Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

カダ
Kada
小麦粉を、皮にも甘い餡にも使う
焼き菓子 / ジョージア

カダ(Kada、ქადა)の甘いものは、小麦粉と油脂、砂糖の餡を生地で包む、ジョージアで親しまれる焼き菓子である。断面には、皮の内側にも淡い色の粉餡が入っている。粉とバターを使いながら、外側は焼けた皮、内側はほろりとした詰め物になる。
南西部メスヘティでは砂糖を入れず、粉と澄ましバターの餡を包むものもある。東部山地では祭の供物になり、同じカダの名が、甘い切り菓子と祝いに焼くパンの両方に用いられてきた。
炒った粉の餡と、混ぜる粉の餡
料理史研究者ダラ・ゴールドスタインの『The Georgian Feast』に載るカダは、粉を濃い桃色になるまで加熱してから、バターと砂糖を加える。粉を先に炒る工程が、餡に香ばしい風味を与える。長く巻いた生地をさらに渦巻きにまとめる形があり、著者は中心を空けた輪形にして、薄くはがれる皮の食感を残す作り方を紹介している。
ジョージアの料理著者イルマ・イアントベリゼの巻きカダは、別の手順を取る。小麦粉、砂糖、柔らかいバターを混ぜ、湿った砂のような餡にして包む。餡は鍋では炒らず、皮と一緒にオーブンで加熱するのである。同じ3つの材料でも、粉をあらかじめ炒るか、生のまま混ぜるかで、香りを作る時点が変わる。
粉餡は、なめらかなクリームとも、果実を煮詰めたジャムとも違う。油脂を含んだ粉と砂糖がまとまり、切ったところから細かく崩れる。ナッツを加えない作り方でも、炒った小麦粉が香ばしさを支えている。
巻いて切るカダの断面
イアントベリゼのルセット(材料の配合と作り方)では、バターを合わせた小麦粉へ、マツォニ(matsoni)またはヨーグルト、卵、重曹を加える。マツォニはコーカサスの発酵乳である。生地を休ませてから長方形に延ばし、粉餡を広げ、端から巻いていく。
巻いた筒を少し平らにし、卵黄を塗り、波形の刃などで小さく切って焼く。こうして1個ずつの断面に、生地と餡の帯が交互に残る。輪形の大きなカダとは、焼く前に切り分ける点も違う。細かな層を作るために油脂を何度も折り込むパイとは別に、餡を塗った生地を巻くことによっても層のある断面が生まれる。
メスヘティでは、甘さより油脂と粉の香りを立てるものもある
南西部メスヘティには、豚脂を使ったカダがある。ジョージア政府観光局は、この地方のカダを、新年の儀礼に焼かれ、今も作られる詰め物入りの生地として紹介している。同じ地方の都市アハルツィヘでは、甘く濃厚な層状の焼き菓子としても親しまれる。
一方、アスピンザ郡ヒザバヴラ村の住民ナジへの聞き取りには、砂糖を使わない粉餡の作り方が残る。澄ましバターであるエルボ(erbo、ერბო)を熱し、粉を加えて練り、少量の塩で味を調える。餡は塊に固めず、ほぐれる状態を保つ。
この聞き取りでは、粉餡を入れた生地をハチャプリのように閉じ、残り火の熱を使い、煉瓦の上で直接焼く方法が説明される。また生地の扱いには、豚脂を塗って折り重ねる方法や、手へ何度も巻き取ってから外し、指で広げる方法もある。後者はマツォニと卵を混ぜたものを表面へ塗って焼く。同じカダでも、砂糖の甘さを前面に出す巻き菓子と、粉と油脂の風味を立てるこの作り方では、口に残る味が異なる。
辞書のパンと、山地の供物
17〜18世紀の辞書編纂者スルハン・サバ・オルベリアニは、ナズキに関する説明のなかで、卵、乳、澄ましバターなどを使う多様なパンを挙げ、カダもその中に数えている。カダという名は、現代の小さな甘い切り菓子だけを指してきたわけではない。
東部のプシャヴィ、ヘヴスレティに伝わる信仰では、カダは供物にもなる。プシャヴィのシュアプホ村で行われるイアフサリ(Iakhsari、იახსარი)の祭では、カダと蝋燭が伝統的な贈り物である。イアフサリは、この山地で共同体の人々を守ると信じられてきた神格で、祭には供物を携えた人々が集まる。これは、甘い菓子の材料を知るだけでは見えにくい、焼いて誰かへ差し出す食べ物としてのカダの一面である。
ガタと重なる名前
南コーカサスの隣国アルメニアには、粉、バター、砂糖の餡を包むガタがある。ジョージアの料理筆者メデア・チュビニゼも、自分のガタのルセットを「アルメニア風カダ」と呼んでいる。ガタとカダは、巻いて切る形や粉餡を共有し、食卓の言葉として名前が重なる。
甘いカダは現在のトビリシでも、通りの売り場で買える菓子の一つである。輪を切り分けるもの、小さく切ってから焼くもの、油脂を塗った生地で粉餡を包むもの。皮を作る小麦粉を中身にも使う菓子は、家庭ごとの手順と、土地ごとの食べる場面の中で、さまざまな姿をとっている。
用語解説
- カダ(Kada/ქადა)
- ジョージアの詰め物入りの焼き物の名。粉・油脂・砂糖を使う甘いものに加え、地域のパンや供物にも用いられる。
- ダラ・ゴールドスタイン
- 『The Georgian Feast』の著者。炒った粉を餡にするカダを紹介している。
- イルマ・イアントベリゼ
- 生粉の餡を巻いて切るカダを紹介するジョージアの料理著者。
- ルセット
- 材料の配合と作り方の一式。
- マツォニ(matsoni)
- コーカサスの発酵乳。
- エルボ(erbo/ერბო)
- 乳の脂肪分を取り出した澄ましバター。
- ナズキ
- 乳や油脂などを用いる甘いパンの名。
- スルハン・サバ・オルベリアニ
- 17〜18世紀のジョージアの辞書編纂者。
- イアフサリ(Iakhsari/იახსარი)
- プシャヴィ、ヘヴスレティなどに信仰が伝わる神格。
- ガタ
- アルメニアの焼き菓子。粉・バター・砂糖の餡を使うものなどがある。
- メデア・チュビニゼ
- ガタを「アルメニア風カダ」と呼んで紹介するジョージアの料理筆者。
- ナジ
- ヒザバヴラ村に住み、メスヘティのカダなどの作り方を聞き取り記事へ伝えた住民。







