ修道院、別名カルモ修道院へ結びつきます。カルメル会修道女が1898年まで暮らし、帳簿には原料購入、贈答、支払いが残ります。菓子は共同体の暮らしを支える仕事でした。
創設した1565年は、現在の薄皮と餡の完成年ではありません。16世紀末から技術が発達したとされ、1884年のコインブラの展示会や1891年の新聞には、町の名物として登場します。19世紀に宗教施設が財産を失うと、販売は修道院を支える収入になり、仕事に関わる町の女性へ技が続きました。
20世紀には、海辺のフィゲイラ・ダ・フォズからの帰途、テントゥガルで食べる習慣も育ちます。薄皮を延ばし、餡を包んでひだを立てる手仕事が、町の菓子業になりました。
宿で売った姉妹、学校で教えた教師
町へ製法を伝えた女性の一人として語られるのが、修道院の製造を助けたマリア・ドス・プラゼレスです。彼女がアナとブランカのファリア・デルガド姉妹へ教え、姉妹は家族の宿で売りました。さらに家族の男性を介して学んだ小学校教師コンセイサォンは、生計にもなる技として生徒へ教えたと伝わります。
研究者カロリナ・ゲレル・ミゲンスがまとめたこの伝承では、売る場と教える場の両方が技を広げます。宿で菓子を出す姉妹から、家族、教師と生徒へ。生計を立てるために習う人が増え、修道院の仕事が町の菓子業へつながっていきました。
商業化しても、半月が消えたわけではない
販売の中心が半月から棒へ移ったという説明もあります。ただし認証は両方を残し、半月のアーモンドも定めます。古い品はすべて実入り、今日の品はすべて実なしという単純な変化ではありません。
持ち歩いて売る菓子として棒形が目立つようになっても、アーモンドを用いる半月は、今も別の選択肢として残っています。認証は、町の菓子を売れ筋の一形へ狭めず、二つの包み方を保っています。
産地の中で包み、冷凍する
2013年に登録されたEUのIGPは、指定されたテントゥガルの範囲で皮、餡、成形を行うものです。原料に加え、薄皮を壊さず扱う技と、その継承される土地を結びます。
成形した生の状態、または焼成後の急速冷凍による流通も認められ、冷凍も指定地域内で行います。壊れやすい殻と卵餡を保つため、作った直後の扱いまでが製法の一部なのです。
用語解説
- グルテン
- 小麦粉のタンパク質に水を加え、練ることで生じる、弾力と伸びを持つつながり。薄い膜へ延ばす力を支える。
- カロリナ・ゲレル・ミゲンス
- ポルトガルとブラジルの菓子文化の保存・価値付けを研究した著者。
- マリア・ドス・プラゼレス
- 修道院の菓子作りを助け、町の家族へ製法を伝えたとされる女性。
- アナ/ブランカ・ファリア・デルガド
- 家族の宿で菓子を販売した姉妹として研究に現れる。
- コンセイサォン
- 同じ家族に属した小学校教師。生徒へ製法を教えたという伝承がある。
- テントゥガル
- ポルトガル中部、モンテモール・オ・ヴェーリョに属する町。
- パリート
- Palito。棒を意味し、この菓子ではやや平たい細長い形を指します。
- メイア・ルア
- Meia-lua。半月を意味し、曲線に沿って閉じた形の菓子を指します。
- カルメル会
- カトリックの修道会。テントゥガルの修道院に暮らした修道女たちが菓子の技術を育てました。
- IGP
- Indicação Geográfica Protegida。土地との結びつきがある食品の名称を保護するEUの地理的表示制度。







