Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

シェケルブラ
Şəkərbura
ナッツ餡を半月へ包む、ノウルーズの菓子
焼き菓子 / アゼルバイジャン・各地

シェケルブラ(Şəkərbura、Shekerbura)は、細かくしたナッツと砂糖の餡を、柔らかな生地で半月形に包んで焼くアゼルバイジャンの菓子である。表面には専用の道具で細かな模様をつけ、縁は指でひねって閉じる。パフラヴァのように切り分けた層へシロップを含ませるものとは違い、1個ずつ餡を包む。
春のノウルーズには、親類や近所の人が集まって、この菓子やほかの祝いの食べ物を作る。成形に多くの手が加わるシェケルブラでは、出来上がった菓子だけでなく、作る時間も祝いの一部になっている。
甘い包みと、ねじる縁を表す名
シェケルブラの名に含まれるシェケル(şəkər)は砂糖を意味する。後半には、ペルシア語資料に残るシェケルブレ(şəkərbure)やシェケルビュレク(şəkərburək)という語形が関わる。言語学者ギュネル・オルジョヴァは、この2つをペルシア語とテュルク語の要素が組み合わさった語として扱い、後半を「ねじる」を意味するブルマク(burmaq)に結びつけている。
ねじれは、実物の外見にも残っている。アゼルバイジャン語の国語辞典は、ナッツと砂糖の餡に加え、縁が螺旋状にひねられ、上に模様がある菓子としてシェケルブラを説明する。単に半月へ折るだけでなく、餡を包んだ縁をひねり、面に細工をするところまでが、この名の菓子を見分ける特徴になる。
柔らかな生地と、乾いたナッツ餡
生地には、小麦粉とバター、卵黄、サワークリーム、乳などを使うルセット(材料の配合と作り方)がある。少量の酵母を使う形式もあり、アゼルバイジャンの公式観光サイトに載る一例では、小麦粉1キログラムに対し乾燥酵母は小さじ0.5杯である。膨らんだパンへ仕上げるより、包んで細工できる生地を整える配合になっている。
この例では、まず粉とバターを手で混ぜ、別に合わせた卵黄とサワークリーム、乳に溶いた酵母を加える。生地をまとめ、約30分休ませてから小さく分ける。油脂を粉に混ぜる段階と、その後に液を入れる段階がある。
餡は、皮を除いたヘーゼルナッツ、アーモンド、またはクルミを挽き、砂糖と混ぜ、カルダモンなどで香りをつける。公式に紹介される一例は、ナッツ700グラムに砂糖700グラムを合わせる。ただし、この同重量の配合は、すべての家庭に必須の比率ではなく、餡の構成を具体的に示すルセットの一例である。
乳を多く加えて炊いたクリーム餡とは違い、細かなナッツと糖を混ぜた餡を使う。そのため、包む際には生地の上へ量を取り、半月の中へ収めることができる。ナッツの種類を替えると、香りや粒の風味が変わる。
縁のひねりと、表面の模様は別の作業
生地を丸くのばし、中央へ餡を置き、2つ折りにする。合わせ目は親指と人差し指でつまみ、少しずつひねって閉じる。この縁の仕事が、半月の輪郭を作る。
表面には、マッガシュ(maggash)と呼ばれるピンセットのような道具を使う。生地を少しずつつまんで、列になった細かな模様を作る。縁を閉じる作業は餡を包むため、面をつまむ作業は装飾のためであり、同じ細工でも役割が違う。焼く前の柔らかな生地に模様を刻み、焼成によってその形を残す。
焼き色は強くつけすぎず、底や縁に薄く色がつく程度に仕上げる形式がある。観光サイトのルセットは175℃、15〜20分を目安とするが、仕上がりはオーブンや大きさでも変わる。白い生地に細かな陰影を残す外見が、この菓子の模様を見やすくしている。
皆で作り、ホンチャに載せる

2018年撮影、アゼルバイジャンのノウルーズの食卓。発芽麦、ナッツ、菓子が並ぶ。
写真・図版:Lingua1256/CC BY-SA 4.0/原図。Wikimedia Commons生成の450px縮小版を取得。追加のトリミング・色加工なし。原寸は共有環境の429を踏まえ未取得。
ノウルーズの準備では、1軒に親類や近所の人が集まり、生地を分ける、のばす、餡を置く、縁を閉じる、模様をつけるという作業を分担する。1個ずつの細工に時間を要する菓子だからこそ、人数の多い共同作業と結びついている。
焼いたシェケルブラは、ホンチャ(khoncha)という祝いの盆へ、ほかの菓子、ナッツ、乾燥果実、色をつけた卵などと一緒に並べる。アゼルバイジャンのユネスコ国内委員会による祝いの説明では、シェケルブラの半月は月、丸いゴガル(goghal)は太陽、パフラヴァは世界の四方を表す。祝いの盆には、この3つの異なる形が一緒に並ぶ。ゴガルには塩味の香辛料餡を使うものもあり、甘いナッツのシェケルブラとは味の役割も異なる。
同じナッツと糖を使う祝いの菓子でも、シェケルブラは、何層にもすることより、包みの内外を分け、薄い表面に細工を加えることに力を置く。菓子の表面に残る細かな列は、家庭や隣人が集まって手を動かした作業の跡でもある。
用語解説
- ルセット
- 材料の配合と作り方をまとめたもの。
- カルダモン
- ナッツ餡などの香りづけに用いる香辛料。
- マッガシュ(maggash)
- シェケルブラの表面をつまみ、細かな模様をつける道具。
- ノウルーズ
- 春分頃を中心に祝われる春の祭り。アゼルバイジャンでは菓子作りも準備の一部になる。
- ホンチャ(khoncha)
- 祝いの菓子や果実などを盛る盆。
- シェケル(şəkər)
- アゼルバイジャン語で砂糖。菓子名の前半をなす。
- シェケルブレ(şəkərbure)/シェケルビュレク(şəkərburək)
- オルジョヴァがペルシア語資料から取り上げる、同じ甘味に関係する2つの語形。
- ブルマク(burmaq)
- 「ねじる」を意味する動詞。菓子名後半との関係を指摘する学説がある。
- ギュネル・オルジョヴァ
- ペルシア語の歴史的な辞書に含まれるテュルク語要素を研究した言語学者。
- ゴガル(goghal)
- ノウルーズの食卓で太陽に見立てられる丸い菓子。塩味と甘味の形式がある。







