Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

チェナ・ポダ
Chhena Poda
乳の白さを焼き色に変える、オディシャの菓子
ケーキ / インド・オディシャ州、ナヤガル

チェナ・ポダ(Chhena Poda/ଛେନାପୋଡ଼)は、インド東部のオディシャ州に伝わる、フレッシュチーズを使った焼き菓子です。切り分ける前の表面は濃い褐色を帯び、内側には乳の白さと水分が残ります。砂糖を加えた乳の塊をじっくり焼き、外と中の状態を違えることが、この菓子の特徴です。
名前のチェナ(chhena)は乳を酸で凝固させて水分を切ったもの、ポダ(poda)は焼けた、焦げたという意味です。砂糖液の中で煮る乳菓子が多いインドで、焼き込んだ表面そのものを味わう菓子として知られています。香ばしい外側と、しっとりした内側を一緒に食べるところに、この名の菓子の持ち味があります。
チェナを練ってから焼く
チェナは、乳を煮詰めて固形分を残すコーヤとは作り方が異なります。温めた乳を酸で固め、乳清を除いて得るため、出発点には柔らかな凝固物の粒が残っています。これをほぐして練り、砂糖やセモリナと合わせてから焼きます。焼き上がりの断面では、乳の細かな粒がまとまり、しっとりした組織を作ります。
セモリナは粗く挽いた小麦です。オディシャの作り方には、このセモリナを加えるものがあります。配合や焼き方には幅があります。カシューナッツや干しブドウを加えるもの、カルダモンで香りを付けるものがあり、砂糖の代わりにジャガリーと呼ばれる含蜜糖を使う例もあります。粉の量は、焼き上がりの食感にも関わります。食品工学研究者U・S・パルらが、チーズ1キログラムに対するセモリナと砂糖を変え、200℃で60分焼いた比較では、セモリナを増やすと色と食感の官能評価が下がりました。この条件では、セモリナ75グラム、砂糖185グラムの組合せが最適と推定されています。この試験では、粉と糖の配合が、甘さとともに焼き色や食感の評価を左右しました。
伝統的な焼き方ではサールの葉を使い、穏やかな火でゆっくり熱を通します。一方、油脂を塗った型を用いてオーブンで焼く方法もあります。葉を伴う焼成の香りと、表面の糖が焼き込まれた香りは別の要素です。型とオーブンを使う場合には、薪や葉を使う焼き方とは香りも異なります。
余った乳から生まれたという物語
誕生の地として挙げられるのはナヤガル地方です。菓子職人スダルシャン・サフが、残ったチェナに砂糖や調味料を加え、まだ温かい炉へ1晩置いたところ、翌朝には褐色に焼けた菓子になっていた、と語り継がれています。誕生の年には異なる記述がありますが、余ったチェナを炉で焼くという20世紀の由来が、この職人の名とともに伝わっています。
今ではナヤガルだけでなく、プリー、カタック、ブバネーシュワルなどでも作られ、祭りや家族の祝いの席に並びます。州の名物となった後も形は固定されていません。ブバネーシュワルの料理人シェフ・マイケルは、チェナにチョコレートを組み合わせたルセット(材料の配合と作り方)を公表しています。チェナを練って焼く製法を保ちながら、風味を広げた形です。
2022年には、地元の非営利団体がスダルシャン・サフの誕生日に当たる4月11日をチェナ・ポダの日として祝い始めました。2025年の催しでも、団体の関係者や職人の息子が菓子への思いを語っています。個人の名と結び付く来歴が、土地の菓子を皆で祝う機会へ受け継がれています。

葉を使って焼いたチェナ・ポダ。褐色の焼き面と、周囲に残る葉の包みが見えます。 撮影:Subhahish Panigahi。画像出典/CC BY-SA 3.0。
用語解説
- チェナ(chhena)
- 温めた乳を酸で凝固させ、乳清を除いた柔らかな乳製品。チェナ・ポダの主材料です。
- ポダ(poda)
- オディア語で焼けた、焦げたという意味を持つ語。菓子の焼き込みに結び付く名前です。
- コーヤ
- 乳を加熱し、水分を蒸発させて濃縮した乳製品。酸で乳清を分けるチェナとは製法が異なります。
- セモリナ
- 粗挽きの小麦。チェナ・ポダではチェナと混ぜて使う作り方があります。
- ジャガリー
- 精製を進めすぎずに仕上げる含蜜糖の総称。白砂糖とは風味や色が異なります。
- スダルシャン・サフ
- ナヤガル地方でチェナ・ポダを生み出したと語られる菓子職人。発明年の記述には幅があります。
- シェフ・マイケル
- オディシャの料理を現代的に展開するブバネーシュワルの料理人。チョコレート版の作り方を公表しています。
- U・S・パル
- オディシャ農業技術大学に所属し、チェナ・ポダの材料配合と加工を研究した食品工学研究者。







