Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

ルスキーユ
Rousquilles
ルスキーユの材料と製法
焼き菓子 / フランス・ルシヨン、カタルーニャ北部

ルスキーユ(Rousquille)は、フランス側のカタルーニャ、ルシヨン地方で親しまれる白い糖衣の菓子です。とりわけピレネー山脈のふもとのヴァルスピルに結び付いています。輪形の生地をかじると、表面の糖衣がかりっと割れ、その下の柔らかい焼き菓子がほどけます。レモンやアニスの香りも特徴です。


焼いて、白い糖衣をかける
生地を焼いただけでは、あの白い姿にはなりません。アルル=シュル=テックの菓子店トゥーロンでは、生地を焼き、手作業で糖衣をかけてから乾かします。コンフィズリー・デュ・テックの品では、柔らかい生地を薄いメレンゲで覆います。単に粉砂糖を振りかける仕上げとは違い、白い層そのものが、内側との食感の対比を作ります。
バージュのパン・菓子職人アンドレ・シュニエは、糖衣を厚くしすぎると生地の味が隠れ、ゆるすぎるとうまく付かないと話します。焼いた生地を甘い液に浸し、網に移して余分を落とすところまで手作業で行います。彼の生地にはバター、セレの蜂蜜、砂糖、レモンの精油、小麦粉が使われます。
シュニエは、戸棚で見つけた古い配合を手がかりに、自分のルスキーユを作り上げました。毎週、友人たちと試食を重ね、数年かけて仕上げたといいます。材料が少ない菓子でも、焼き加減と糖衣の濃さを調整する仕事が重なっています。
輪の形と、国境を越える名前
ルスキーユの名は、カタルーニャ語のロスキーリャ(rosquilla)とつながっています。フランスの地域語辞典には、ベアルン語から入った同系の言葉も記録されています。スペインのロスキージャにも輪形の揚げ菓子や焼き菓子があり、香りや上掛けはさまざまです。白い糖衣と柔らかい生地を組み合わせたルスキーユは、こうした広い菓子の呼び名の中で、北カタルーニャに根付いた姿です。
輪の穴には、持ち運ぶための役目があったとも伝わります。昔の売り手は、菓子を長い棒に通して肩に担ぎ、市場や祭りへ運んだといいます。菓子店トゥーロンも、この棒に通す売り方を自分たちの菓子の歴史として伝えています。
ただし、形がすべて同じとは限りません。ルシヨンの料理資料には、アメリー・レ・バンやアルル=シュル=テックの店で、穴を開けずに作る例もあります。地域語辞典には8の字形も記載され、輪の直径や穴だけで一つの型にそろえられない幅があります。ピレネー山脈の西側、ベアルン地方のオロロン=サント=マリーでも同じ名の菓子が作られます。2009年に菓子店を訪ねた取材記には、プレッツェル形や小さな棒状に焼き、レモン風味のシロップをかけて乾かす例が紹介されています。
店ごとに受け継ぐ味
アメリー・レ・バンのロベール・セゲラを、現在のルスキーユの考案者とする地元の伝承があります。一方、アルル=シュル=テックのトゥーロン家は、19世紀から受け継ぐ自家の製法を大切にしています。今日も同店はレモンの香りと柔らかさを持ち味にしています。こうした店ごとの製法の歴史がある一方、菓子全体が生まれた時期は定かではありません。
山あいの町だけでなく、ペルピニャン近郊でも作られています。1964年にアンドレ・ラボームが始めたコンフィズリー・デュ・テックは、チョコレートの小さな工房から出発し、後に自社のルスキーユを整えました。同社の品はレモンとアニスの両方が香り、今日では小さいサイズや、一個ずつ包んだものもあります。同じ名の菓子にも、工房で試しながら仕上げる品と、箱に詰めて広く届ける品があります。
ラボームにとって、ルスキーユは子どものころの家族の食卓を思い出す菓子だったと、会社の沿革は伝えています。食後の甘味やおやつに食べた白い菓子を、自分の店でも作るようになったという記憶です。
用語解説
- 糖衣
- 砂糖を主体とした上掛け。菓子の表面を覆い、乾くと固まる。
- メレンゲ
- 卵白に砂糖を加えて泡立てたもの。ここでは菓子の上掛けに使われる。
- アンドレ・シュニエ
- バージュで自家のルスキーユを作るパン・菓子職人。
- ロスキージャ
- スペインで広く作られる、輪形の菓子の呼び名。
- ロベール・セゲラ
- 現代のルスキーユの考案者と伝えられる、アメリー・レ・バンの菓子職人。
- アンドレ・ラボーム
- 1964年にコンフィズリー・デュ・テックを創業した製造者。







