Sweetlore世界のお菓子図鑑(234)

バッテンバーグ・ケーキ
Battenberg cake
四つの色面を、アーモンドの薄衣で包む
ケーキ / 英国

滑らかなマジパンの衣を切ると、ピンクと淡い黄色が交互に現れます。バッテンバーグ・ケーキは、二色のスポンジをジャムでつなぎ、長い角柱に組み立てる英国の茶菓子です。現在よく見るのは二段二列の四区画ですが、古いルセット(材料の配合と作り方)には九区画や二十五区画もあります。焼く仕事の後に、切りそろえて模様を作る仕事が待つケーキです。
二色を同じ寸法に焼く
バターと砂糖をすり混ぜ、卵を少しずつ加え、小麦粉と挽いたアーモンドを合わせます。生地を重さで二等分し、一方だけをピンクに染めます。同じ配合を分けているため、色が違っても風味まで別とは限りません。きめと膨らみをそろえることが、組み立てる準備になります。
四本の細長い区画をもつ専用型のほか、四角い型の中央に紙と箔で仕切りを作り、二色を並べて焼く方法もあります。焼き上がりはまだもろいため、冷ましてから扱います。二枚で焼いた場合はそれぞれを縦に切り、二本ずつ、合計四本の棒を取ります。
ジャムで模様を留める
焼き色のついた周囲や盛り上がりを切り、各棒を同じ太さに整えます。断面を正方形にすると、四本を組んだ外側も正方形になります。寸法が違うと中心に隙間ができたり、衣の下に段差が出たりするため、切りそろえる仕事が模様を決めます。
温めて滑らかにしたアプリコットジャムを接する面に薄く塗り、上下左右で異なる色が隣り合うように重ねます。ジャムは果実の甘酸っぱさを加えるとともに、生地同士を留める役割を果たします。
衣の継ぎ目を下に隠す
マジパンを長方形に延ばし、組み上がった生地の外側にもジャムを塗って、一周を包みます。合わせ目は下側へ回し、空気を押し出すようになじませ、端を切って整えます。表面に浅い格子や、縁をつまむ飾りを付ける仕上げもあります。
外側のアーモンドの衣は、内側の焼き生地より密で甘く、ジャムはその間に薄く入ります。柔らかな生地、果実の層、練ったアーモンドの衣が、一切れの中に収まります。英国の茶の時間に、少しずつ切り分けて供される菓子です。
九区画と四区画が並んだ一八九八年
フレデリック・ヴァインの『Saleable Shop Goods』(一八九八年)は、赤と白を交互に置く九分割のバッテンブルグ・ケーキを載せます。
同年七月二日のアグネス・マーシャルの雑誌『ザ・テーブル』にも、九分割のガトー・ア・ラ・ドミノが登場しました。
同年のロバート・ウェルズのナポリタン・ロールは四分割ですが、外側はマジパンでなく桃色の乾燥ココナツです。後の職人用図には二十五分割もあります。色を交互に組む技術は、異なる名、異なる区画数、異なる衣で作られていたのです。
婚礼の物語が説明する名
一八八四年、ヴィクトリア女王の孫娘ヴィクトリア・オブ・ヘッセンと、バッテンベルク家のルイ王子の婚礼を祝って作られた、という伝承もあります。四区画を、ルイと兄弟のアレクサンダー、フランツ・ヨーゼフ、ヘンリーの四人へ結びつける話です。
しかし、食文化史家アイヴァン・デイの調査では、その婚礼で菓子が考案されたことを示す当時のルセットや記録は見つかっていません。最初期に確認される名付きのルセットは九区画であり、「四王子」が初めから模様の設計理由だったかも不明です。婚礼との結びつきは、名の由来を語る物語として伝わっています。
用語解説
- ヴィクトリア女王
- 英国の女王。本文のヴィクトリア・オブ・ヘッセンはその孫娘。
- アレクサンダー、フランツ・ヨーゼフ、ヘンリー
- ルイ王子の三人の兄弟。四区画を四兄弟に見立てる婚礼伝承に登場する。
- ヴィクトリア・オブ・ヘッセンとルイ・オブ・バッテンベルク
- 一八八四年に結婚した王族の二人。ケーキの婚礼伝承の中心となる二人。
- アイヴァン・デイ
- 英国の食文化史家。十九世紀末の菓子ルセットを比較し、婚礼説の資料不足を指摘した。
- マジパン
- アーモンドと砂糖を主体に作る練り物。延ばして菓子を包む。
- 市松模様
- 二色の正方形を交互に並べる模様。
- フレデリック・ヴァイン
- 英国の製パン・製菓の著者。一八九八年に九分割のバッテンブルグ・ケーキを掲載した。
- アグネス・マーシャル
- 英国の料理書著者・雑誌編集者。九分割のドミノ・ケーキを掲載した。
- ロバート・ウェルズ
- 英国の製パン・製菓の著者。四分割のナポリタン・ロールを掲載した。







