Sweetlore世界のお菓子図鑑(534)

クロカン・ド・コルド
Croquants de Cordes
クロカン・ド・コルドの材料と製法
焼き菓子 / フランス・コルド・シュル・シエル

クロカン・ド・コルド(Croquants de Cordes)は、フランス南西部タルヌ県のコルド・シュル・シエルに伝わる、アーモンド入りの薄い焼き菓子です。金色の生地には穴や泡の跡があり、縁も不揃いです。歯を入れると軽く割れ、砂糖の香ばしさとアーモンドの風味が広がります。「クロカン」は、かりっとした歯ざわりを表す言葉です。
泡立てない卵白から、薄い一枚へ
材料は卵白、砂糖、小麦粉、アーモンドです。タルヌ県観光局が紹介する作り方では、卵白を泡立てずに粉と砂糖へ混ぜ、薄切りのアーモンドを加えます。卵白を泡立てて形を保つメレンゲとは、仕込みの順序が違います。生地を天板に小さく落とすと、焼く間に横へ広がるため、隣どうしがくっつかないよう間隔を空けます。焼き上がった菓子はそのまま冷まし、完全に冷えてから天板から外します。

コルドの菓子職人エマニュエラ・ノエルは、砂糖とアーモンドを十分に使い、小麦粉を入れすぎないことを大切にしています。整った円形にそろえるよりも、焼く間に広がった不規則な輪郭を残す作り方です。向こうが透けるほど薄く軽い生地と、口の中で砕ける歯ざわりが好まれます。
生地を天板に並べる方法にも違いがあります。料理家ベルナール・ロランスがアンドリュー家の工房を訪ねた際には、パトリック・サルトゥーが小麦粉、砂糖、アーモンドを機械で混ぜ、卵白を加えていました。できた生地を粉を振った台で細長い棒にし、厚さ約1センチに切って並べます。小さな切片は、焼くと泡を生じながら広がり、薄いクロカンになります。家庭向けの生地を匙で落とす方法とは違う、工房の手順です。
アーモンドと宿屋の言い伝え
町には、17世紀、近郊のアーモンドが豊作となり、宿屋の女主人が余った実を使って菓子を焼いたという話があります。アーモンド、砂糖、卵白で作った菓子は、ガイヤックのワインに添えられたといいます。タルヌの観光案内にも伝説として紹介されている、土地と菓子を結ぶ物語です。
一方、アンドリュー家の菓子店には、ジャック・シカールが1872年に始めた店で、クロカンを作り継いだという家族の記憶があります。2010年の取材では、その後継者サルトゥーが、2001年の先代の引退で閉じた店を再開した経緯を語っています。宿屋の伝承と菓子店の沿革は、それぞれ異なる時代の話です。
町の菓子から、タルヌの菓子へ
クロカンは、コルドの小さな工房だけでなく、県内の製菓業者でも作られています。ラグラーヴのメゾン・ブリュイエールは、自社の沿革で、1990年代初めにクロカン・ド・コルドを作り始めたとしています。同社の品には、炒ったアーモンドと淡いカラメルを思わせる風味があり、製造地は同じタルヌ県内です。
アーモンドの産地や香りの付け方も、作り手ごとに異なります。メゾン・ブリュイエールの材料表示ではカリフォルニア産アーモンドを使い、ノエルの工房を紹介する地元販売店は、タルヌ・エ・ガロンヌ県で採れた実を挙げています。菓子の名前が土地を示していても、すべての材料がその町で採れるわけではありません。ノエルの工房には、アーモンドの基本の品に加えて、香辛料、チョコレート、柑橘などを合わせたものもあります。
市場の広場で分け合う
コルドでは、クロカンを囲む催しも開かれてきました。2001年6月の第2回の祭りでは、町の市場の広場に地元の食べ物が集まり、菓子職人イヴ・チュリエスらが直径2.5メートルの巨大なクロカンを焼く催しが企画されました。燃料にはブドウの木の熾火(おきび)が使われ、焼いた菓子を来場者が味わう予定でした。
用語解説
- ジャック・シカール
- アンドリュー家が受け継いだコルドの菓子店を1872年に始めた人物。
- ガイヤック
- フランス南西部タルヌ県のワイン産地。
- エマニュエラ・ノエル
- コルド・シュル・シエルの工房「マニュファクチュール・グルマンド」の菓子職人。
- ベルナール・ロランス
- 料理・菓子の作り方や工房訪問記を発信するフランスの料理家。
- パトリック・サルトゥー
- アンドリュー家の製法を受け継ぐ、コルドの菓子職人。
- イヴ・チュリエス
- タルヌで活動してきたフランスの菓子職人。
- 熾火(おきび)
- 炎が小さくなった後も、赤く熱を持って燃えている木や炭。







