Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

ビーバーリ
Biberli
ビーバーリの材料と製法
焼き菓子 / スイス、アッペンツェルなど

ビーバーリ(Biberli)は、スイス東部アッペンツェル地方で作られる、蜂蜜と香辛料の生地にアーモンドの餡を包んだ小さな菓子です。茶色い生地を切ると、内側から淡い色の餡が現れます。表面に熊や土地の風景を型押ししたものもあります。

香りの生地とアーモンドの餡
生地には蜂蜜、小麦粉やスペルト小麦の粉、砂糖、牛乳などを合わせ、シナモンやクローブ、アニスなどで香りをつけます。皮をむいて挽いたアーモンドを砂糖などと合わせた餡を中に包み、焼きます。蜂蜜を使った生地の香りに、しっとりした木の実の甘さが重なります。作り手によって香辛料の組み合わせや生地の休ませ方は変わります。
ガイスの工房では、アーモンドと砂糖を石のローラーに繰り返しかけ、水とレモンの皮、キルシュを少し加えて餡を作ります。細かく挽いてなめらかにした餡を、香辛料の生地で包むのです。


木型に残る土地の姿
大きなビーバーには、表面に木型で熊や牧人の模様を押したものがあります。ガイスの工房では、生地を薄く延ばして二枚を抜き、一枚を木型のくぼみに押します。その裏へアーモンドの餡を広げ、もう一枚を重ね、型から取り出して縁を整えます。焼いた後に表面へアラビアガムを塗り、つやを出すのもこの工房の仕上げです。
型の図柄には、アッペンツェルの紋章の熊のほか、民族衣装の女性、刺繍をする人、牧人や山などが使われます。大きなビーバーは贈り物として、特に降誕節やクリスマスの時期に求められます。小さなビーバーリは、夏に歩きに来た人が途中の休憩に食べることもあると、地元のパン職人は話しています。
同じ地方のビーバーフラーデンは、アーモンド餡を入れない平たい蜂蜜菓子として知られます。あるパン店では、表面に牛乳を塗ってフォークで線を引き、焼いた菓子をコーヒーや茶とともに供します。木型の絵と餡があるビーバーとは、仕上げや食べ方が違います。
古い香辛料菓子と餡入りの記録
スイスの食文化資料によると、アーモンド餡を入れた香辛料菓子のレシピは、1800年頃のザンクト・ガレンの料理書に見られます。アッペンツェルには、さらに古い1597年の記録に「ピーペルツェルテン」という菓子の名があります。人々に菓子を配り、最後に当たった人が代金を払う遊びに関わる記録ですが、菓子の細かな材料は記されていません。古い香辛料菓子の名と、現在の餡入りビーバーリの成立を同じものとして扱うことはできません。
用語解説
- 木型
- 生地の表面に模様を押すための型。
- ビーバーフラーデン
- アッペンツェル地方の、餡を包まない蜂蜜入りの平たい菓子。
- キルシュ
- サクランボを発酵、蒸留して造る酒。







